2012 Fiscal Year Research-status Report
胎児期作成局所皮質異形成ラットの自発てんかんの病態に基づく新規治療法の開発
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24591299
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
重藤 寛史 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 特別教員 (50335965)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | てんかん / 皮質異形成 / 自発発作 / 海馬 / 皮質 |
Research Abstract |
てんかんの原因として局所皮質異形成が知られているが,何故皮質異形成がてんかん原性を有しているのかわかっていない.我々はこれまでの研究でラット胎児脳に冷却損傷を与えることにより世界で初めて組織学的にヒト皮質異形成に類似した局所皮質異形成を有するラットを作成し,このラットでは発作誘発刺激を与えることなく自発発作を生じた.既存の研究では生直後に作成した冷却損傷を加えたラットモデルではin vitroでの異形成皮質周囲の興奮性の上昇は報告されているが,in vivoでの自発発作が生じたという報告は無い.我々のモデルでは胎児期に冷却損傷を与える以外,なんら発作を誘発する刺激を与えることなく,年齢依存性に,ヒトの性成熟期にあたるラット生後6週あたりから発作が出現し始めており,成人発症のてんかんに類似している.脳波所見,発作症状ともヒト内側側頭葉てんかんに類似していたが,新皮質に異形成が存在するのに,何故古皮質である内側側頭葉,すなわち海馬からてんかん発作が生じるのか,メカニズムが解明されていない.そこでまず,平成24年の実験ではどれくらいの割合でどの時期に,どの局在から自発発作を生じるのかを改めて検討した.また, NeuN染色を用いて皮質異形成の分布,海馬神経叢の変化を確認した. 結果,16匹中11匹(68.8%)で自発発作を認め,発症時期は45週以降で,発作開始部は海馬であることを確認した.これらのうち,異形成部に深部電極を設置した9匹でNeuN染色を用いて皮質異形成の分布を調べたが,海馬には大きな変化は無く,異形成は皮質に存在することが確認できた.すなわち,形態学的には海馬に損傷や異形成の存在が無いにも関わらず,脳波および症候上,海馬由来のてんかん発作を認めるという結果を得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
第1の目標である局所皮質異形性モデルの作製および脳波上での発作出現の定量は予定通り行った.この結果は一流雑誌に採択された.第1の研究に時間を要したために,第2の目標である皮質異形成ラット髄液の炎症マーカーの観察には至っていない.
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Strategy for Future Research Activity |
このモデルを用いて神経の興奮性がどのような経時変化を来たしているかを検証することはてんかん発症のメカニズムを解明するためには極めて重要である.これまでにてんかん発症の因子と推定されている炎症性サイトカイン/ケモカインなど炎症関連物質の変化とどのように関係するのかを検討し,てんかん発症のメカニズムにせまることを目標とする.今後は胎生作成皮質異形成ラットの髄液の炎症マーカーの観察,皮質異形成ラット脳組織の免疫染色による炎症および興奮性の観察を中心に行っていく.これまでの我々の結果で自発てんかんが6~7週以降から出現してくるという観察結果に基き,成長各段階での髄液中の炎症性サイトカイン(Tumor Necrosis Factor ; TNFα,Interleukin; IL1β,IL-6, IL-27, IL-31),抗炎症性サイトカイン(IL-4,IL-10,transforming growth factor; TGF-β),炎症性ケモカイン(CCL-4, IL-8, monocyte chemotactic factor; MCP-1),細胞接着因子(Intercellular adhesion molecule; ICAM-1、vascular cell adhesion molecule; VCAM-1)などの測定を行う.また組織観察も同様に, 皮質異形成部位,異形成部位に隣接した皮質,形成部位から離れた皮質,海馬CA3,海馬CA1,嗅内野において炎症サイトカイン,抗炎症性サイトカイン,炎症性ケモカイン,Toll様受容体4の免疫染色を行う.また,組織のてんかん活動性をみるために,グルタミン酸受容体の免疫染色も行う.これらをsemi quantitative densitometry analysisを用いて定量する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験動物購入・飼育費用.モデル作成に必要なプローベ,麻酔などの購入.髄液検査,免疫染色に必要な抗体(TNFα,IL1β,IL-6, IL-27, IL-31,IL-4,IL-10,transforming growth factor; TGF-β,CCL-4, IL-8, monocyte chemotactic factor; MCP-1,ICAM-1、vascular cell adhesion molecule; VCAM-1,NR1,NR2A,NNR2B,GLAST,GLT1,GFAP,GAD65/67の購入.結果発表にかかわる費用.
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[Journal Article] fosB-null mice display impaired adult hippocampal neurogenesis and spontaneous epilepsy with depressive behavior.2013
Author(s)
Yutsudo N, Kamada T, Kajitani K, Nomaru H, Katogi A, Ohnishi YH, Ohnishi YN, Takase KI, Sakumi K, Shigeto H, Nakabeppu Y.
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Journal Title
Neuropsychopharmacology
Volume: 38
Pages: 895-906
DOI
Peer Reviewed
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