2013 Fiscal Year Research-status Report
膜電位・細胞内カルシウム同時マッピングによる除細動後心室細動再発の機序解明
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24591076
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
丸山 光紀 日本医科大学, 医学部, 助教 (30333123)
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Keywords | 心室細動 / 除細動 / 細胞内カルシウム / ATP感受性カリウムチャネル / 電気的ストーム |
Research Abstract |
致死的不整脈である心室細動は電気的除細動が唯一有効な治療法だが、除細動後に心室細動再発を繰り返すことがあり心肺蘇生失敗の大きな要因となっている。 本研究は心室細動再発における交感神経刺激の役割を解明すべく、ウサギの正常心を用いて、交感神経刺激時の除細動後活動電位持続時間(APD)短縮の分布・ばらつきや時間的推移、Ca2+トランジェント持続時間(CaTD)との差異と心室細動再発との関係を調べた。除細動後、交感神経刺激時のみ不均一なAPD短縮が観察された。さらにCa2+過負荷を加えるとCaTDが延長し、APD短縮部位でのAPD・CaTDの差異が増大し、第3相早期後脱分極から心室細動の再発が観察された。この除細動後のAPD短縮は一般的な抗不整脈薬が有する速活性型遅延整流性K+電流(IKr)の阻害では延長せず、ATP感受性K+電流(IKATP)阻害薬であるグリベンクラミドにより特異的に延長し、また心室細動再発が予防されることを見出した。本研究はランゲンドルフ還流下の実験で心室細動中の心筋還流は維持されており、冠静脈洞流出液の乳酸上昇が見られないことから、このIKATP活性化は虚血によるものではなく、心室細動中の高頻度興奮と交感神経刺激ストレスに伴うものと考えられた。生体位心では心室細動中には必ず虚血を伴うためさらなるIKATP活性化をきたすと思われ、IKATPが除細動後心室細動再発に大きく寄与していることが本研究により示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回交付された助成金により、共通の対物レンズで記録してDichroic mirrorにて膜電位と細胞内Ca2+シグナルを分光するシステムを導入し、両シグナルの同軸撮影が可能となった。また高輝度・高安定なLED光源を助成金により購入し、良好なシグナルを得ている。これらの新システムを用いて上記の研究実績概要で述べた知見を得、成果を既に米国不整脈学会の機関誌であるHeart Rhythm誌に投稿し受理された。
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Strategy for Future Research Activity |
正常ウサギ心を用いた実験では、Ca2+過負荷の状況を実験的に加えた場合のみ心室細動の再発が観察された。したがってより生理的な環境での心室細動再発における交感神経刺激およびIKATP活性化の役割は不明であり、本研究結果の意義や重要性に関わる問題と 考えられる。そこで現在はウサギ心不全モデルをドキシルビシン間欠投与により作成しており、不全心において交感神経刺激および心室細動誘発・除細動を繰り返すことにより正常細胞外イオン環境下においても心室細動再発が再現されるという仮説のもと実験を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後の研究推進方策で述べたように、より生理的な環境での心室細動再発における交感神経刺激およびIKATP活性化の役割を今後明らかにするため、ウサギ心不全モデルを用いて交感神経刺激および心室細動誘発・除細動を繰り返すことにより心室細動再発が再現されるという仮説のもと実験を行う予定である。 次年度の研究費は主に実験動物や光学的マッピングで必要な試薬等の消耗品費に充てる予定。
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