2012 Fiscal Year Research-status Report
ヒトES/iPS細胞由来心筋細胞の腫瘍化克服のための革新的な高純度単離技術の開発
Project/Area Number |
24591099
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
三井 薫 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 講師 (40324975)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小戝 健一郎 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (90258418)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 再生医療 / ヒトES/iPS細胞 / アデノウイルスベクター / 心筋細胞 |
Research Abstract |
ヒトES/iPS細胞による再生医療の実現化において、克服すべき最重要課題は「腫瘍化を完全に克服する技術の開発」である。我々は、"腫瘍化原因細胞(残存未分化細胞)の除去"と"目的分化細胞の純単離"という二つのアプローチから、課題解決に向けて研究を進めている。 1)腫瘍化原因細胞の除去方法の確立:未分化ES細胞特異的遺伝子プロモーターを用いて、未分化細胞を可視化するウイルスベクターを作製した。これまでに基本のウイルスベクター構築が終わり、未分化細胞の可視化を確認したところである。 2)目的分化細胞(心筋系統細胞)の同定単離技術 a1)ES/iPS細胞からの心筋細胞への分化誘導系の確立:心筋分化に必要な転写因子を経時的にES/iPS細胞へ導入し心筋細胞への分化への影響を確認したが、分化効率の大幅な向上はみられなかった。現在これまで報告されている論文を参考にさらなる分化誘導効率の検討を行っている。 a2)体細胞(線維芽細胞)からの心筋細胞(iCM)への分化誘導系の確立:iCM分化条件を検討しているが、分化効率の大幅な向上はみられなかった。a1)で最適な分化条件が得られた後に、それを応用する方が計画全体として効率が良いと考え、次年度以降へ計画を延期している。 b)心筋細胞単離のためのアデノウイルスベクターの作成:マウスNkx2.5プロモーター、マウスαMHCプロモーターの下流にCreリコンビナーゼ遺伝子をつないだ発現調節アデノウイルスベクターと、Creが発現したときのみCAプロモータによりEGFPが発現するレポーターアデノウイルスベクターを組み合わせたACT-SC法を用いて、ヒトES/iPS細胞から分化した心筋細胞の一部を可視化できることを確認した。しかしながらEGFP発現細胞数が少ないため、細胞分取にはいたっていない。分化誘導系の検討とあわせて今後細胞分取を行う予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)腫瘍化原因細胞の除去方法の確立:研究の目的である”腫瘍化阻止"をより発展させるために、構築したベクターを用いて未分化な細胞を蛍光タンパク質で標識できることを確認し、1)については順調に進展している。 2)目的分化細胞(心筋系統細胞)の同定単離技術 a1)ES/iPS細胞からの心筋細胞への分化誘導系の確立:遺伝子導入により心筋分化効率の向上がみられ、さらに最新の心筋分化の論文を参照しより効率的な分化誘導系の確立を試みていることから、おおむね順調に進展していると考える。 a2)体細胞(線維芽細胞)からの心筋細胞(iCM)への分化誘導系の確立:当初計画していた方法では、分化誘導効率の上昇が得られないことが判り、a1)で得られた結果を応用しようと、計画を次年度に持ち越しているため、やや遅れていると考える。 b)心筋細胞単離のためのアデノウイルスベクターの作成:平成24年度の計画ではヒトNkx2.5プロモーター、ヒトαMHCプロモーターを持つ発現調節アデノウイルスベクターの作製を行う予定であったが、すでにあるマウスゲノム由来のプロモーターがヒトES/iPS細胞でも使用できることが確認できたため、当初の計画以上に進展している。 以上のことから、全体的におおむね順調に進展していると評価する。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)腫瘍化原因細胞の除去方法の確立:作製したウイルスベクターを用いて、未分化/分化細胞についての同定を行う。さらに、未分化/分化細胞を単離し、それぞれの細胞特性について細胞培養や遺伝子発現パターンなどについて解析を行う。 2)目的分化細胞(心筋系統細胞)の同定単離技術:ヒトES/iPS細胞もしくは体細胞(線維芽細胞)からの心筋分化についてさらに検討を重ね、より心筋分化効率の高い方法についてこれまで発表されている論文等を基に分化効率の改善を試みる。これについては、平成24年度にいくつかのグループから心筋細胞誘導に有効な方法が報告されているため、それを追試し、改良を加えていく予定である。加えて、分化誘導後にACT-SC法により分化(もしくは誘導)心筋細胞を分取を試み、心筋細胞単離効率について検証を行う。さらに単離した心筋細胞について電気生理学的、組織学的な解析を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ACT-SC法で用いる発現調節アデノウイルスベクターを構築する予定であったが、既に当研究室にあったウイルスベクターでヒトES/iPS細胞由来の分化心筋細胞を同定することが可能であることが判ったことから、ウイルス産生に掛かる費用が当初予定していたよりも少なかったため、計上していた予算よりも低い研究費で実験を行うことができた。また「a2)体細胞(線維芽細胞)からの心筋細胞(iCM)への分化誘導系の確立」は、まず「a1)ES/iPS細胞からの心筋細胞への分化誘導系の確立」をさらに効率化することができるような分化系を確立してからa2)へ応用した方が、全体の実験系として効率的であると考え、次年度以降に行うよう計画を変更したため、計上していた予算の一部を次年度へと繰り越した。
|
Research Products
(1 results)