2013 Fiscal Year Research-status Report
成人の定常状態造血を維持するエリスロポエチン産生制御機構と病態との関係
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24591404
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
峯岸 直子 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 教授 (40271895)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 未来子 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80508309)
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Keywords | 赤血球造血 / 遺伝子発現制御 / 低酸素応答性 / エリスロポエチン / 腎性貧血 / 神経堤細胞 |
Research Abstract |
エリスロポエチン(EPO)は赤血球造血を促進する因子である。成人では主に腎臓から分泌され、出血による貧血や高地環境などの組織の低酸素分圧状況を感知して腎臓における産生と分泌が亢進する。腎不全の症例では、EPO産生が低下するために貧血となり(腎性貧血)、その後、ほぼ生涯にわたるEPO製剤の投与が必要となる。腎不全時にEPO産生が低下する機序が解明されれば、腎性貧血の予防につながることが期待された。 EPO遺伝子にGFPを挿入したノックイン/ノックアウト遺伝子座をホモに持ち、肝臓で飲みEPOを産生するトランスジーンを導入されたマウス(ISAM)は、腎臓が主要なEPO産生部位となる出生1週間後付近から貧血が進行し、成体マウスでは重篤な貧血を呈する。このマウスについて24年度から引き続いて研究を行い、成体マウスの造血動態の変化と腎臓のEPO産生細胞について報告した(Yamazaki,2013).ISAMマウスの腎臓で蛍光を発する細胞(EPO遺伝子発現細胞)は、同座位のヘテロマウスでは腎臓の皮質と髄質の境界付近に集中しているのに対して、腎臓の皮質全体に非常に多数認められた。そこで、EPO遺伝子発現が活性化した細胞がCREを発現するマウス(EPO-CRE)を作成し、ISAMと交配することにより、EPO遺伝子活性化能を持つ細胞(赤)と、現在EPO遺伝子が活性化している細胞(緑)を同時に観察可能なマウスを創出し、腎不全に伴う線維化とEPO産生の関係を明らかにした(Souma, 2013).さらに、これらの遺伝子改変動物を用いて、EPO産生細胞が胎生期には神経および神経堤細胞に存在することを明らかにした(Suzuki, 2013)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は前年度からの解析を進め、造血組織、成体の腎臓、胎生期の神経系について明確な結果を得て、それぞれ論文として発表することがきた。論文の執筆準備や、論文のエディターから要求された事項などの確認実験や、図の改良などに時間を要したが、初期の目標のかなりの部分を達成することができた。 特にEPO-CREマウスを造ったことにより、腎臓において以前はEPOを産生ていたものの、その産生能を失った細胞を同定することが可能になり、腎不全などEPO産生に抑制的に働く状況の解明が進んだ。このマウスは、個体発生に沿ってEPO産生細胞の運命をトレースする実験などにも力を発揮することが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度以降は、ISAMとEPO-CREを用いて、EPO遺伝子の転写制御機構に付いての実験を進める。特に、腎不全時に転写抑制に働くシス因子を同定したい。そのトランス因子の探索から腎性貧血を防御する機構の解明を目指すとともに、マウス-ヒト間で保存された領域においては、ヒトの全ゲノム配列情報の中でその多型を探索する。これにより、貧血との関係、腎不全時のEPO産生などの研究に発展させることが期待される。 一方で、この2種類のマウスを用いて、個体発生時のEPO産生細胞をトレースする。神経堤細胞は全身の組織に入り込んで機能を発揮することから、EPO産生能をもつ神経堤細胞がそのまま全身の組織でEPOを産生している可能性があり、EPOによる組織防御の報告を考慮すると、造血系組織以外におけるEPOの役割についても研究が進むことが期待される。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は主要な雑誌に論文を2報投稿したため、受理にいたるまでの論文改訂作業や追加・確認のための実験に多大な労力を要し、新しい実験を進めることが難しかった。年度の後半は2つの論文の第I著者が海外留学などで研究グループから抜けたため、実験を進める速度が低下した。 平成25年度までで当初目標としていたマウスの研究については、かなりの部分達成したと考えている。平成26年度には、ネズミを使った実験を進めながら、ヒトの実験にシフトし、貧血や腎臓疾患とエリスロポエチン遺伝子の関係、ヒトのエリスロポエチン遺伝子の発現制御についての解析のため、ChIP-seqなどの系を立ち上げる予定である。研究費は、細胞株や正常ヒト細胞の購入、ヒト転写因子に対する抗体の購入や定量PCR試薬や次世代シークエンサー試薬等の購入に当てる予定である。
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[Journal Article] Renal erythropoietin- producing cell-derived myofiroblasts govern fibrosis and posses profound plasticity.2013
Author(s)
Souma T, Yamazaki S, Moriguchi T, Suzuki N, Hirano I, Pan X, Minegishi N, Abe M, Kiyomoto H, Ito S, Yamamoto M.
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Journal Title
J Am Soc Nephrol
Volume: 24
Pages: 1599-1616
DOI
Peer Reviewed
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