2013 Fiscal Year Research-status Report
DNA脱メチル化剤による翻訳効率向上が造血細胞の分化を促進するメカニズムの解明
Project/Area Number |
24591397
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
松井 啓隆 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 准教授 (60379849)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金井 昭教 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助教 (60549567)
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Keywords | 骨髄異形成症候群 / DNAメチル化 / エピゲノム / 次世代シーケンサー解析 |
Research Abstract |
DNAメチル化阻害剤であるデシタビン(Aza-dC)がどのようなメカニズムでヘモグロビンの産生を促すか、エピゲノム状態の変化の観点から分子生物学的解析を行った。実験モデルとしたK562細胞では、Aza-dC処理によりヘモグロビンの産生が増加するが、これはグロビン遺伝子やヘム合成酵素関連遺伝子のmRNA増加を伴わないことから、Aza-dCは翻訳レベルでヘモグロビン産生を促進したと考えられた。 次世代シーケンサーでメチル化DNAの変化を解析したところ、K562細胞をAza-dCで処理した際、658遺伝子のプロモーターが有意に脱メチル化されたが、このうち遺伝子発現が2倍以上増加したものは86遺伝子に過ぎないことがわかった。この、Aza-dC直接標的遺伝子といえる86遺伝子のうち、われわれは翻訳促進に関わる因子としてeEF1A2を単離した。実際eEF1A2遺伝子上流には強くメチル化されたプロモーター活性を有する領域があり、Aza-dCによってここのメチル化はほぼ完全に解除された。また、遺伝子特異的shRNAによってeEF1A2を発現抑制したK562細胞ではヘモグロビン産生が減弱したことから、DNAメチル化によるeEF1A2発現低下が造血器腫瘍細胞で貧血が生じる一因であることが推察された。 以前より、eEF1A2遺伝子を欠損した動物モデルとしてwastedマウスが知られている。このマウスはeEF1A2遺伝子を含む15.8Kbの領域を自然欠損したマウスで、ホモ欠損マウスは神経・筋の発達異常により生後早期に死亡する。昨年度より、本マウス由来の骨髄細胞をレシピエントマウスに移植する実験を開始した。また、CRISPR/CAS9システムを用いたeEF1A2コンディショナルノックアウトマウスの作製にも着手した。本年度はこれらマウスモデルを用い、生体内でのeEF1A2と造血との関連を詳細に解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DNAメチル化阻害剤はDNAメチルトランスフェラーゼの阻害により非特異的にDNAを脱メチル化させる薬剤であるため、骨髄異形成症候群に対して広く臨床の場で使用されるようになった現在でも、薬剤の標的となる遺伝子が判然としないままであった。本研究は、次世代シーケンサーを用いたエピゲノム解析を行うことにより、DNAメチル化阻害剤が翻訳促進因子であるeEF1A2の発現増加を介して赤血球分化に関わることを明らかにできたため、研究の方向性として適正であったと考えている。 なお、研究当初は計画に組み込んでいなかったが、平成25年度後半よりeEF1A2遺伝子欠損マウスを用いた動物モデル実験を開始した。これは、並行して行っている研究の過程で、研究室内でマウス骨髄移植実験の遂行が可能になったこと、およびCRISPR/CAS9システムにより比較的簡便に遺伝子変異導入を行うことができるようになり、そのシステムを本研究室にも導入したことにより、マウス実験の環境が整ったためである。 現在、本研究結果をまとめた学術論文を執筆しており、マウス実験の解析結果も加えたうえで平成26年度中には投稿できると見込んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究に着手した当初は、次世代シーケンサーによるエピゲノム解析がまだあまり一般に行われている状況ではなく、実際本研究も、DNAメチル化をゲノムワイドに解析する手法を確立するためのモデル実験として計画したという側面がある。その後、(本研究課題で行った)メチル化DNAを濃縮精製して解析する手法、およびCpG密度の高い領域を選択して一塩基単位でメチル化を定量できるRRBSという手法を確立できた。加えて、ヒストン修飾抗体を用いたクロマチン免疫沈降(ChIP)シーケンスも高感度かつ高精度に行うための最適化を進めたので、これらにより、細胞のエピゲノム状態を解析するための基盤がほぼ整ったといえる。 本研究でゲノム上のDNAメチル化領域を検出したところ、当初予想していたように、遺伝子プロモーター領域やCpGアイランドのメチル化の程度は低く、エクソンやイントロンといった遺伝子領域内が強くメチル化されていた。近年の遺伝子変異解析技術の進歩により、造血器悪性腫瘍の発症にTET2やDNMT3Aなどの機能欠失型変異の獲得が深くかかわっていることが明らかとなってきたが、こういったDNAメチル化を調節する因子が如何に造血細胞の腫瘍化を導くのか、まだ明確にはなっていない。TET2によるDNAメチル化調節がおもに遺伝子領域内で行われているという最近の報告もあることから、今後われわれは遺伝子領域内のエピゲノム状態に着目し、エクソン上やイントロン内転写因子結合部位のDNAメチル化がmRNAスプライシングや発現調節に影響する可能性を検証していきたい。 このため、今後はより臨床試料を中心としたエピゲノム解析へシフトしていくことを予定している。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] Novel functional small RNAs are selectively loaded onto mammalian Ago12014
