2012 Fiscal Year Research-status Report
地域別の有効な減塩施策のシミュレーションモデルの開発
Project/Area Number |
24590832
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | 0082613 |
Principal Investigator |
西 信雄 独立行政法人国立健康・栄養研究所, 国際産学連携センター, センター長 (80243228)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥田 奈賀子 独立行政法人国立健康・栄養研究所, 栄養疫学研究部, 室長 (80452233)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | システム・ダイナミックス / シミュレーション / 減塩 / 食塩摂取量の地域差 |
Research Abstract |
平成23年国民健康・栄養調査によると日本人の1日の食塩摂取量は約10gであり、世界保健機関(WHO)が掲げる5g未満という目標値の約2倍である。本研究は日本人の食塩摂取量を減少させる施策について、食塩摂取量の地域差をふまえたシミュレーションモデルをシステム・ダイナミックスにより開発することを目的として開始した。なお、システム・ダイナミックスは、社会システムのダイナミックな複雑性をストックやフロー、フィードバックループなどをもとにモデル化し、シミュレーションを行う手法である。 平成24年度は、システム・ダイナミックスに関する基礎的な研究を行うとともに、全国レベルで食塩摂取量を減少させる方策を検討した。まず、日本人の食塩摂取量が近年減少傾向にあるものの、塩分の嗜好や加工食品中の塩分は大きく変化していないと仮定し、加工食品中の食塩を減らせば食塩摂取量が減少すること、また味覚が低塩分嗜好の人が増加すると企業はそれに合わせて加工食品を開発、販売することをそれぞれ仮説とした。そして、日本人を大きく減塩の必要性を自覚していない人と自覚している人、また味覚が高塩分嗜好の人と低塩分嗜好の人にそれぞれ二分し、加工食品については高塩分食品と低塩分食品に分けてそれぞれストックとして、減塩の必要性の自覚、味覚の低塩分化、加工食品の低塩分化のフローを含むストック・フロー図を作成した。シミュレーションの結果、企業への予算配分比率を上げると加工食品の低塩分化が速く進み、嗜好の低塩分化も促進されることが示唆された。 本研究はシステム・ダイナミックスを健康施策のシミュレーションに用いたものであり、予防医学の今後の研究の方向性を示した点からも重要と考える。平成25年度は、食塩摂取量の地域差をふまえたシミュレーションモデルを開発するため、さらに研究を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の平成24年度研究実施計画では、平成22年国民健康・栄養調査データをもとに全国12の地域ブロック別に食塩摂取量に寄与の大きい食品を明らかにすることとしていた。結果的にそれが未実施となったのは、国民健康・栄養調査の調査票情報として食品別の摂取量が二次利用可能なデータに含まれなかったためである。そのため、平成25年度に実施予定であったシミュレーションモデルの開発を前倒しで実施した。平成25年度には、平成22年国民健康・栄養調査の食品別のデータが登録される予定であるため、当初の平成24年度研究実施計画の内容とあわせて、全国レベルのシミュレーションモデルの開発をふまえた25年度の計画分も実施する。総合的にみて、達成度としては順調と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
システム・ダイナミックスを用いた予防医学分野の研究は米国を中心に海外では進んでいるが、日本ではまだ低調である。平成25年度は、7月に米国ボストンで開催される国際システム・ダイナミックス学会 第31回インターナショナルカンファレンスにおいて、24年度の研究成果をもとに発表する予定であり、海外の研究者と意見交換を行い、さらに研究を推進することとしたい。 また、平成25年度は22年国民健康・栄養調査の食品別摂取量のデータを厚生労働大臣の承認を得て二次利用することとしている。平成15年に施行された健康増進法により、それまでの国民栄養調査が国民健康・栄養調査として実施されるようになってから、食品別の摂取量のデータが登録されるのは平成22年分が初めてとなる予定である。近々登録される予定の貴重な食品別摂取量のデータにより、食塩摂取量の地域差をふまえたシミュレーションモデルの開発が推進できると考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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