2012 Fiscal Year Research-status Report
下肢最遠位部および上肢最近位部での末梢神経障害における定量的神経機能評価法の確立
Project/Area Number |
24591291
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
森田 洋 信州大学, 医学部附属病院, 准教授 (10262718)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 末梢神経障害 / 定量的感覚検査 / 末梢神経伝導機能 |
Research Abstract |
遠位部の末梢神経機能と臨床症状の客観的対比を本年度を行った。末梢神経障害の客観的評価指標として定量的感覚検査(Quantitive Sensation Testing, QST)があるものの、本邦ではほとんど用いられていないが、本研究ではQSTと神経生理機能検査の比較し検討した。 感覚障害を有するATTR Val30Met変異をもつ家族性アミロイドポリニューロパチー患者15名(51±14歳、平均±sd)。QSTをCASE IVを用いてcooling detection threshold(CDT), vibration detection threshold (VDT), visual analog scaleで5/10の痛覚を生じる温熱刺激(heat pain 5.0, HP5)を測定し、感覚神経伝導機能検査との相関を検討した。比較的症状の軽い上肢でも尺骨神経伝導機能は軽度低下していた。CDT, VDTも正常者より低下していたが(正常者の平均を50%としてCDT 67±31%, VDT 92±14%)、HP5.0は過敏から低下まで広範に分布していた(37±40%)。CDTはSCV, SNAP振幅と相関し、VDTはSCVと相関した(p<0.005)。HP5.0とこれらは相関しなかった。症状の重度な下肢では腓腹神経伝導機能はSCV, SNAP振幅ともに低下しており、QSTもいずれも低下していた(CDT 92±20%, VDT 97±6%, HP5.0 71±37%)。 CDT, VDTは比較的大径有髄線維の機能を主に反映し、温熱による痛覚は小径線維の機能を反映していると考えられるため、SCV・SNAPとCDT, VDTが相関することが予測された。しかし、障害が高度であると相関はみられないため、これらは双方を計測する必要がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
末梢神経の伝導機能を正確に記録する方法は既に確立しており、今回は遠位部の神経伝導機能と他覚的定量的末梢神経機能との関連を精査することができた。本研究の結果からは、はやり末梢神経伝導機能と自覚的な感覚機能の定量結果との間にはある程度の相関はあるものの、感覚障害の全体を神経伝導機能検査で推測することには問題のあること、および定量的感覚機能検査も病状の進行を必ずしも反映していない部分のあることが明らかとなった。今後はさらに別途パラメータを加えた検討を行う。 本研究課題では末梢神経遠位部と近位部それぞれの機能と感覚機能を定量し総合的に検討することをめざしているが、近位部については磁気刺激を用いて近位部の機能を測定することを検討している。磁気刺激装置を用いた記録は現在症例を蓄積しており、多数例の集積後に詳細な解析を行う予定である。 病理所見との対比は生検標本での末梢神経定量を通常の有髄線維密度測定だけでなく、無髄線維の定量を行い、定量的感覚検査との対比を開始した。7例の解析を行い症例の蓄積を行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
定量的感覚検査と末梢神経伝導機能の比較により、細径線維(C線維など)の伝導機能を定量しQSTと比較することの重要性が示唆された。そこで、本年度新たに細径線維刺激装置(表皮内電気刺激装置)を導入し細径線維の神経電位を誘発記録することを試み、その結果とQSTと比較することを開始する。 QSTと神経伝導機能の比較のためには定量的電流感覚閾値検査(current perception threshold, CPT)の意義も重要である可能性が考えられるため、QST施行時にCPTを同時に記録して直接比較する検討を開始した。 25年度はこれらの新たな探索項目を新たな刺激装置を導入したのちに追加し、症例の蓄積を行っていく。 また、細径線維刺激による神経電位の記録方法は確立していないため、25年度は正常者を対象とした研究から開始する予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画時より安価で購入できたため、次年度使用額が生じた。 細径線維刺激のための機器および刺激に必要な使い捨て皮内電気刺激電極を購入する。 これら以外の機器については既に整備が完了している。その他記録に必要な使いして電極刺激用針電極などを購入する。 成果発表のために学会参加するための費用、論文英文校正費用などを支出する予定である。
|