2013 Fiscal Year Research-status Report
膵癌の発癌進展過程を通じ高発現する膵癌特異的抗原の機能解析と臨床応用
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24591007
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊地知 秀明 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (70463841)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊佐山 浩通 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (70376458)
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Keywords | PSCA / 膵癌 |
Research Abstract |
膵癌の発癌過程において早期から進行期までを通じ高発現している抗原PSCAは、膵癌の発癌機序の根幹にかかわっている可能性があると共に、治療標的であり、かつ早期診断にも用いることが出来る可能性がある。我々は、臨床の膵癌組織像をよく再現する遺伝子改変マウスモデル(膵臓上皮特異的変異型Kras発現+Tgfbr2ノックアウト)を樹立し既に報告している。このマウス膵癌組織から樹立した膵癌細胞では、前癌病変の細胞(変異型Kras発現のみ)に比べ、PSCAは有意に高発現している。本研究では、このPSCA分子の機能解析を行うため、もともとPSCAを高発現しているヒト膵癌細胞株のPSCAを恒常的にノックダウンしたところ、in vitroにおける細胞増殖が著明に抑制され細胞死に至った。この結果から、PSCAの機能的重要性が示唆される。これと並行してPSCA発現ベクターをデザインし、ノックダウン株に強制発現したが、細胞増殖の抑制は十分には回復されず、ウイルスベクターによるPSCA発現量が不十分であったと考えられる。PSCAは機能や細胞内シグナルに与える影響が未知であり、PSCAノックダウン細胞におけるMAPK,PI3Kシグナルの変化をWestern blotにて検討したが、有意な変化は見られなかった。また、マウス膵癌細胞でのPSCAノックダウン株、およびテトラサイクリン誘導性のPSCAノックダウン細胞株も樹立した。PSCAは中和抗体を用いて細胞傷害性T細胞の殺細胞効果による治療への応用が臨床的に試験されているため、これをC57BL/6野生型マウスへ移植しin vivoにおけるPSCAの機能解析を行っていく予定であり、移植の条件を検討している。 またテトラサイクリン誘導性ノックダウンについてこれまでの条件検討に基づき細胞内遺伝子発現プロファイルの変化を解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヒトおよびマウス膵癌細胞を用いたPSCAの恒常的ノックダウン細胞を樹立し、その表現型の変化を見出すと共に、遺伝子発現プロファイルの変化を網羅的に解析し、PSCAの惹起する細胞内シグナルや標的分子を明らかにする計画であったが、PSCAという分子の扱いが容易ではない。もともとPSCAが高発現のヒト膵癌細胞株でのPSCAノックダウンにて著明な細胞増殖抑制効果がみられており、機能的に重要な分子であると考えられる。複数のヒト膵癌細胞において、mRNA発現量と蛋白発現量との乖離がみられ、これはpseudogeneの存在のためと考えられること、マウス細胞ではよいPSCA抗体がなく、蛋白量の制御を直接確認することが困難であること、ヒト膵癌細胞株で恒常的ノックダウン細胞を樹立でき、この細胞についてはmRNA発現量と蛋白発現量とは相関していたが、増殖が著明に抑制されその他の表現型を検討することが困難なこと、またノックダウン細胞でのMAPK, PI3Kシグナルの変化は不明瞭であるなど、PSCAの機能解析の上で問題点が多い。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、これまでに検討したテトラサイクリンによるPSCAノックダウンの条件に基づき、PSCAノックダウンによる膵癌細胞の遺伝子発現プロファイルの変化をマイクロアレイにて網羅的に解析する。この結果、有意に発現の変動した分子を定量的RT-PCRにて確認し、その中から細胞増殖抑制という表現型に関わっている標的分子を見出し、PSCA発現とその標的分子の発現との相関や細胞増殖との相関をin vitroの系にて検証する。その際、PSCAの強制発現系も用い、ノックダウンとは逆の発現制御の結果が得られるか、また細胞増殖促進効果がみられるか、についても検討する。 ここまでで得られたPSCA発現とそれに伴い変動する標的分子発現の結果が、実際の臨床の膵癌組織や前癌病変であるPanIN組織においてもみられるか、手術検体の免疫染色にて検討する。 また、in vivoの系としてテトラサイクリン誘導性PSCAノックダウン膵癌細胞株をC57BL/6野生型マウスに移植し、テトラサイクリンによりノックダウンを誘導することでin vivoにおける癌細胞の増殖やアポトーシスに変化がみられるか、また脾注肝転移モデルにおいて肝転移に変化がみられるかといった表現型を検討する。 さらに、PSCA中和抗体による治療がin vivoモデルにおいて有効性を示すことができるか、我々の有している膵臓特異的変異型Kras発現+Tgfbr2ノックアウトによる膵発癌モデルを用いてPSCA中和抗体投与実験を行い、免疫系賦活効果を含めた抗腫瘍効果の詳細を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
PSCAノックダウンによる著明な細胞増殖抑制効果という表現型の変化を得たものの、その後のPSCA発現のレスキューやテトラサイクリン誘導性ノックダウンの条件検討が容易ではなかったため、マイクロアレイによる遺伝子発現プロファイルの検討まで進んでいなかったため。 今年度は、これまでに検討したテトラサイクリンによるPSCAノックダウンの条件に基づき、PSCAノックダウンによる膵癌細胞の遺伝子発現プロファイルの変化をマイクロアレイにて網羅的に解析する。これには、誘導性ノックダウン株におけるテトラサイクリンの誘導の有無による比較と、対照株におけるテトラサイクリン投与の有無による比較、さらに誘導性ノックダウン株と対照株ともにテトラサイクリン投与した時の比較の三種類の比較を行う。このためのマイクロアレイ費用に26万円を計上している。その他、細胞培養関連に約50万円、動物飼育およびそれを用いた実験に約70万円を計上している。
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