2013 Fiscal Year Research-status Report
高脂肪食に対する嗜好性に関わる視床下部・脳内メカニズムの解明と医学応用
Project/Area Number |
24591338
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
益崎 裕章 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00291899)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高山 千利 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60197217)
島袋 充生 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (60271144)
|
Keywords | 高脂肪食 / 視床下部 / 小胞体ストレス / 食行動 / 嗜好性 / 分子シャペロン / γオリザノール / 肥満症 |
Research Abstract |
平成24年度までの本研究により、マウスにおいて、慢性的な高脂肪餌の摂取が視床下部の小胞体ストレスを亢進させ、さらなる高脂肪餌への嗜好性を高める分子機構が明らかになった。 これらの成果を踏まえ、平成25年度は 慢性的な高脂肪餌摂取に伴う 視床下部の小胞体ストレスの亢進と脳内報酬系(腹側被蓋野(VTA),線条体、側坐核、辺縁系など)の機能異常との病態連関に関して研究を進めた。 まず、高脂肪食肥満・2型糖尿病の病態モデルマウスにおいて、微細なマウス脳組織を用いて脳内報酬系を構成する各神経核を正確に摘出し、遺伝子・蛋白発現を定量的に評価できる解析系を確立できた。また、超微量のマウス脳神経核から抽出したジェノミックDNAを試料としてドパミン受容体シグナル関連遺伝子群のプロモーター領域におけるメチル化の程度を解析するシステムを概ね、確立できた(バイサルファイト処理、領域抽出(LA=PCR)、NGSシーケンス解析、マッピング、領域解析など)。 研究の結果、慢性的な高脂肪餌摂取により、マウス脳の腹側被蓋野(VTA)や側坐核においてドパミンD2受容体の遺伝子発現が著明に低下していることが明らかとなった。さらに、玄米由来有効成分であり、小胞体ストレスを軽減する分子シャペロンとして機能することが明らかとなっているγオリザノールを高脂肪餌とともに長期間、摂取させたマウス脳の側坐核においては 低下していたドパミンD2受容体の遺伝子発現が通常食を給餌したマウスのレベルにまで回復していることが明らかとなった。 以上の結果は 慢性的な高脂肪餌摂取により惹起された脳内報酬系の機能低下を天然食品由来有効成分が回復させる可能性を示唆するものであり、現在、この現象を説明するメカニズムとして、ドパミン受容体シグナル関連遺伝子群に対するエピゲノム修飾(DNAメチル化)が関与する可能性についての研究を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主題は、“高脂肪食に対する嗜好性に関わる新規の視床下部・脳内メカニズムの解明と医学応用”であり、慢性的高脂肪食習慣が食行動の異常を引き起こす脳機能破綻のメカニズムを明らかにすることを目標としている。 平成25年度は、この目標に向けた研究が進展し、視床下部の小胞体ストレスの亢進と 脳内報酬系、とりわけ、ドパミン受容体シグナルの低下 という2つの分子イベントの病態連関の一端が新たに明らかとなった。分子シャペロンとして機能するγオリザノールが脱メチル化を介するエピゲノム修飾作用を兼備している可能性が浮かび上がってきたことは注目に値する成果と考えており、肥満症の新たな病態解明や新規の治療法の開発に発展する可能性が期待される。最終年度の26年度には、これらの分子機構の解明をさらに進めていきたいと考えている。 これら一連の研究成果は、国内特許の公開(高脂肪食への嗜好性を軽減させるための医薬組成物、飲食品組成物または飲食品添加物、発明者代表 益崎 裕章、特許公開:2013年7月25日:公開番号:2013-144656)、および、国際特許の出願(組成物及び飲食物、発明者代表 益崎 裕章、国際出願番号:PCT/JP 2013/08410、2013年12月19日)に結び付き、知的財産権の獲得にも貢献している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の推進により、慢性的な高脂肪餌の摂取が 脳機能の異常のみならず、様々な生体機能の異常を引き起こす新たなメカニズムが明らかになりつつある。 その一つとして、慢性的な高脂肪餌の摂取により、膵島におけるグルコース応答性インスリン分泌が低下し、高血糖やインスリン抵抗性を誘導する病態において、膵島におけるドパミン受容体(D2)シグナル系の亢進が関与すること、さらに、このような病態をγオリザノールが正常化することがマウス単離膵島・マウスβ細胞株(MIN6細胞・高脂肪食肥満・糖尿病マウスを用いた一連の研究から明らかになった(英文論文 投稿・審査中)。 最終年度である26年度は 脳機能の解明に加え、研究申請書に記載したような、慢性的高脂肪餌 摂取に伴う 膵島機能異常や血管機能異常における小胞体ストレス、エピゲノム修飾の関与についても明らかにしていきたいと考えている。 さらに、γ-オリザノールの作用メカニズムを明らかにするため、核内受容体を介して作用する可能性やGPCRを介して作用する可能性に関しても検討を加えたい。 前者においては、γ-オリザノールがその構造の一部である植物ステロールを介して核内受容体を活性化させる可能性についてレポーターアッセイにより検証する。 大豆サポニンなど食品由来成分には複数の核内受容体を活性化させる物質が存在することを踏まえ、γ-オリザノールが種々の核内受容体の活性に影響を及ぼす可能性を明らかにする。後者においては視床下部、膵島に発現するGPCRを候補として細胞ベースのスクリーニングアッセイを実施する。 γ-オリザノールにより活性化される核内受容体やGPCRについて用量反応曲線を作成し活性化能を評価する。 また、γ-オリザノールの部分構造である植物ステロールやフェルラ酸、類似構造物によって活性化される可能性も検証したい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
繰越額23,184円 実験用マウスの購入にあたって、当初見込んでいた金額より安く購入できたため。 研究に関する書籍購入等に使用する。
|
Research Products
(38 results)
-
[Journal Article] Distinct Properties of Telmisartan on Agonistic Activities for PPARγ among Clically-Used ARBs: Drug-Taget Interaction Analyses2014
Author(s)
