2014 Fiscal Year Research-status Report
成人の定常状態造血を維持するエリスロポエチン産生制御機構と病態との関係
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24591404
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
峯岸 直子 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 教授 (40271895)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 未来子 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80508309)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 血液内科学 / エリスロポエチン / 赤血球 / 転写調節 |
Outline of Annual Research Achievements |
ISAM (Inherited super-anemic mice)の解析からはEPO投与早期(6時間)に赤血球系転写因子(Tal1、Maff)や、赤血球の機能遺伝子(解糖系酵素、赤血球膜蛋白質等)の発現上昇が観察された。そこで、これら遺伝子の発現制御に関わり赤血球造血の主要な制御転写因子であるGATA1、および、GATA1と競合して赤血球への分化を抑制するGATA2について解析を行った。 EPOシグナル下流ではMAPK p38、AKTがGATA2をリン酸することが知られており、2014年にはMAPKp38によるGATA2リン酸化が報告された。また、GATA2の176スレオニン残基がcyclin B-cyclin-dependent kinase 1によってリン酸化され、Fbw7との結合を介してユビキチン依存性に分解されることを共同研究として見出した。このリン酸化残基はMAPKリン酸化残基の近傍にあり、構造変化や複合体形成などに双方のリン酸化が影響することが示唆された。GATA1には両残基に相同な部位は認められず、このリン酸化による影響はGATA2に独自なものであると予想された。 マウス遺伝子改変技術をもちいてGATA1、GATA2の制御領域の研究を行い、GATA2遺伝子上流-77-kbにある制御領域は造血幹細胞、前駆細胞特異的な転写活性を持ち、この活性がinv(3)(q21;q26)転座による白血病を引き起こすことを報告した。また、ヒトGATA1遺伝子の上流-29-kbに存在するCTCF因子の結合部位はインシュレーターとして働き、クロマチン構造の制御を介してGATA1遺伝子発現を制御することを報告した。さらに、GATA1遺伝子プロモーター中のdouble GATA配列が造血前駆細胞におけるGATA1発現に重要であることを報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2013に論文として報告したISAM (Inherited super-anemic mice)は、EPO遺伝子ノックアウトマウスを主要な制御領域を欠損したEPO遺伝子によって胎性致死性を免れるが、成体ではEPO欠乏による重度の貧血を呈する。ISAMに外来生ヒトEPOを投与すると、早期(6時間)に赤血球系転写因子(Tal1、Maff)や、赤血球の機能遺伝子(解糖系酵素、赤血球膜蛋白質等)の発現上昇が観察された。これら遺伝子の同定により、これまで未解明であったEPOによる赤血球造血制御機構を解明する方向性が掴めた。このマウスは現在国際特許の審査中である。 このマウスではEPO産生細胞がGFPによって標識されることから、EPOは腎臓の間質細胞の一部および中枢神経系の一部の細胞において産生されることを示し、その細胞の性格を検討して2014年(2013年度)に論文報告したことを契機として、すでに複数の研究機関との共同研究が開始され、ISAMを使った腎臓のEPO産生細胞や中枢神経系とEPOに関する研究などが進行中である。血液系に限らず多方面の発展が期待される研究を提示することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
EPOによる赤血球造血制御については、シグナル伝達系の論文があるものの、シグナル経路から遺伝子発現制御に至る経路は未解明である。そこで、今後は本申請研究の中で得られた知見を元に、GATA1、GATA2およびそれら遺伝子の発現制御機構とEPOシグナルとの関係性について幾つかの仮説を立てて検証を進める。例えば、GATA1遺伝子上流のインシュレーター活性は薬剤による溶血誘導後の造血活性化において重要であり、EPOシグナルとの関係性が推定される。また、造血前駆細胞において働く領域では、GATA配列への結合がGATA2からGATA1に変化し、いわゆる「GATAスイッチ」が分化誘導に関わるとされており、この過程にEPOシグナルによる蛋白質修飾や蛋白質安定性の制御、複合体形成の変化が関わる可能性の検証も重要である。(これらについては2015年度以降の科学研究費研究課題の中で実施する予定である。) また、本申請研究により、EPO投与後早期(6時間)に発現が変化する遺伝子群が明らかになったことを利用して、ChIP-seqなどの網羅的解析情報等を用いてこれら遺伝子の発現制御機構、EPOシグナルとの関係性について知見を蓄積する。
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Causes of Carryover |
課題の研究内容に関する論文を作成中であり、今年度中の雑誌掲載を目指して準備を進めていた。しかし、9月に共同研究者の研究結果を知り、その知見から予想される内容を論文に加える予定で検討を行ったために論文の準備が遅れた。結果的に論文の投稿が次年度になることとなり、論文投稿料、掲載料、リバイスに必要となる実験費用の一部を繰り越す必要が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
未使用学の大半は論文の掲載までに必要な経費に充てる予定である、オープンアクセスのオンライン雑誌に掲載する場合やカラー図版を含める場合はかなりの金額が必要である。また、一部はリバイス実験のために必要となることが予想される。
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article] Regulation of GATA binding protein 2 levels via ubiquitin-dependent degradation by Fbw7: involvement of cyclin B-cyclin-dependent kinase 1-mediated phosphorylation of Thr176 in GATA binding protein 2.2015
Author(s)
Nakajima T, Kitagawa K, Ohhata T, Sakai S, Uchida C, Shibata K, Minegishi N, Yumimoto K, Nakayama K-I, Masumoto K, Katou F, Niida H, Kitagawa M
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Journal Title
J Biol Chem
Volume: 290
Pages: 10368-10381
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Validation of multiple single nucleotide variation calls by additional exome analysis with a semiconductor sequencer to supplement data of whole-genome sequencing of a human population.2014
Author(s)
Motoike I N, Matsumoto M, Danjoh I, Katsuoka F, Kojima K, Nariai N, SatoY, Yamaguchi-Kabata Y, Ito S, Kudo H, Nishijima I, Nishikawa S, Pan X, Saito R, Saito S, Saito T, Shirota M, Tsuda K, Yokozawa J, Igarashi K, Minegishi N, Tanabe O, Fuse N, Nagasaki M, Kinoshita K, Yasuda J , Yamamoto M.
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Journal Title
BMC Genomics
Volume: 15
Pages: 673
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Presentation] Biobank Construction after Earthquake and Tsunami Disaster in Japan.2014
Author(s)
Minegishi N, Kudo H, Nishijima I, Hozawa A, Kuriyama S, Tanno K, Sasaki R, Takai T, Ogishima S, Kiyomoto H, Satoh M, Hachiya T, Shiwa Y, Shimizu A, Hitomi J, Yaegashi N, Sobue K, Yamamoto M.
Organizer
International Society of Biological and Environmental Repositories
Place of Presentation
Orlando, Florida
Year and Date
2014-05-20 – 2014-05-24