2013 Fiscal Year Research-status Report
IgG4関連疾患における疾患特異的に変動する代謝物群を利用したメタボロミクス解析
Project/Area Number |
24591459
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
岩男 悠 金沢医科大学, 医学部, 助教 (10612244)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅原 久範 金沢医科大学, 医学部, 教授 (70247881)
河南 崇典 金沢医科大学, 医学部, 講師 (20350762)
正木 康史 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (40238895)
田中 真生 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (10332719)
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Keywords | IgG4関連疾患 / メタボロミクス / IgG4関連疾患診断基準 / 脂質メディエーター |
Research Abstract |
多施設共同の前方視試験に登録された症例を、IgG4関連疾患診断のアルゴリズムに当てはめ、確定群、擬診群、準確診群、否定群に分けるとともに、疾患、臓器別にカテゴライズを行った。本研究の対照については、性差、年齢差の影響を考慮し、IgG4関連疾患で多くを占める50~60歳代男性とし、治療前、治療後、健常人コントロールの血清それぞれ10例準備し、3群間、n=10例で、治療前・後、患者・健常人間での解析を行った。解析については、メタボロン社のライブラリーに登録された代謝物(分子量約50~1000の糖・アミノ酸・核酸・脂質等)を解析対象とした。解析の結果、IgG4関連疾患群では、起炎性の脂質メディエーターであるアラキドン酸(arachidonate(20:4n6)), 12-HETEが健常人群に比べ、治療前・治療後とも高い値を示した。また、その値は、ステロイド治療後でも低下しなかった。IgG4関連疾患は、ステロイド治療により症状は著明に改善するが、ステロイド治療を中止すると高率に再発することが知られている。ステロイド治療で症状は改善しても、その根本的な原因は潜在していると考えられる。起炎性の脂質メディエーターが、IgG4関連疾患群で高値を示し、またその値は、ステロイド治療によって変動しないことから、これらの起炎性メディエーターと、IgG4関連疾患の慢性炎症、炎症の遷延化との関連性に着目した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
IgG4関連疾患患者の治療前後、また、健常人血清を用い、IgG4関連疾患の疾患特異的に変動する代謝物群のパターン解析を行い、疾病により増減するバイオマーカー探索を行った。多価不飽和脂肪酸は、シクロオキシゲナーゼや、リポキシゲナーゼなどの酸化酵素によって活性代謝物に変換され、これらは脂質メディエーターとして様々な生体調節機能を担っている。今回の解析で、IgG4関連疾患では、アラキドン酸や12-HETEといった、いくつかの起炎性メディエーターが、健常人群に比べ高い値を示し、また、ステロイド治療後でも、その値が変動しないことを見いだした。IgG4関連疾患は、ステロイド治療により症状は著明に改善するが、ステロイド治療を中止すると高率に再発することが知られている。ステロイド治療で症状は改善しても、その根本的な原因は潜在していると考えられる。起炎性の脂質メディエーターが、IgG4関連疾患群では高値を示し、ステロイド治療によって変動しない点は、IgG4関連疾患の持続する免疫異常により炎症が遷延するという慢性炎症性疾患の一因とも考えられ、さらなる解析が必要と考えている。また、脂質メディエーターだけでなく、今回の解析により、内在性ステロイドの減少や、減少した炎症性サイトカインの影響による代謝物の変動なども見いだしている。今後、個別の現象だけでなく、得られた結果をパスウエイデータベースIngenuity Pathways Analysis (IPA)に落とし込み、転写・代謝プロファイルを作成し、代謝機能による分類を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
IgG4関連疾患は、アレルギー疾患の併発を特徴とし、持続する免疫異常により炎症が遷延するという慢性炎症性疾患である。炎症反応は、外傷や感染症などに対する重要な生体防御系であるが、一方で、局所で発生した炎症は、速やかに収束させなければいけない。この炎症反応の収束・調節の機構が、正常に機能していない状態が慢性炎症と言える。脂質メディエーターには、今回のアラキドン酸由来のエイコサノイドのように起炎性に働くものもあれば、一方で、脂肪酸代謝物には、リポキシン、レゾルビン、プロテクチンなどの強い抗炎症作用を持つものがあり、それぞれが炎症反応の調節にかかわっていると考えられている。IgG4関連疾患の遷延する炎症のメカニズムと、その制御を解析するため、IgG4関連疾患群における脂肪酸代謝系と炎症の制御について、さらなる解析を進める。また、今回、IgG4関連疾患患者群(治療前)・治療後、患者・健常人間での解析を行った。得られたデーターを、パスウエイデータベースIngenuity Pathways Analysis (IPA)に落とし込み、転写・代謝プロファイルを作成し、代謝機能による分類を行う。また、得られた結果について、メタボローム以外の実験による検証とバリデーションを行い、IgG4関連疾患の病因病態につながる因子の解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
IgG4関連疾患患者血清中の代謝物群の検出には、メタボロン株式会社に測定を依頼する必要がある。再度、脂質代謝物を再解析する外部委託の解析費用として、次年度使用額が生じた。 脂質代謝物を再解析する外部委託の解析費用として全額使用する。
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[Journal Article] Japanese variant of multicentric castleman's disease associated with serositis and thrombocytopenia--a report of two cases: is TAFRO syndrome (Castleman- Kojima disease) a distinct clinicopathological entity?2013
Author(s)
Y.Masaki, A.Nakajima, H.Iwao, N.Kurose, T.Sato, T.Nakamura, M.Miki, T.Sakai, T.Kawanami, T.Sawaki, Y.Fujita, M.Tanaka, T.Fukushima, T.Okazaki, H.Umehara
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Journal Title
J. Clin. Exp. Hematop.
Volume: 53
Pages: 79-85
Peer Reviewed
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[Presentation] 「IgG4+MOLPS(IgG4関連多臓器リンパ増殖症候群)、Castleman病その他の多クローン性高γグロブリン血症の鑑別診断のための他施設共同前方視的臨床研究」の中間報告2013
Author(s)
岩男 悠, 正木康史, 佐伯敬子, 松井祥子, 川野充弘, 平田信太郎, 藤川敬太, 折口智樹, 宮下賜一郎, 坪井洋人, 梅原久範
Organizer
第57回日本リウマチ学会総会・学術集会/第22回国際リウマチシンポジウム
Place of Presentation
国立京都国際会館, 京都府京都市
Year and Date
20130418-20130420
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