Author(s)
Yamakawa, N. Okuyama, K. Ogata, J. Kanai, A. Helwak, A. Takamatsu, M. Imadome, K. I. Takakura, K. Chanda, B. Kurosaki, N. Yamamoto, H. Ando, K. Matsui, H. Inaba, T. Kotani, A.
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Journal Title
Nucleic Acids Res
Volume: 未確定
Pages: 未確定
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Ultradeep sequencing study of chronic hepatitis C virus genotype 1 infection in patients treated with daclatasvir, peginterferon, and ribavirin2014
Author(s)
Murakami, E. Imamura, M. Hayes, C. N. Abe, H. Hiraga, N. Honda, Y. Ono, A. Kosaka, K. Kawaoka, T. Tsuge, M. Aikata, H. Takahashi, S. Miki, D. Ochi, H. Matsui, H. Kanai, A. Inaba, T. McPhee, F. Chayama, K.
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Journal Title
Antimicrob Agents Chemother
Volume: 58
Pages: 2105-2112
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Clinical significance of sIL-2R levels in B-cell lymphomas2013
Author(s)
Yoshida, N. Oda, M. Kuroda, Y. Katayama, Y. Okikawa, Y. Masunari, T. Fujiwara, M. Nishisaka, T. Sasaki, N. Sadahira, Y. Mihara, K. Asaoku, H. Matsui, H. Seto, M. Kimura, A. Arihiro, K. Sakai, A.
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Journal Title
PloS one
Volume: 8
Pages: e78730
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Combination therapies with NS5A, NS3 and NS5B inhibitors on different genotypes of hepatitis C virus in human hepatocyte chimeric mice2013
Author(s)
Shi, N. Hiraga, N. Imamura, M. Hayes, C. N. Zhang, Y. Kosaka, K. Okazaki, A. Murakami, E. Tsuge, M. Abe, H. Aikata, H. Takahashi, S. Ochi, H. Tateno-Mukaidani, C. Yoshizato, K. Matsui, H. Kanai, A. Inaba, T. McPhee, F. Gao, M. Chayama, K.
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Journal Title
Gut
Volume: 62
Pages: 1055-1061
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Haploinsufficiency of SAMD9L, an endosome fusion facilitator, causes myeloid malignancies in mice mimicking human diseases with monosomy 72013
Author(s)
Nagamachi, A. Matsui, H. Asou, H. Ozaki, Y. Aki, D. Kanai, A. Takubo, K. Suda, T. Nakamura, T. Wolff, L. Honda, H. Inaba, T.
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Journal Title
Cancer Cell
Volume: 24
Pages: 305-317
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] RUNX1/AML1 mutant collaborates with BMI1 overexpression in the development of human and murine myelodysplastic syndromes2013
Author(s)
Harada, Y. Inoue, D. Ding, Y. Imagawa, J. Doki, N. Matsui, H. Yahata, T. Matsushita, H. Ando, K. Sashida, G. Iwama, A. Kitamura, T. Harada, H.
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Journal Title
Blood
Volume: 121
Pages: 3434-3446
DOI
Peer Reviewed
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