2012 Fiscal Year Research-status Report
循環器疾患における高齢者サルコペニアの臨床的意義の解明
Project/Area Number |
24590893
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
石川 和信 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (80222959)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | サルコペニア / 循環器疾患 / 高齢者 |
Research Abstract |
超高齢化社会を迎えた我が国では75歳以上の後期高齢者が抱える臨床的な問題点を包括的に捉えた診療が要請されている。動脈硬化を基盤とした虚血性心疾患や慢性心不全の管理は後期 高齢者に高頻度に存在し、これらのリスクファクターである高血圧、脂質異常症、糖尿病なども循環器医が継続的に管理することが多い。このため、本申請研究では後期高齢者において注目されつつあるサルコペニア(加齢に伴う横紋筋減少症)と循環器疾患との因果関係を臨床的に検討し、サルコペニアの重症度や予後を反映する循環器診療における臨床指標や薬物療法の検討を行っている。また、実験的に動脈硬化マウス加齢モデルを作成し、サルコペニアの病因・病態生理を検討している。 循環器疾患とサルコペニアとの相互関係の臨床的検討については、(1) 慢性心不全や虚血性心疾患を有する患者がどの程度サルコペニアを合併しているか、(2) 慢性心不全および虚血性心疾患の罹患にサルコペニアの存在や重症度が影響するか、(3)サルコペニア合併が循環器病患者の生命予後やQOLにどのように影響するか、(4)高齢高血圧患者における血圧動揺や起立性低血圧症の発生にサルコペニアが関与するかについて検討している。 同時に、運動療法(スリング運動)がサルコペニアや慢性心不全や虚血性心疾患の進展を抑制するかについても、高齢者を対象とした介護運動プログラムの実践を通じて観察している。 実験的検討については、超高齢(1-2年齢)ヘムオキシゲナーゼ(HO)欠損マウスやLDLレセプター欠損マウスを用いて、高脂血症、高血圧などがサルコペニアの進行に与える影響を観察している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
循環器疾患とサルコペニアとの相互関係の臨床的検討については、慢性心不全や虚血性心疾患を有する患者にどの程度サルコペニアを合併しているか、慢性心不全および虚血性心疾患の罹患にサルコペニアの存在や重症度が影響するかの2つの観点からの患者登録票を作成し、40歳以上の患者を対象として症例の登録を進めている。サルコペニアについては最適な評価方法を検討している段階にある。登録者を性別、年齢、循環器病の基礎疾患の有無で区分し、また、冠リスクファクター(喫煙、高血圧、脂質、糖尿病、BMI、腹囲)を変数として考慮している。 サルコペニア合併と循環器病患者の生命予後やQOLとの関係性については前述の登録患者においてサルコペニアの程度、介護度、自立度、認知機能を評価して前向き調査を進めている。高齢高血圧患者における血圧動揺や起立性低血圧の発生とサルコペニアとの関係性については40歳以上の高血圧患者を対象にサルコペニアの評価、24時間携帯型血圧計を用いた自由行動下血圧測定を用いて評価している。 超高齢(1-2年齢)ヘムオキシゲナーゼ(HO)欠損マウスやLDLレセプター欠損マウスを用いた観察では、高脂血症、高血圧がサルコペニアの進行に与える影響を観察しているが、HO-1欠損が血管壁の炎症を惹起し、HDLのアポリポタンパクの組成を変化させることを見出し報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
循環器疾患とサルコペニアとの相互関係の臨床的検討については現在の検討を継続することで推進できると考える。一方、運動療法(スリング運動)がサルコペニアや慢性心不全や虚血性心疾患の進展を抑制するかについては、高齢者を対象とした介護運動プログラムの実践を通じて観察しているが、対照群の設定が倫理的に困難と考えられるので前向きコホート研究のデザインを考えている。運動の実施回数、期間とサルコペニア、循環器病、生命予後との関係を検討する。 探索的課題として、心血管リスクのバイオマーカーがサルコペニアの指標(マーカ-)として利用可能かについては、生理学的検査やバイオマーカーの検討を考える。認知機能の低下した高齢者が多く同意を得るプロセスが複雑だが、倫理的配慮を十分に行って実施したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
基本的に当初の計画に沿って研究費を使用する。バイオインピーダンス体組成計については、携帯性に優れた機種が必要な状況になったため、機種選定を慎重に行っている。早急に最良の機種を購入する方針である。基礎研究のための消耗品費・飼育費は従来通り見込む。学会旅費、その他の費用については、論文化の目途がついた時点で使用する方針であるが、先端研究を実施している施設からの情報収集を行うことも検討する。
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Research Products
(8 results)