2012 Fiscal Year Research-status Report
悪性リンパ腫の病態にかかわるエピジェネティクス異常の解析
Project/Area Number |
24591388
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
冨田 章裕 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (80378215)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 悪性リンパ腫 / エピゲノム / 遺伝子変異 / ヒストン修飾 |
Research Abstract |
B細胞性リンパ腫細胞(BCL)におけるエピジェネティクス異常の有無を確認するため、BCL細胞株と、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、ろ胞性リンパ腫、Burkittリンパ腫の患者から得られた腫瘍細胞を用いて、全細胞溶解液を抽出した。これらの検体を用いてウエスタンブロット(WB)を施行し、ヒストンメチル化、アセチル化などの翻訳後修飾の差異を検討したところ、各細胞株及び症例ごとに、H3K27、H3K4トリメチル化の程度がそれぞれ異なることが確認された。これらの違いが、ヒストンメチル化酵素EZH2及びMLL2の発現量の差異や、C端欠失異常蛋白の発現などによる影響かどうか、同様にWB法によって確認を行ったが、現時点において、一定の関連性を見いだすことができていない。特にMLL2に関しては、蛋白分子量が極めて大きいこともあり、WB法によって蛋白が正しく検出できているかどうか確定できず、今後引き続き方法論の確立の検討を行うべきと考えられた。 また、腫瘍細胞における遺伝子変異やDNAメチル化の状態をより簡便に検出する方法として、末梢血遊離DNAの利用について検討を開始した。初診時および治療後、再発時に採取された血漿、血清から遊離DNAを抽出し、DNA濃度と腫瘍量、病期、予後因子、LDHなどとの関連性を検討している。平成24年度には、種々のBCL症例約20症例から検体を収集したが、未だ症例数が少なく、一定の関連性を示すには更なる症例の蓄積が必要と考えている。また、遊離DNAサンプルを用いて、EZH2やMYD88など特定遺伝子の変異について、従来法のDNAシークエンス法やパイロシークエンス法を用いて検討している。また、末梢血遊離DNAおよび腫瘍組織における変異遺伝子存在割合との比較も行い、リンパ腫の遺伝子変異解析における末梢血遊離DNA使用の有用性について検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに研究室に蓄積された検体は、多くがゲノムDNAもしくは、ゲノムDNAを抽出可能な残余検体である。これについては、DLBCLに限っても既に150症例以上の集積実績があり、ゲノムを用いた変異解析などは進めることが可能である。本研究においては、ヒストンメチル化状態やヒストン修飾酵素の構造異常などの解析のために、悪性リンパ腫腫瘍組織から直接タンパク質を抽出する必要がある。更に蛋白情報はゲノム遺伝子配列などと対応させる必要があり、これまでに蓄積されたゲノムのみならず、蛋白、ゲノムを同時に採取した新たな検体プールが必要となる。検体集積は、本研究において最も時間を要する部分であり、平成24年度から26年度までを通じて、精力的に行っていくべき事項と考えている。また、経時的に採取される末梢血遊離DNAについても同様であり、更に新たな解析対象であることから、サンプルの質や特性を確定するための基礎実験に時間を要することも、平成24年度の解析から明らかとなってきた。これらの背景から、初年度における進捗は今後の解析の基礎的部分にとどまる部分が多かったが、年度が進むにつれて、実際の解析データを得ることが可能になると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究においては、ヒストンの翻訳後修飾の状態を検討し、また異常ヒストンメチル化酵素の発現を確認するため、腫瘍細胞のゲノムDNAのみならず、蛋白の抽出が必須となる。リンパ腫患者初診時のリンパ節生検材料において、細胞数に余裕がある際には、できる限り同時に蛋白抽出を行うよう、更に積極的に取り組む必要がある。また、末梢血遊離DNAにおいては、治療開始前のみならず、治療経過中、終了後、再発再燃時などにも、採取できる可能性がある。これらの時期における遺伝子変異存在割合の変化や、DNAメチル化状態の経時的変化については、悪性リンパ腫研究においてはこれまでに類を見ない検討と考えられる。今後、微少残存病変の検出、分子再発の診断などに利用できる可能性もあり、更に積極的に検討していく必要があると考えられる。 また、遺伝子変異解析においては、既に多くの病型関連候補遺伝子変異が種々報告されており、今後それぞれの変異について一つ一つ従来の方法で検討を加えていくことは、極めて非効率的であり限界もあると考えられる。現在、より簡便に施行が可能となってきている、「網羅的遺伝子解析」、特に目的とした遺伝子のエクソン配列のみを網羅的に検討する、「ターゲットシークエンス」「エクソーム解析」を、今後取り入れていく方向で、早急に検討を進めていきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
