2012 Fiscal Year Research-status Report
IgG4関連疾患における疾患特異的に変動する代謝物群を利用したメタボロミクス解析
Project/Area Number |
24591459
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
岩男 悠 金沢医科大学, 医学部, 助教 (10612244)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅原 久範 金沢医科大学, 医学部, 教授 (70247881)
河南 崇典 金沢医科大学, 医学部, 講師 (20350762)
正木 康史 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (40238895)
田中 真生 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (10332719)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | IgG4関連疾患 / メタボロミクス / IgG4関連疾患診断基準 |
Research Abstract |
IgG4関連疾患とは、リンパ球とIgG4陽性形質細胞の著しい浸潤と線維化により、全身諸臓器の腫大や結節・肥厚などを認める原因不明の疾患である。本疾患は、涙腺や唾液腺が腫脹するIgG4関連硬化性唾液腺炎、ミクリッツ病、膵臓の腫大や腫瘤を形成するIgG4関連自己免疫性膵炎、リンパ節腫大を呈すIgG4関連リンパ節症などの他にも、肝、胆、腎、肺、甲状腺など全身の諸臓器に広く発症し、実に多岐にわたる病態を含む複合疾患である。しかも、Sjogren症候群やWegener肉芽腫症等の自己免疫性疾患、Castleman病や悪性リンパ腫などの血液疾患との鑑別が難しい疾患であり、その診断が混沌としてきている。このような診断に関する問題点を解決する為、これまで、多施設共同の前方視試験として、 IgG4+MOLPS(IgG4関連多臓器リンパ増殖症候群)、Castleman病 その他の多クローン性高γグロブリン血症の鑑別のための多施設共同前方視的臨床研究を行い、血清およびリンパ球(RNA)の採取保存、およびCRF、病理標本の回収を行った。本研究では、IgG4関連疾患の疾患特異的に変動する代謝物のパターン(メタボロームプロファイル)を解析し、疾患により生じた病変部位の代謝の変動から、IgG4関連疾患の病因および疾患特異的に増減する生体分子(バイオマーカー)の探索を行うことを目的としているが、その解析の第一段階として、多施設共同の前方視試験に登録された症例を、IgG4関連疾患診断のアルゴリズムに当てはめ、確定群、擬診群、準確診群、否定群に分けるとともに、疾患、臓器別にカテゴライズし、IgG4関連疾患の病態について解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「IgG4+MOLPS(IgG4関連多臓器リンパ増殖症候群)、Castleman病その他の多クローン性高γグロブリン血症の鑑別診断のための多施設共同前方視的臨床研究」で登録された症例を、2011年の厚労省岡崎班/梅原班合同WG会議で策定されたIgG4関連疾患診断基準によるカテゴライズ分けを行い、IgG4関連疾患の病態について検討を行った。登録された症例は104例。その内訳は、IgG4関連疾患(IgG4-RD)確定診断65例、同疑診29例、Sjogren症候群2例、Castleman病4例、その他であった。IgG4-RD確定診断例の平均年齢は64.0歳、男性41人、女性20人(不明4人)であった。障害臓器は、単独25例のうち唾液腺14例、膵4例、眼窩3例等であった。また、2臓器22例、3臓器以上18例だった。臓器別の内訳は、唾液腺35例、膵19例、涙腺12例、リンパ節12例、後腹膜線維症10例、眼窩8例、甲状腺8例、胆管6例、前立腺4例、腎4例、肺3例等であった。また14例にアレルギー性鼻炎、8例に気管支喘息がみられた。検査所見各平均値は、IgG 2252.7mg/dL、IgG1 1092.6mg/dL、IgG2 809.2mg/dL、IgG3 77.8mg/dL、IgG4 715.4mg/dL、、IgE 536.8 mg/dL、好酸球5.0%だった。C3 87.3 mg/dL、C4 18.8mg/dL、CH50 42.8mg/dLと基準値内であった。IL-6 2.55pg/mL、CRP 1.46mg/dL、RF 7.8U/mL、抗核抗体陽性18例(Homogeneous7例、Speckled3例等)であった。カテゴライズ分けした各群の結果と、さらに、病理標本による臓器特異的診断を行い、IgG4関連疾患の病態を横断的に解析中である。
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Strategy for Future Research Activity |
IgG4関連疾患包括診断基準(2011)を満たすものをIgG4関連疾患確定診断例として研究に用いる。治療はPrednisoloneを0.6 mg/kg/日より開始し、ステロイド治療開始後3ヶ月のものを治療後検体とし研究に用いる。本研究の対照については、性差、年齢差の影響を考慮し、IgG4関連疾患で多くを占める50~60歳代男性とする。治療前、治療後、健常人コントロールの血清それぞれ10例準備し、3群間、n=10例で、治療前・後、患者・健常人間での解析を行う。 IgG4関連疾患は、アレルギー疾患の併発を特徴とし、持続する免疫異常により炎症が遷延する慢性炎症性疾患である。体内免疫系の過剰反応によって引き起こされるアレルギー反応が、IgG4関連疾患の病態に関与する可能性は高い。アレルギー疾患は、抗原・抗体といったタンパク質や白血球細胞、病原菌などがそのトリガーであるが、代謝低分子の中に重要な役割を持つものも存在する。本研究では、IgG4関連疾患におけるアレルギー反応に着目し、メタボロームの視点から解析を行う。解析については、ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社(HMT)のライブラリに登録された代謝物質を解析対象とするが、アレルギー反応に関連する代謝低分子を中心に解析を行う。得られたデーターは、有意差検定、Ratio比較、多変量解析によるスクリーニングを行う。また、得られた結果を遺伝子パスウエイデータベースIngenuity Pathways Analysis (IPA)に落とし込み、転写・代謝プロファイルを作成する。また、代謝機能による分類を行う。得られた結果について、メタボローム以外の実験による検証とバリデーションを行い、IgG4関連疾患の病因病態につながる因子の解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究ではIgG4関連疾患治療前、治療後、健常人コントロールの血清それぞれ10例準備し、3群間、n=10例で、疾患で特異的に変動する代謝物群の網羅解析を行う。IgG4関連疾患患者血清中の代謝物群の検出には、ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社に測定依頼を行うため、次年度の研究費としては、外部委託の解析費用の割合が高くなるものと考えている。また、データーベースを利用したパスウェイ解析を行い、疾患特異的に変動した代謝物群の相互関係を解析するため、データーベース使用料と、検出に必要な試薬消耗品など、一連の実験を行うための消耗品費が必要となると考えている。
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Research Products
(9 results)