2012 Fiscal Year Research-status Report
NADPHオキシターゼとスタニオカルシンを用いた乳癌の新規転移マーカーの開発
Project/Area Number |
24590700
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
田中 真樹 札幌医科大学, 医学部, 助教 (40207139)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邉 直樹 札幌医科大学, 医学部, 教授 (10158644)
小林 大介 札幌医科大学, 医学部, 講師 (50295359)
栗林 景晶 札幌医科大学, 医学部, 講師 (50381257)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | stanniocalcin / NADPH oxidase / 転移能 / 浸潤能 |
Research Abstract |
腫瘍細胞を制御する因子の一つに、NADPH Oxidase(Nox)の作用で産生される活性酸素がある。Noxの中でも細胞内カルシウムで活性化されるのは、Nox5とDuox のみである。一方、細胞内カルシウムを調節するstanniocalcin (STC)が、腫瘍細胞で高発現することが報告されている。そこで、本研究ではSTC がNox5やDuox の活性化を介し活性酸素の産生を高め、乳癌細胞の転移能を促進させる可能性について検討している。既に7種の乳癌細胞株を対象とし、細胞間で差異はみられるものの、全例でSTC、2例でNox5が発現していることを確認した。 そこで、マウスでの転移モデルが確立されているMDA-MB-231細胞を用い、STCを強発現する細胞(STC)を作製し、浸潤能、運動能、増殖能、接着能および基質分解能を解析した。対照細胞(mock)と比較するとSTC細胞は、浸潤能および運動能が有意に亢進した。また、培養上清中のSTC蛋白量は、mock細胞と比較しSTC細胞で増加していた。両細胞の培養上清をMDA-MB-231に添加すると、STC細胞の培養上清は、浸潤能を著しく亢進させた。以上より、STCは、運動能亢進を介して浸潤能を高め、癌の予後規定因子である転移能獲得に重要な役割を果たしていることが明らかになった。また、作用機序の一因として、細胞外に分泌されたSTCがオートクラインおよびパラクラインに作用することが示唆された。これらの結果を基盤としマウスの転移モデルを用い、STCがin vivoで実際に転移能を亢進させるか解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
STCに関しては、乳癌細胞における発現解析、運動能や浸潤能の検討など、前述したとおり順調に進んでいる。STCに特異的なsiRNAをデザインし、ノックダウン効果を既にwestern blotting法で確認し、細胞運動能や浸潤能の変化も解析可能な状況下にある。また、乳癌患者の原発巣および所属リンパ節を用いたSTCの免疫染色に関しては、使用する抗体を選択中である。 Nox5およびDuoxについては、mRNAの発現解析やsiRNAによる乳癌細胞株(MDA-MB-453、T-47D)におけるノックダウン効果の検討を行っている。両者に関しては、予定より若干遅れてはいるが、今後、継続して検討を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
1.Nox5およびDuox発現細胞における運動能や浸潤能の検討を行う。 2.STC、No5およびDuox発現細胞株の細胞内・外ROS量の測定を、申請書に記載した方法で行っている。すなわち、細胞内・外のROS量は、細胞内用トラップ剤1-Hydroxy-3-methoxycarbonyl-2,2,5,5 tethylprrolidine hydrochloride、細胞外用トラップ剤1-Hydroxy-4-phosphono-oxy-2,2,6,6-tetramethylpiperidine)を用い、電子スピン共鳴(ESR)装置でESR信号を経時的に計測している。しかし、試薬や細胞培養液の酸化等の問題が生じており、安定したデーターが取得出来ていない。そのため、DHR蛍光プローブを用いFACSで解析する予定である。 3.乳癌患者の原発巣や所属リンパ節組織を対象とし、免疫組織染色によるSTC、Nox 5およびDuoxの発現を調べる。 4.転移マーカーとしての臨床応用を図るため、乳癌患者末梢血中のSTC、Nox 5およびDuoxの mRNA量を測定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の研究を推進するため、試薬・薬品、実験用硝子製品および実験用プラスチック製品の購入に用いる予定である。 一部、若干研究の遅れにより、847,162円を次年度へ繰り越した。当該研究は平成25年度に行うので、繰越金はそれに使用予定である。
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