2013 Fiscal Year Research-status Report
白血病の分化制御規定因子PRDM16とその生理的インヒビターLR11の機能解析
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24591380
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
清水 直美 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (30375802)
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Keywords | LR11 / 転写因子 / WT1 / GATA1 / GATA2 / CD71 |
Research Abstract |
造血前駆細胞の転写調節因子の一つとしてPRDM16(PRD1-BF1-RIZ1 homologous domain containing 16, MEL1)が知られており、造血前駆細胞の構築、維持に重要である。PRDM16欠損マウスは幹前駆細胞のアポトーシスが誘導され、正常な造血プールを維持できない。その一方で、PRDM16が過剰に発現すると骨髄増殖性疾患を誘発する。またこの遺伝子変異により急性骨髄性白血病を発症することも知られている。 我々はLR11がこの白血病細胞の分化制御を規定するPRDM16の生理的インヒビターであることを発見した。更に可溶型LR11が急性白血病で異常高値であり、また白血病細胞株に可溶型LR11を添加すると細胞の遊走能、接着能が増強することを報告している。 LR11が白血病発症機序、進展機序にどのような役割を果たしているのかを明らかにするために、白血病の発祥機序に関連する種々の転写因子の発現変化に着目し解析を行った。GATA転写因子群に属するGATA-1,2,3は血球系GATA因子と呼ばれ、赤血球や巨核球(GATA-1)、造血幹細胞(GATA-2)、Tリンパ球(GATA-3)に発現しそれぞれの分化を規定する転写因子として知られている。GATA-1遺伝子の変異はダウン症児における巨核球性白血病に特異的に関わる遺伝子として、GATA-2遺伝子変異も白血病や骨髄異形成症候群の発祥機序に関わることが明らかとなっている。またWilms腫瘍遺伝子WT1は、白血病や種々の固形癌で高発現しており、これらの疾患においてWT1遺伝子はOncogenicな機能を果たしている。我々は可溶型LR11を白血病細胞株に添加し、これら転写因子の発現とその調節機構について検討を行うこととした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
G-CSFは白血病細胞株のLR11 mRNA発現を低下させPRDM16のmRNA発現を亢進させることを明らかにした。PRDM16の発現が報告されているMLL陽性白血病でPRDM16のmRNAの発現を検討したが、発現が弱く評価困難であった。以上のことから他の転写因子につき解析を加えることとした。 前に述べたよう急性白血病では血清可溶型LR11が上昇しているが、発症時高値であるほど寛解に到達せず、悪性度が高いという知見を我々は臨床検体から得ている。以上を踏まえ、可溶型LR11を添加し、腫瘍メカニズムに関連する転写因子GATA-1、2、WT1の発現を検討した。可溶型LR11をK562に添加し、GATA1-1、2、WT1遺伝子のmRNA発現を検討した。当初、コントロールに比し、可溶型LR11を添加した群では添加後4時間をピークとしてGATA-1、2の発現上昇とともに、WT1の発現上昇を確認した。しかしながらその後の再現性を確認したところ、GATA-1の発現上昇は確認できたものの、GATA-2、WT1遺伝子の発現上昇の再現性が得られなかった。可溶型LR11を添加し分化誘導されるのかどうか、分化マーカーとしてCD71を用い検討を行ったが、GATA-1の上昇と連動した上昇は認められなかった。 以上の実験結果でから、K562にsLR11を添加するとGATA-1が上昇する(GATA-2は上昇しない)。K562にsLR11を添加するとGATA factor switchingが阻害されて赤血球系への分化が抑制される可能性があるのかという仮説のもとに、K562はLR11を発現していないが、sLR11があるとGATA-2が上がらずにGATA-1が先に上昇してしまうことで、GATA switchがうまくいかず分化できないのでないかという機序解明に向けて実験を行うこととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
造血幹細胞から赤芽球への分化では、CD71が発現するという現象を明らかにするために、K562においてCD71が発現する実験系を確立し、over expression株でCD71が発現しないことを示す。 上記現象を明らかにするために、第一にK562が分化する実験系を確立する(NaBやhemin、EPOなど)。分化誘導の系を確立後、CD71(やGlycophorinA)が発現上昇するかどうか確認する。その後、K562 ox-LR11では分化しないことを仮説として分化実験を行いGATA-1/GATA-2の発現を確認する。 LR11が通常発現している他のerythroid系(HELやTF-1)のLR11の発現を確認し、これら細胞株を分化誘導させてLR11の推移を検討する(培養上清、mRNA)。 その後臨床検体との関連を検討(治療前後の慢性骨髄性白血病 赤芽球系転化の検体など)する。
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[Journal Article] Circulating LR11 is a novel soluble-receptor marker for early-stage clinical conditions in patients with non-Hodgkin's lymphoma.2014
Author(s)
Fujimura K, Ebinuma H, Fukamachi I, Ohwada C, Kawaguchi T, Shimizu N, Takeuchi M, Sakaida E, Jiang M, Nakaseko C, Bujo H.
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Journal Title
Clin Chim Acta.
Volume: 430
Pages: 48-54
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] G-CSF induces the release of the soluble formof LR11, a regulator2014
Author(s)
Shimizu N, Nakaseko C, Jiang M, Nishii K, Yokote K, Iseki T, Higashi M, Tamaru J, Schneider WJ, Bujo H.
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Journal Title
Ann Hematol.
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Potential utility of serum soluble LR11 as a diagnostic biomarker for intravascular large B-cell lymphoma.2014
Author(s)
Kawaguchi T, Ohwada C, Takeuchi M, Shimizu N, Sakaida E, Takeda Y, Sakai S, Tsukamoto S, Yamazaki A, Sugita Y, Higashi M, Fujikawa K, Matsue K, Yokote K, Tamaru JI, Bujo H, Nakaseko C.
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Journal Title
Leuk Lymphoma.
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] LR11: a novel biomarker identified in follicular lymphoma.2013
Author(s)
Kawaguchi T, Ohwada C, Takeuchi M, Shimizu N, Sakaida E, Takeda Y, Sakai S, Tsukamoto S, Yamazaki A, Sugita Y, Jiang M, Higashi M, Yokote K, Tamaru J, Bujo H, Nakaseko C.
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Journal Title
Br J Haematol.
Volume: 163
Pages: 277-80
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Tetraspanin CD9 inhibited ADAM17-mediated LR11 shedding in leukemia cell lines.2013
Author(s)
Shokichi Tsukamoto, Masahiro Takeuchi, Takeharu Kawaguchi, Emi Togasaki, Atsuko Yamazaki, Yasumasa Sugita, Tomoya Muto, Shio Sakai, Yusuke Takeda, Chikako Ohwada, Naomi Shimizu, Emiko Sakaida, Keigo Nishii, Jiang Meizi, Tohru Iseki, Koutaro Yokote, Hideaki Bujo, Chiaki Nakaseko.
Organizer
The 55rd Annual Meeting og the American Society of Hematology
Place of Presentation
New Orleans(USA)
Year and Date
20131207-20131210