2013 Fiscal Year Research-status Report
腸内細菌叢を変化させて腸管免疫修飾を介する新規動脈硬化予防法の開発研究
Project/Area Number |
24591114
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山下 智也 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90437468)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 直人 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00514746)
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Keywords | 動脈硬化 / 腸内細菌細菌叢 / 腸管免疫 / プロバイオティックス |
Research Abstract |
本研究の目的は、腸管からの免疫制御によって新規動脈硬化予防法を確立して、臨床にて患者に貢献することである。特に、腸内細菌に注目して研究を進めており、心血管病の発症に関連する腸内細菌叢のパターンを解明し、その腸内細菌に介入するような疾患予防法を開発することを目指している。 動物実験としては、腸内細菌に対する介入の一つとして、抗生物質投与を動脈硬化モデルマウスに行い、動脈硬化への影響を検討した。グラム陰性菌に対する抗菌作用の強いネオマイシンの投与で、動脈硬化抑制作用が認められ、グラム陽性菌の抗菌作用の強いバンコマイシンの投与では、動脈硬化に変化は認められなかった。腸内細菌と腸管免疫への影響を中心に、この効果の差異に関する機序の解明を継続して行っている。これが解明できれば、動脈硬化を悪化させる菌、予防する菌をある程度絞り込んでいける可能性がある。 予定より早く臨床研究を始めており、T-RFLP法という方法で人の糞便中の腸内細菌叢と冠動脈疾患の関連性を調査した。結果は、現在論文投稿中であり、マウスの基礎実験とこの臨床研究を合わせたデータから、新たな腸内細菌叢へ介入する動脈硬化性疾患の予防法を探索していく。 マウスの実験ではあるが、昨年度成功しなかったプロバイオティックス投与による動脈硬化予防に、一種類だけ成功した。その作用機序を含めての解明と、再現実験を行っている。さらに、腸管免疫機能に影響を及ぼすある細菌属種のカクテルを経口で投与して、動脈硬化を抑制する実験にも着手している。無菌マウスを使用した実験のみならず、より人での使用を意識した抗生物質と組み合わせた有効な投与方法を探索している。 当初の研究計画よりも、早い速度で研究が進行しており、本研究計画の最終年にさらに飛躍させて、臨床研究も含んだ大きな研究として発展させていく方針である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は、臨床研究に関しては、2年間の動物実験で「腸内細菌と動脈硬化の関連」を証明してから開始する予定であったが、世界的にも関連を一部証明した報告があり、我々も計画を前倒しにして開始し、実際に研究成果を得ている。実際には、千種類以上もある腸内細菌のこの菌が動脈硬化に関係しているというような成果につなげたいが、複数の菌種が関連している可能性が高く、T-RFLP法というおおまかな菌の属種の存在比率がわかる方法で冠動脈疾患罹患との関連を解析した。ある種の菌属が多い人に冠動脈疾患が多いことがわかり、今後はその中のどの菌がとくに関連しているのか?という研究に進めていく。 当初の計画のとおり、マウスの実験においても複数の「腸内細菌叢を変化させるような動脈硬化予防法」の候補を見つけ出し、その機序の解明に着手できている。これらを新しい動脈硬化予防方法として、臨床応用可能なのかの検討とともに、詳細な機序の解明をマウスを用いて行っている。 ヒトの研究成果を基盤にして、動脈硬化に関連した菌属を減らすような治療法の開発も想定して研究を進めており、これは当初の研究計画の中には無かったものだが、是非進めることでより臨床応用に直結する成果が得られる可能性がでてきている。 以上のように、マウス実験は当初の計画どおり進行しており、臨床研究が計画以上に早く進展できているので、上記のような評価をした。
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Strategy for Future Research Activity |
達成度報告の中で書いたように、予定よりも計画が進行しており、臨床研究にまで進んでいる。本研究計画の最終年は、動物実験と臨床研究を同時に進めて、より臨床応用に近い研究につなげていく方針である。 他の研究室からの報告で、ヒトでもマウスでも、腸内細菌によるある代謝産物が動脈硬化の悪化、ならびに動脈硬化性疾患の発症に関連していることが報告されたが、まだどの菌種が関連しているのかということは解明されていない。動脈硬化性疾患発症に関連する菌属は我々の研究で明らかになっているので、その研究成果を報告すると同時に、さらに詳細な菌種の同定作業を行っていく。ヒトの糞便サンプルを用いた研究で、シークエンス法を用いたより詳細な関連菌の特定作業を開始している。マウスを用いて、動脈硬化関連菌属を抗生物質などで減少させることが、動脈硬化予防につながるかの研究も開始した。 マウスの実験を進めることで、プロバイオティックスや菌種カクテル、そして抗生物質による腸内細菌への介入などの方法を新規動脈硬化予防法として利用できないかという研究を進めている。「腸内細菌叢」「腸管免疫」「動脈硬化」の3者の関連を、より詳細に解明できるように、他研究施設との共同研究として、無菌マウスによる実験も開始した。すべて、昨年の今後の研究推進方策の欄で計画した研究が順調に進行しているということであり、このまま推進していく。
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Research Products
(10 results)
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[Presentation] In vivo Expansion of Regulatory T Cells Attenuates Aortic Aneurysm Formation in Angiotensin II- Infused Apolipoprotein E-deficient Mice.2013
Author(s)
Keiko Yodoi, Naoto Sasaki, Taiji Mizoguchi, Takuya Matsumoto, Takuo Emoto, Yoshihiro Sasaki, Kazuyuki Kasahara, Tomoyuki Kita, Tomoya Yamashita, Ken-ichi
Organizer
Scientific Session of American Heart Association
Place of Presentation
Dallas, Texas, USA
Year and Date
20131117-20131120
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