H. Kakuta, E. Kurosaki, T. Niimi, K. Gato, Y. Kawasaki, A. Suwa, K. Honboh, T. Yamaguchi, H. Okumura, M. Sanagi, Y. Tomura, M. Orita, T. Ishii-Yonemoto, H. Masuzaki (last author)
-
Journal Title
J Pharmacol Exp The
Volume: 349
Pages: 10-20
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
[Journal Article] NUDT3 rs206936 is associated with Body Mass Index in Obese Japanese Women.2013
Author(s)
A. Kitamoto, T. Kitamoto, S. Mizusawa, H. Teranishi, R. So, T. Matsuo, Y. Nakata, H. Hyogo, H. Ochi, T. Nakamura, S. Kamohara, N. Miyatake, K. Kotani, R. Komatsu, N. Itoh, I. Mineo, J. Wada, M. Yoneda, A. Nakajima, T. Funahashi, S. Miyazaki, K. Tokunaga, H. Masuzaki, et al.
-
Journal Title
Endocrine J
Volume: 60
Pages: 991-1000
Peer Reviewed
-
[Journal Article] Long-Term Treatment with San’o-shashin-to, a Kampo Medicine, Markedly Ameliorates Cardiac Ischemia / Reperfusion Injury in Ovariectomized Rats via the Redox-Dependent Mechanism2013
Author(s)
M. Sakanashi, T. Matsuzaki, K. Noguchi, J. Nakasone, M. Sakanashi, T.Uchida, M. Tanada, H. Kubota, K. Arakaki, A. Tanimotio , N. Yanagihara, M. Sakanashi, Y. Ohya, H. Masuzaki, S. Ishiuchi, K. Sugahara, M. Tsutsui.
-
Journal Title
Circ J
Volume: 77
Pages: 1827-1837
Peer Reviewed
-
-
[Journal Article] Ectopic Fat Deposition and Global Cardiometabolic Risk: New Paradigm in Cardiovascular Medicine2013
Author(s)
M. Shimabukuro, C. Kozuka, S.Taira, K.Yabiku, N. Dagvasumberel, M. Ishida, S.Matsumoto, S.Yagi, D. Fukuda, K. Yamakawa, M. Higa, T. Soeki, H. Yoshida, H. Masuzaki, M. Sata.
-
Journal Title
J Med Invest
Volume: 60
Pages: 1-14
Peer Reviewed
-
-
[Journal Article] Replication Study of 15 Recently Published Loci for Body Fat Distributionin the Japanese Population2013
Author(s)
K. Hotta, T. Kitamoto, A. Kitamoto, S. Mizusawa, H. Teranishi, R. So, T. Matsuo, Y. Nakata, H.Hyogo, H. Ochi, T.Nakamura, S. Kamohara, N. Miyatake, K. Kotani, N. Itoh, I. Mineo, J. Wada, M. Yoneda, A. Nakajima, T. Funahashi, S. Miyazaki, K. Tokunaga, H. Masuzaki, et al.
-
Journal Title
J Atheroscler Thromb
Volume: 20
Pages: 336-350
Peer Reviewed
-
-
[Journal Article] Lipid Deposition in Various Sites of Skeletal Muscle and Liver Exhibits a Positive Correlation with Visceral Fat Accumulation in Middle-Aged Japanese Men with Metabolic Syndrome2013
Author(s)
S. Taira, M. Shimabukuro, M. Higa, K. Yabiku, C. Kozuka, R. Ueda, S. Sunagawa, Y. Ohshiro, M. Doi, E. Kawamoto, Y. Nakayama, H. Nakamura, T. Iha, S. Nakachi, T. Tomoyose, T. Ikema, K. Yamakawa, H. Masuzaki (corresponding author)
-
Journal Title
Intern Med
Volume: 52
Pages: 1561-1571
Peer Reviewed
-
[Journal Article] Increased Urinary Aldosterone Excretion is Associated with Sbcutaeous not Visceral, Adipose Tissue Area in Obese Indivisuals: A Possible manifestation of Dysfunctional Subcutaneous Adipose Tissue2013
Author(s)
E. Harada, Y.Mizuno, D.katoh, Y.kashiwagi, S.morita, Y.Nakayama, M.Yoshimura, H. Masuzaki, Y.Saito, H.Yasue.
-
Journal Title
Clin Endocrinol
Volume: 79
Pages: 510-516
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-