遺伝子配列解析、PCR、RT-PCRにかかわる各紙薬、蛋白発現解析に用いる抗体などについては、本年度も継続的に支出が見込まれる。また、末梢血遊離DNAのクオリティーチェックなどに、Agilent 2100 Bioabnalyzerを、遺伝子変異の定量解析にパイロシークエンサーを用いることから、これにおける各紙薬購入を予定している。また、ターゲットシークエンス、エクソーム解析に関連する各試薬などについても、今年度から支出が見込まれる。 本研究において得られた研究成果や、情報収集の目的で、日本血液学会、リンパ網内系学会、臨床腫瘍学会、米国血液学会への参加を予定している。また、新たにエクソーム解析開始するために、既に施行を開始している他施設への見学も予定している。
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[Journal Article] Phase I/II study of decitabine in patients with myelodysplastic syndrome: a multi-center study in Japan.2012
Author(s)
Oki Y, Kondo Y, Yamamoto K, Ogura M, Kasai M, Kobayashi Y, Watanabe T, Uike N, Ohyashiki K, Okamoto S, Ohnishi K, Tomita A, Miyazaki Y, Tohyama K, Mukai HY, Hotta T, Tomonaga M.
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Journal Title
Cancer Sci.
Volume: 103
Pages: 1839-47
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Escape of leukemia blasts from HLA-specific CTL pressure in a recipient of HLA one locus-mismatched bone marrow transplantation.2012
Author(s)
Kato T, Terakura S, Murata M, Sugimoto K, Murase M, Iriyama C, Tomita A, Abe A, Suzuki M, Nishida T, Naoe T.
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Journal Title
Cell Immunol.
Volume: 276
Pages: 75-82
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Rituximab Sensitivity to De Novo DLBCL Cells Showing the Specific Phenotype of CD20 Protein Immunohistochemistry-Positive / Flow Cytometory-Negative: Analyses of Its Clinical Significances and the Molecular Mechanisms.2012
Author(s)
Akihiro Tomita, Takashi Tokunaga, Tatsuya Hirose, Keiki Sugimoto, Kazuyuki Shimada, Norio Kaneda, Hitoshi Kiyoi, Naoko Asano, Shigeo Nakamura, Tomohiro Kinoshita, and Tomoki Naoe.
Organizer
The American Society of Hematology, 54th Annual Meeting
Place of Presentation
Georgia World Congress Center Atlanta, GA, USA
Year and Date
20121209-20121209
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[Presentation] Usefulness of Peripheral Blood Circulating DNAs As an Alternative to DNA From Bone Marrow Cells to Detect CpG Global Methylation Status and Genetic Mutations in Patients with Myelodysplastic Syndromes.2012
Author(s)
Chisako Iriyama, Akihiro Tomita, Hideaki Hoshino, Mizuho Shirahata, Yoko Hibi, Kiyofumi Yamada, Hitoshi Kiyoi, and Tomoki Naoe.
Organizer
The American Society of Hematology, 54th Annual Meeting
Place of Presentation
Georgia World Congress Center Atlanta, Atlanta, GA, USA
Year and Date
20121209-20121209
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