2014 Fiscal Year Research-status Report
ペルーの地域住民を対象にした胆嚢がん発生に関する環境・遺伝疫学研究
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24590767
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Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
山本 正治 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 教授 (40018693)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 和男 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 教授 (60176790)
土屋 康雄 新潟医療福祉大学, 医療技術学部, 教授 (60334679)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 国際情報交換 / ペルー / 胆嚢がん / 発症要因 / 赤唐辛子 / オクラトキシン A |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、胆嚢がん多発国の南米ペルーおいて、本症発生に関わる環境および遺伝特性を環境、遺伝疫学的分析や癌及び癌抑制遺伝子変異解析によって明らかにし、その発生予防策を具体化することを目的としている。 平成26年度には、チリとボリビアで採取した赤唐辛子中のオクラトキシン A(OTA)の濃度を調べた。これは、昨年度の研究でペルー国内において採取した赤唐辛子中のOTAの濃度がアフラトキシンB1、B2、G1、G2の濃度より高く、さらにヨーロッパの基準値を上回った試料が2試料(2/13、15.4%)存在し、赤唐辛子のOTA汚染と胆嚢がん発症との関連が示唆されたことによる。 試料は、チリ産赤唐辛子4種とボリビア産赤唐辛子4種を各々の国の中央市場で入手し、乾燥、粉砕後に検査に供した。OTAの測定はSugita-Konishi Yらの方法(Talanta, 69, 650-655, 2006)に準拠して行った。 その結果、チリ産唐辛子のOTA濃度は、検出限界以下(0.5μg/Kg以下)、163、199、1,059 μg/Kgであった。ボリビア産のそれは、0.8、1.9、196、628μg/Kgであった。得られた結果をOTAのためのEU基準値(15 μg/Kg)に当てはめると、チリ産は3種(3/4、75%)、ボリビア産は2種(2/4、50%)が基準値を超えていた。3か国の赤唐辛子中のOTAの平均濃度はチリ>ボリビア>ペルーの順であり、胆嚢がんの発症率とほぼ近似していた。 本研究の知見は、胆嚢がん多発国、チリ、ボリビア、ペルーで摂取されている赤唐辛子中のOTA濃度は高く、アフラトキシン汚染より胆嚢がん発症と関係している可能性が示唆された。OTAは動物実験により腎臓に毒性が認められること、げっ歯類では発がん性が認められるとされていることから両者の関係については更に詳細な検討が必要と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究では、ペルー研究者の同意を得て研究をスタートさせたが、途中でその研究者は研究協力を辞退することとなり、新たな研究協力者を探さなければならない状況になったため、当初予定していた研究の目的の達成が遅れている。 しかし、平成26年度中に新たな研究協力者が見つかり、我々の研究プロトコールは当該施設の倫理委員会の承認を得たことから、再び研究をスタートさせることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度には、本症発生に関わる遺伝特性を癌および癌抑制遺伝子の変異を解析することによって明らかにすることを目指す。。 平成26年度にペルーの国立がん研究所(Instituto Nacional de Enfermedades Neoplasicas、INEN)のDra. Tatiana Vidaurreとの研究打合せで胆嚢がん患者の組織標本50~100例を遺伝子変異解析のために提供いただけることになった。 平成27年度には、組織標本の準備ができ次第現地を訪問し、標本を受け取った後、日本に持ち帰り、直ちにTP53 、Krasなどの遺伝子変異の解析を行う予定である。これまで、胆嚢がん多発国である、チリやボリビアの胆嚢がん患者の組織標本から抽出したDNAを用いて各々の国の遺伝特性を明らかにしてきたが、本研究によりペルー患者の遺伝特性を明らかにするとともに、メタ解析によりアンデス山脈西側の国に多発している胆嚢がんの遺伝特性を明らかにしたい。 さらに、ペルーの胆嚢がん発症のための環境要因を明らかにするための症例-対照研究の実施についての話し合いを持ちたいと考えている。
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Causes of Carryover |
本研究では、当初予定していた研究協力者が途中で研究協力を辞退したため、新たな研究者を探すことを始めなければならない事態となった。このため、平成26年度は新たな研究者の決定とチリ、ボリビア産の唐辛子中のオクラトキシン Aの測定のみであったため、助成金の使用はわずかであった。 新たな共同研究者としてペルーの国立がん研究所(INEN)のDra. Tatiana Vidaurreが決まり、研究プロトコールが当該研究所の倫理委員会の承認を得て、既に研究が開始されている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究を遂行するために新たな海外研究膂力者を探す必要があったため研究が1年延長され、26年度の研究費に未使用額が生じたが、27年度は新たな研究協力者の支援のもと研究を実施する予定である。 平成27年度には、50~100例のペルー胆嚢がん患者の組織標本からDNAを抽出し、癌抑制遺伝子や癌遺伝子などの遺伝子変異解析を予定している。このための組織標本受取りと今後の研究打合せのための日本ーペルー間の往復旅費2名分、DNA解析のための試薬類の購入費を予定している。また、患者データ入力のための研究支援者の雇用費やデータ入力、解析のためのコンピュータの購入費などを予定している。
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