2012 Fiscal Year Research-status Report
血管内皮リパーゼのDysfunctional HDLと動脈硬化の成因に及ぼす影響
Project/Area Number |
24591050
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
石田 達郎 神戸大学, 医学部附属病院, 准教授 (00379413)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平田 健一 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20283880)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 高比重リポ蛋白 / 動脈硬化 / dysfunctional HDL / ミエロペルオキシダーゼ / パラオキソナーゼ / 冠動脈疾患 / スタチン / 炎症 |
Research Abstract |
「善玉」と呼ばれるHDLは、炎症などの病態では含有脂質や蛋白質成分が変化し、「dysfunctional = 悪玉」となることが報告されている。本研究は、ヒトにおいてHDLの質的変化が冠動脈疾患の発症にどのように関与しているのかを明らかにする。 1) dysfunctional HDLの測定系の確立:本年度は、dysfunctional HDLの指標として、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)とパラオキソナーゼ1(PON1)を測定し、患者血清中のHDLの抗炎症作用とMPO/PON1比との関係を検討した。血清MPO/PON1比は、冠動脈疾患患者において非冠動脈疾患患者と比べて有意に高値を示し、冠動脈画像診断(冠動脈造影とOCT)による検討の結果、冠動脈形成術後の再狭窄や新規病変の進展が認められた患者において高値を示した。細胞学的検討により、MPO/PON1比が高い患者のHDLは抗炎症作用が減弱していた。すなわち、MPO/PON1比はdysfunctional HDLの簡易マーカーとなることが示された。 2)スタチンによるHDLの質的改善作用の検討:スタチン治療によってHDL-C値が増加することはよく知られているが、スタチン治療後のHDL質的評価は検証されていない。そこで、スタチン投与前後血清を用いてHDLの質的評価を行った。スタチンはHDL-Cを増加させたが、増加したHDLはコレステロール引抜き能や抗酸化能を保持していた。すなわち、スタチンはHDLの機能を改善し、スタチンによって増加したHDLは抗動脈硬化作用を有していることが確認された 。スタチンはLDL低下作用に依存しない心血管イベント抑制効果を有することが報告されているが、その作用に一部にHDLの質的改善作用が関与することが示唆された。 3)血清HDL値の規定因子である血管内皮リパーゼの新規の測定系を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)血清中のdysfunctional HDLの測定評価方法は確立していなかったが、MPO/PON1比を測定することにより、簡単にdysfunctional HDLの存在を推定することが可能となった。実際にMPO/PON1比が高い患者のdysfunctional HDLは抗炎症作用が減弱していた。 2)スタチンは、dysfunctional HDLのコレステロール引抜き能や抗酸化能、抗炎症作用を改善することが判明し、HDL機能に対する薬物治療の効果判定が可能となった。 3) dysfunctional HDLは冠動脈疾患で高値を示し、とくにカテーテルによる冠動脈形成術後の再狭窄や新規病変の進展と有意に相関していた。 以上より、今後は症例を重ねて前向きに追跡し、冠動脈病変の組織性状や心血管イベントとdysfunctional HDLとの関連性を明らかにできる見通しが立った。さらに、血清HDL値の規定因子である血管内皮リパーゼの役割についても検討が可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
1.冠動脈疾患患者において、HDLの質的解析(dysfunctional HDLの定量)の簡易法の確立と標準化をさらに進めると同時に、質量分析と細胞実験等を駆使して詳細なHDLの質的機能とその機序を解明する。また、血清EL massやEL活性、種々のバイオマーカーとの関係を解明する。とくに、質量分析を用いてアポA1の化学的修飾(ニトロ化、クロロ化、カルバミル化など)とHDL機能との関連性を解明する。 2.冠動脈画像診断の結果とHDLの質的機能(dysfunctional HDL)、血清EL mass/EL活性などとの関連を検討することにより、どのようなHDLの質的特性が動脈硬化の進展・退縮を規定するかを前向きに追跡検討する。 3.高脂血症家兎にアデノウイルスを用いてELを過剰発現させ、HDLの量的質的変化と動脈硬化の関連とその機序を検証する。また細胞実験を用いてその分子機序を解明する。 以上のように、臨床研究と動物実験とを併用することにより、単なる現象の観察のみならず細胞実験や動物モデルによる治験の裏付けと分子機序の解明を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
HDLの質的解析(dysfunctional HDLの定量)の簡易法の確立のために、候補となる複数の標的分子の測定試薬の購入に合計45万円、と特殊項目(質量分析、ゲル濾過解析等)費用として30万円を計上した。また、WHHLウサギ購入飼育費用として60万円を計上した。
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[Journal Article] Enzyme-linked immunosorbent assay system for human endothelial lipase2012
Author(s)
Ishida T, Miyashita K, Shimizu M, Kinoshita N, Mori K, Sun L, Yasuda T, Imamura S, Nakajima K, Stanhope KL, Havel PJ, Hirata K.
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Journal Title
Clin Chem
Volume: 58
Pages: 1656-1664
DOI
Peer Reviewed
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