2012 Fiscal Year Research-status Report
次世代エピゲノム解析および超微細構造解析を応用した難治性心不全発症機序の解明
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24591097
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
朝野 仁裕 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60527670)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
肥後 修一朗 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (00604034)
南野 哲男 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30379234)
加藤 久和 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (30589312)
扇田 久和 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (50379236)
真田 昌爾 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (70593797)
塚本 蔵 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (80589151)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 難治性心不全 / 分子循環器病学 / 臨床循環器 / エピゲノム / 細胞核クロマチン |
Research Abstract |
難治性重症心不全の発症分子機序を解明し、心不全エピゲノム臨床診断法の確立を目指すため、国内有数の重症心不全組織検体、先進的次世代エピゲノム解析技術、独創的な超微細構造解析技術(心筋病理)を利用し、分子生物学と病理学を臨床診療に応用する研究を行う。 DNAやヒストン修飾など、細胞固有のクロマチンリモデリングによる遺伝子発現制御機構が明らかとなり、転写因子上流に作用するエピジェネティック制御機序は細胞機能に重要な役割を果たすことが示され、発生・分化、再生、癌に関する研究分野で画期的な進展が数多くみられている。さらに環境の変化に応じたエピゲノム修飾変化が生じることが報告された。臨床分野に関連しても生理機能/病態変化に対するエピゲノム変化も多く示されてきた。 解析検体入手および解析方法の難しさから、臨床心臓エピゲノム研究は未だ黎明期にある。研究代表者は、豊富なヒト心臓検体とin vivo解析法、超高速DNAシーケンサーを有し、独自に臨床検体解析システムを構築した。本研究においては心不全病態におけるクロマチン構造変化の重要性を、世界に先駆けて解析し、臨床診療に結び付く基礎的研究基盤を整える。心臓移植や人工心臓植込み適応となる臨床病態症例を中心とした、臨床検体保存システムから得たヒト重症心不全組織を対象に、重症不全心筋細胞の細胞核ヘテロクロマチンの超微細構造解析を行い、非分裂細胞である心筋細胞特異的なDNAメチル化変化を同定し、分子生物学的意義を解明する。 慢性病態経過の中で非分裂性を有する心筋細胞が示す特有のエピジェネティック分子機序の病態意義を明らかにし、最新顕微鏡技術による超微細構造解析をガイドに、心不全病態特異的な構造変化を追究することで、心臓エピゲノム臨床診断の新しい研究基盤を築くことを目的とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
以下3項目を当初3カ年の全体計画に据えている。(A) H24年度~:クロマチン構造解析技術(独自に開発)を利用し核クロマチン高次構造分類、(B) H24年度~:次世代エピゲノム解析結果(蓄積中)を利用し心筋特異的DNAメチル化解析、(C)H25年度~:心不全エピゲノム臨床診断法の確立。上記よりH24年度は以下の進捗を得た。 (A)核クロマチン高次構造分類:マウス心不全動物モデルの心臓組織を用いて透過型電子顕微鏡電子顕微鏡像および超高電圧電子顕微鏡を用いた高解像度超微細構造観察を行った。電子線トモグラフィーによる立体構造再構築により、クロマチン微細構造変化を追い、透過型電顕で認めた結果と微細構造解析結果の照合を行う事ができた。さらに動物モデルの不全心における臨床下記指標の変化と、組織核クロマチン構造の変化についての解析を行った。 (B)次世代エピゲノム解析(特異的DNAメチル化解析):圧負荷心不全マウス心臓組織を用い、次世代シーケンサーを利用し心不全エピゲノム修飾変化(ChIP-seq)および遺伝子発現変化(RNA-seq)を解析した。インフォマティクス解析についても独自に手法を確立し、心不全エピゲノム統合データベースを構築することができた。このプロファイルは心臓特異的、病態特異的変化を示す遺伝子の有用な統合データベースとすることが可能である。現在これらをもとに、特異的遺伝子の同定作業を行っている。 さらに、上記(A)(B)が予定以上の進捗を得たため計画(C)を前倒し、検討を進めている。