2015 Fiscal Year Annual Research Report
GABAインターニューロンの分化・成熟を制御する甲状腺ホルモンの分子基盤の解明
Project/Area Number |
24591356
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
内田 克哉 東北大学, 情報科学研究科, 助教 (40344709)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 健一 独立行政法人労働安全衛生総合研究所, 健康障害予防研究グループ, 研究員 (00332396)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 甲状腺ホルモン / パルブアルブミン / 発達 / 海馬 / 大脳皮質 |
Outline of Annual Research Achievements |
胎生17.5日齢から生後14日齢までの甲状腺ホルモン(TH)の欠乏は、マウスの大脳皮質および海馬におけるパルブアルブミン(PV)陽性細胞数を著しく減少させることが明らかとなり、この現象はTHの補充(T4: 20 ng/g BW/day)によってレスキューされる。我々は、THがPVを発現する細胞の分化・成熟にどのような関与を示すかを観察するために、まず、生後0、7、14日齢の個体にBrdUを投与し、その1ヶ月後のBrdU含有細胞を追跡した。しかし、いずれのBrdU陽性細胞もPV陽性細胞と共存しないことから、少なくとも生後0、7、14日にはPV含有細胞の分化は終了していたと考えられ、THはPV陽性細胞の細胞系譜には影響せず、PVそのものの発現を制御している可能性が示唆された。またPV遺伝子の上流にTH応答配列(TRE)が認められなかったことから、THは間接的にPV遺伝子発現を制御しているものと推察された。一方、生後14日齢より抗甲状腺剤の適用を中止し、甲状腺機能を回復させると数ヶ月後には大脳皮質および海馬におけるPV発現が回復する。前年度に続き、いくつかの実験手法を組み合わせて、この結果の再現性を検討した。in situ hybridization法や免疫組織化学的手法によって生後14日齢におけるPV mRNAやその転写物の発現を観察すると大脳皮質や海馬のGABAニューロンに豊富な発現を認めるが、THを欠乏させた個体ではPVを発現する細胞を観察することが出来なかった。しかし、3ヶ月後の成熟個体では、正常個体と同程度の陽性細胞数が観察され、定量的PCR法によりmRNA発現を解析すると正常個体の発現量の2分の1程度にまで回復していた。このことから、甲状腺機能を回復させるとPV発現も正常個体に追従することが明らかになった。PV発現の遅延を経験した個体では生体リズムの異常が観察されることが昨年度の実験から明らかになっており、現在は、PV発現の遅延とリズム異常の因果関係を精査している。
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