2012 Fiscal Year Research-status Report
呼吸器感染症生体応答機構、特に転写応答機構の解明とその治療への応用
Project/Area Number |
24591152
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
石井 幸雄 筑波大学, 医学医療系, 教授 (80272194)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 細胞内寄生菌 / 宿主応答 / 転写因子 / ヘルパーT細胞 / マクロファージ / T-bet / SQSTM1 |
Research Abstract |
同じ病原菌に感染してもその重症度は個人差があるように、呼吸器感染症の感受性には宿主側因子が重要である。宿主応答が特に重要と思われる細胞内寄生菌のうち、頻度が高く難治化、重症化しやすい非結核性抗酸菌、レジオネラ菌に的を絞り、その応答機構を個体および細胞レベルで解析した。 代表的な非結核性抗酸菌であるMAC症の感染防御にはTh1型の免疫応答が重要とされている。転写因子T-betはTh1細胞分化のマスター制御因子である。T-betの欠損(T-bet-/-)マウス、およびT-bet高発現(T-bet-tg)マウスにMACを経気道感染させた肺MAC症モデルを作成し、それぞれのマウスでMACに対する感受性や肺組織におけるサイトカイン応答を解析した。T-bet-/-マウスは野生型マウスに比べ肺組織におけるMACの増殖が顕著であり、肺炎症の程度も高度であった。MAC感染後の肺組織ではインターロイキン17の著明な増加が見られた。一方、T-bet-tgマウスではMAC感染後の菌増殖は軽度であり、肺炎症の程度も野生型マウスに比べ微弱であった。肺組織ではインターフェロンγ濃度が顕著に増加していた。以上より、T-betの高発現は肺にTh1偏移(インターフェロンγ増加)をもたらし、MACに防御的に作用すると考えられた。一方、予想に反し、T-bet欠損はMAC感染後の肺組織にTh2ではなくTh17偏移をもたらし、肺炎症を亢進させるものと思われた。 レジオネラ菌はマクロファージに貪食され、オートファゴゾームで処理を受ける。p62/A170は、転写因子Nrf2により発現制御される、オートファジー関連因子LC3のアダプター分子である。p62を欠損するマウスではレジオネラ感染後の肺炎症が顕著に高まることが明らかになった。次年度研究ではT-betやp62による感染後宿主応答機構を分子レベルで明らかにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究計画のうち、マウスに臨床分離株のMACを経気道的に感染し、肺MAC症モデルを作成することは年度初めに達成された。MAC症に対する個体の反応(死亡率、体重減少、肺炎症)も経時的に測定し、データを採取した。肺組織のTh1/Th2/Th17サイトカイン濃度も十分量のマウスで測定し、データを採取した。転写因子T-bet,GATA3,RORγTの発現も各マウスで解析した。 ヒトレジオネラ肺炎の起因菌であるLegionella pneumophilaを用いたレジオネラ肺感染モデルの作成も年度初めに達成された。同モデルを使用し、感染後の個体反応(死亡率、体重減少、肺炎症)も経時的に測定し、データを採取した。肺組織やマクロファージにおける各種検討(TLRsの発現解析、Nrf2活性化、NF-κB活性化、TNF-α,IL-1β,IL-12,IL-18の各発現、およびCasapse1の活性化など)も当初予定通り施行した。研究計画は3年であるが、次年度中に当該の研究目標を達成し論文作成まで達成できる可能性も出てきた。
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Strategy for Future Research Activity |
T-bet欠損マウスではMAC感染後にTh17偏移を生じることが本年度研究で明らかになったことより、T-betとTh17細胞分化との関連についてその分子機構を転写因子相互作用を中心に明らかにする。転写因子RUNX1はTh17細胞分化のマスター制御因子であるRORγTの発現制御に関わること、T-betと二量体を形成しうることより、T-betはRUNX1を介してTh17細胞分化を抑制している可能性があり、同分子を中心に分子機構の解析を行う。T-betによるMAC増殖抑制がインターフェロンγを介していることを明らかにするため、MAC感染モデルにインターフェロンγを投与し、菌増殖や肺炎症の程度を比較する。またT-bet欠損マウスにおけるMAC感染後の肺炎症は好中球性炎症であったことより、同マウスにおける肺炎症亢進がIL-17を介していることを抗IL-17抗体を用いて個体レベルで明らかにする。 p62/A170のレジオネラ肺炎に対する防御機構についても分子レベルで明らかにする。p62/A170はLC3のアダプター分子でありオートファジーに関連する他、Keap1と競合しNrf2の活性化をもたらすことや、NF-κB活性化を抑制する多機能分子である。更に本年度研究ではp62/A170欠損マウスでIL-1β発現やCasapse1の活性化が亢進していたことより、インフラマゾームにも作用している可能性がある。以上より、レジオネラ菌感染後のオートファジー、Nrf2活性化、NF-κB活性化、およびインフラマゾーム活性化の程度を野生型マクロファージ、p62/A170欠損マクロファージで比較し、レジオネラ感染におけるp62/A170の作用分子を明らかにする。特にインフラマゾームについてはp62/A170の結合分子を同定したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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