ヒト臨床各指標とクロマチン変化を示す画像指標について、5年前より大阪大学で同意書を得て蓄積した重症心不全症例の検体バンクから100例程度のパイロットデータを抽出し、相関関係についての検討を開始することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究において、重症心不全の臨床病態の鑑別が可能な、独自のクロマチン構造解析技術を開発した。H24年度は予定以上の進捗を得たので、H25年度のみならずH26年度の研究についても前倒し検討を進める予定である。 (A)クロマチン構造解析技術(既に開発済み)を利用し核クロマチン高次構造分類を行う:1)マウス心不全モデルにおける心筋細胞核クロマチン高次構造変化のクラス分類を行う。2)ヒト不全心筋組織のクロマチン高次構造に関して同様に分類し、動物モデルと差異を比較する。 (B)次世代エピゲノム解析結果(既に蓄積済み)を利用し心筋特異的DNAメチル化解析を行う:1)独自に開発した心不全病態のエピゲノム統合データベースと高次構造解析結果を照合し、マウス心不全モデルとヒト重症心不全の両者の検討から、ヘテロクロマチン構造変化を来たした心不全症例を同定する。適切なDNAメチル化解析対象を選定し、メチル化解析を実施する。2)心臓特異的メチル化部位および不全心筋細胞特異的メチル化部位を同定する。 (C)心不全エピゲノム臨床診断法を確立する:1)メチル化変化が及ぼす遺伝子発現プロファイルへの影響を解析し心不全病態との相関を探る。2)DNAメチル化変化の心不全病態における分子生物学的意義を解明し、クロマチン構造解析技術との関連性を検討することにより、心不全エピゲノム臨床診断法の確立を目指す。 以上より、現象論にとどまらず、H24年度に確立した心不全エピゲノムデータベースを利用し、最新解析手法と心不全病態モデルを利用した基礎的分子機序に裏打ちされたヒト重症心不全臨床診断技術の開発を目指す。データベースが完成されれば、同じ目的の研究を進める各所との共同研究もさらに進めて、データベースの有効利用に努めたい。さらにこのデータベースを最新技術、情報解析技術も取り入れさらに強固なものとする予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
基本計画通り研究費の使用とその進捗が得られており、当初初年度に申請した研究計画及び研究費用の使用計画を大きく変更する予定はない。大きく3つの研究すなわち、(A)クロマチン構造解析技術を利用した核クロマチン高次構造分類、(B)次世代エピゲノム解析結果を利用した特異的DNAメチル化解析、(C) 不全心筋細胞におけるDNAメチル化変化の病態学的意義の解明と心不全診断法の確立、に分けて研究を実施する。(A)においては動物モデル組織標本の作製を中心に、(B)においてはその動物モデルまたはヒト臨床検体などからの分子生物学的実験を行う際に必要と考えられる試薬消耗品の購入を中心に、(C)についてはコンピューター情報解析であるため、その実施において当該年度に必要な消耗品の購入に、研究費を充てる予定である。 以下、本研究に必要な消耗品について列挙する。1.消耗品となる実験試薬(一般)・実験器具(一般):計300,000円を計上した。2.ChIP関連試薬:本研究の主体となるクロマチン免疫沈降法に要する試薬として、1assay(3,000円)と計算してH25 年以降H26年度を中心に総計300,000円(約100反応分相当)を計上した。3.メチル化解析試薬:今回16種類の検体解析を行う予定である。全て合算して、計1,800,000円計上した。4.Mouse飼育購入費用:本研究には研究計画・方法に基づいて計算し、計250,000円を計上した。5.生直ラット購入費用:ラット培養心筋細胞を用いた検討において、1回2腹分の培養細胞で実験行うことから、1腹あたり約10,000円かかると計算、計250,000円を計上した。さらに、研究分担者とうち合わせ費用、国内外での研究成果発表に必要な学会出席旅費、論文発表経費を最低限必要と思われるもののみ計上した。
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[Journal Article] H(2) mediates cardioprotection via involvements of K(ATP) channels and permeability transition pores of mitochondria in dogs.2012
Author(s)
Yoshida A, Asanuma H, Sasaki H, Sanada S, Yamazaki S, Asano Y, Shinozaki Y, Mori H, Shimouchi A, Sano M, Asakura M, Minamino T, Takashima S, Sugimachi M, Mochizuki N, Kitakaze M.
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Journal Title
Cardiovasc Drugs Ther.
Volume: 26
Pages: 217-26
DOI
Peer Reviewed
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