2013 Fiscal Year Research-status Report
地域住民におけるHbA1cを用いた糖尿病の診断基準の検証に関する横断・追跡研究
Project/Area Number |
24590796
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
向井 直子 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (90596826)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清原 裕 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80161602)
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Keywords | 糖尿病 / HbA1c / 網膜症 / 心血管病 / 疫学 / 久山町研究 |
Research Abstract |
福岡県久山町の2007-2008年の循環器健診を受診した40-79歳の住民2,681名に75g経口糖負荷試験を行い、HbA1c、グリコアルブミン(GA)、1,5-AGを測定し、糖尿病網膜症(DR)の有無を判定した。血糖関連指標レベルの10分位別にみると、DRの頻度は空腹時血糖値(FPG)112-123mg/dl、負荷後2時間血糖値(2hPG)166-224mg/dl、HbA1c(NGSP)5.9-6.2%、GA16.2-17.5%以上のレベルで、1,5-AGでは9.6-13.5μg/ml以下のレベルで急上昇した。ROC解析でのカットオフ値はFPG117mg/dl、2hPG207mg/dl、HbA1c(NGSP)6.1%、GA17.0%、1,5-AG12.1μg/mlだった。感度およびROC曲線下面積(AUC)はいずれも2hPGが最も高かった。FPG、HbA1c、GA、1,5-AGの間でAUCに有意差はなかった。以上より、糖尿病診断のカットオフ値はFPG、HbA1cでは現在の診断基準値に比べ低く、2hPGではほぼ一致した。診断能は2hPGが最も高く、FPG、HbA1c、GA、1,5-AGで同等であることが示唆された。 また、2002年の健診を受診した40-79歳の住民のうち、心血管病(CVD)既往のない2,851名を7年間追跡した調査成績を用いて、HbA1cレベルとCVD発症の関係を検討した。その結果、多変量調整後のCVDのハザード比はHbA1cレベルの上昇とともに有意に増加した。病型別にみると、この関係は虚血性心疾患と脳梗塞で有意であったが、出血性脳卒中では明らかな関連はなかった。さらに、既知のCVD危険因子にHbA1cを加えるとAUCは有意に増加した。以上より、HbA1c値はCVD発症の有用な予測因子であることが示唆された。 上記の2つの研究成果はいずれも欧文誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
糖尿病の診断に対する血糖関連指標のカットオフ値とその有用性(Cardiovasc Diabetol. 2014; 13: 45)、心血管病発症の予測におけるHbA1cの有用性(Cardiovasc Diabetol. 2013; 12: 164)に関する研究成果はいずれも欧文誌に掲載された。また、糖尿病、糖尿病腎症、認知症の発症、癌死亡についての追跡調査も継続して進んでおり、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、2007-2008年の久山町循環器健診で75g糖負荷試験を施行し、HbA1c、GA、1,5-AGを測定するとともに頸動脈内膜中膜複合体厚(IMT)を測定している。HbA1c、GA、1,5-AG、FPG、2hPGと頸動脈内膜中膜複合体厚(IMT)との関連を検討し、これらの血糖関連指標の動脈硬化の指標としての有用性を比較・検証する。さらに、2002年の久山町集団の追跡調査を続行するとともにデータ入力および整備を進める。これにより、HbA1cと糖尿病、糖尿病腎症、認知症の発症、癌死亡との関連を検討することが可能になると思われる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
健診受診者全員にHbA1cをラテックス凝集法とHPLC法の両方で測定し、測定方法間におけるHbA1c値の差異を検証する予定であったが、計画を変更し、血糖関連指標とIMTの解析を行うこととした。そのため、HbA1cの測定費用が発生せず、未使用額が生じた。 未使用額は血糖関連指標とIMTに関する解析と成果発表、糖尿病、糖尿病腎症、認知症の発症、癌死亡の追跡調査に関するデータの入力・整備の経費に充てる。また、追跡調査の一環として行っている久山町の循環器健診では、服薬調査(薬剤師による聞き取り調査)も行っており、服薬調査のデータ入力・整備の経費にも充てる。
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Research Products
(10 results)