2013 Fiscal Year Research-status Report
地域別の有効な減塩施策のシミュレーションモデルの開発
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24590832
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Research Institution | National Institute of Health and Nutrition |
Principal Investigator |
西 信雄 独立行政法人国立健康・栄養研究所, 国際産学連携センター, センター長 (80243228)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥田 奈賀子 独立行政法人国立健康・栄養研究所, 栄養疫学研究部, 室長 (80452233)
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Keywords | システム・ダイナミックス / シミュレーション / 減塩 / 食塩摂取量の地域差 |
Research Abstract |
集団における食塩摂取量を減少させるには、人々が減塩の必要性に気づくだけでなく、食品の食塩含有量を減少させることが重要である。システム・ダイナミックスは社会システムのダイナミックな複雑性をストックやフロー、フィードバックループなどをもとにモデル化し、シミュレーションを行う手法であり、集団における減塩施策を検討するのに適している。平成24年度に開発したモデルは、減塩の自覚系、塩分の味覚系、食品の塩分系という三つの系を結合させたものであり、以下のような構造であった。 減塩の自覚系は、減塩の必要性を自覚していない者と自覚している者の各ストックと必要性を自覚するフローから構成した。塩分の味覚系は、塩分の味覚が濃い者と味覚が薄い者の各ストックと薄味の味覚へのフローから構成した。食品の塩分系は、塩分の濃い食品と薄い食品の各ストックと塩分の薄い食品へのフローから構成した。 平成25年度は、塩分の選好なし、高塩分嗜好者の選好、低塩分嗜好者の選好、高塩分・低塩分嗜好者の選好の4つのシナリオにもとづき、集団の食塩摂取量のシミュレーションを行った。低塩分食品について、選好なしでは高塩分食品と区別することなく利用し、低塩分嗜好者の選好では積極的に利用するシナリオであったが、約5年後までは低塩分嗜好者の人数が大きくは増加しないため、全体の平均食塩摂取量も食品の平均塩分量と同等あるいはそれよりやや低い程度であった。一方、高塩分嗜好者の選好および高塩分・低塩分嗜好者の選好のシナリオでは、高塩分嗜好者は約9年後まで高塩分食品のみを利用し続けるため、全体の平均食塩摂取量は高塩分食品と同等の食塩摂取量のまま大きく低下しなかった。この結果、集団の平均食塩摂取量を早期に低下させるには、高塩分嗜好者に高塩分食品の利用を継続させるのではなく、早期に低塩分食品を選択するよう誘導することが重要であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に開発した国家レベルの減塩のシミュレーションモデルをもとに、塩分の嗜好に関する4つのシナリオについてシミュレーションを行った。国民の平均食塩摂取量を早期に低下させるには、高塩分嗜好者に高塩分食品の利用を継続させるのではなく、早期に低塩分食品を選択するよう誘導することが重要であることが明らかとなり、地域別の減塩施策を検討するために重要な知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究により、高塩分嗜好者に低塩分食品を早期に選択するように誘導することが重要であることが明らかとなった。地域別の減塩施策を検討するには、地域別に年齢階級別の食塩摂取の特徴を把握する必要がある。このため、例年より標本数を拡大して実施された平成24年国民健康・栄養調査のデータを利用して、年齢階級別食塩摂取量の地域差を検討する。また、既存の食品摂取のデータをもとに、高塩分摂取につながる食品を特定し、低塩分食品への誘導方法を検討する。以上の結果を総合して、地域別の有効な減塩施策のシミュレーションモデルを開発する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
必要な物品が予定より安価に購入できたため、次年度使用額が生じた。 平成26年度に消費税率が8%になることから、物品費の消費増税分に充当する。
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