2012 Fiscal Year Research-status Report
地域住民におけるHbA1cを用いた糖尿病の診断基準の検証に関する横断・追跡研究
Project/Area Number |
24590796
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
向井 直子 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 学術研究員 (90596826)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清原 裕 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80161602)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 糖尿病 / HbA1c / 疫学 / 久山町研究 |
Research Abstract |
平成24年度は、福岡県久山町の横断調査において、75g経口糖負荷試験(OGTT)に基づいたHbA1cによる糖尿病の診断基準の妥当性を検討した。2002年の循環器健診を受診した40-79歳の住民2,854名にOGTTを行い、HbA1c(NGSP)を測定した。その結果、HbA1c≧6.5%および5.7-6.4%で定義した糖尿病と境界型の有病率はそれぞれ9.2%、12.8%で、OGTTによる有病率(糖尿病:18.1%、境界型:31.1%)に比べいずれも低かった。耐糖能レベル別にHbA1cの分布をみると、OGTTで定義した糖尿病の28.8%のみがHbA1c≧6.5%で、境界型の17.6%のみがHbA1c5.7-6.4%であった。OGTTによる糖尿病の同定に対するHbA1c6.5%の感度は28.9%、特異度は99.9%で、境界型の同定におけるHbA1c5.7%ではそれぞれ17.7%、95.2%で、いずれも感度が低かった。以上より、HbA1cの診断基準ではOGTTに比べ糖尿病と境界型の有病率が低く見積もられ、その多くが見逃されることが示唆された。この研究成果は、平成24年の第55回日本糖尿病学会年次学術集会において発表した。さらに、上述の久山町集団を対象として、糖尿病、糖尿病腎症、心血管病、認知症の発症、癌死亡についての追跡調査を本年度も継続して行った。この追跡調査では、久山町健診、健診未受診者および町外への転出者に対するアンケート・電話・訪問などの調査、診療記録や画像診断などの臨床情報の収集、剖検による死因の同定を行った。在宅の認知症発症例についてはMRI撮影を行った。また本研究では、2007年の久山町健診を受診した40-79歳の住民を対象にOGTTとHbA1cの測定を施行するとともに眼科健診を行い、糖尿病網膜症の有無を判定している。本年度では、そのデータ整備を行い、解析を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、HbA1cを取り入れた糖尿病の診断基準が糖尿病の有病率に及ぼす影響に関する解析を行うことができた。また、HbA1cと糖尿病網膜症の関係に関する解析も進んでおり、おおむね順調に進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
2007年の久山町の糖尿病網膜症の有病率調査の成績より、糖尿病の診断に対するHbA1cのカットオフ値とその有用性を検証する。さらに、2002年の久山町集団の追跡調査のデータ整備を進める。これにより、HbA1cと糖尿病、糖尿病腎症、心血管病、認知症の発症、癌死亡との関連を検討することが可能になると思われる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1)追跡調査の費用 2002年の循環器健診を受診した住民を対象に糖尿病、糖尿病腎症、心血管病、認知症の発症、癌死亡をエンドポイントとした追跡調査を継続する。その一環として、平成25年度も久山町循環器健診を行い、医師や訓練されたスタッフによる問診(既往歴、家族歴、服薬調査を含む)、血圧測定、心電図、胸写、眼底検査、検尿、身体計測(身長、体重、腹囲、腰囲)、血計、血液生化学、尿中アルブミン、体脂肪、血清インスリン、HbA1c、75gOGTT、食事調査、骨密度測定を行う。前年までと同様に健診未受診者、町外への転出者についてはアンケートの郵送・電話・訪問などの調査を実施し、病歴を確認する。心血管病発症またはその疑いのある者が医療機関を受診または入院された場合、全症例について詳細な病歴、理学的所見、CTまたはMRI画像データを収集して診断をする。認知症は病歴、理学的所見、CT・MRI画像データを収集して、その診断を確定する。また、対象者が死亡された場合、剖検により死因、心血管病、認知症の診断を確定する。本研究では、年間約150例について、心血管病や認知症の発症および死因に関する臨床情報の収集、症例検討を行っており、その診療録・画像フィルムの複写の費用、追跡調査出張の旅費が必要である。 2)解析を行なうにあたって、コンピュータ、統計ソフトのパッケージウエアのライセンス費用が必要である。 3)研究成果は、国内学会、国際学会で報告するとともに、英文誌に投稿する。
|
Research Products
(12 results)