2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24591607
|
Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
堀尾 裕幸 兵庫県立大学, 応用情報科学研究科, 教授 (20157069)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊池 瞳 藍野大学, 保健医療学部, 講師(Lecture) (00585002)
池田 智明 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授(Professor) (80202894)
|
Keywords | 胎児心拍数陣痛図 / パネルデータ / Fetal heart rate / パターン分類 / FHR / CTG / アシドーシス |
Research Abstract |
胎児心拍数陣痛図(CTG)における胎児心拍数(FHR)の時系列データを対象として、計量経済学の分野で長期的な経済変動や政策による変動要因を明らかにしてきたパネルデータ分析を導入する研究を行った。今年度は低リスク分娩のFHR波形分類データをパネルデータとして、その特徴の把握と適切な分析方法の検討を行い、方法論としてのパネルデータ分析の確立をめざした。ここでは1909症例のCTGデータについて、分娩1時間前から10分毎に2010年に日本産科婦人科学会が提案したガイドラインによる82分類のFHRパターンのおよび5段階のリスクレベルに対応させたパネルデータを利用して、臍帯動脈血ガス分析値のpH、BE(Base excess)値、PaO2、PaCO2との関連性について解析した。その結果、5段階のリスクレベルが高くなるほどpH, BEは有意に低下し、PaO2は低下傾向、PaCO2は上昇傾向となり、5段階のリスクレベル分類と臍帯動脈血との関連性を明らかにでき、5段階のリスクレベル分類の正当性が証明できた。また、これまで明確ではなかったFHRの一過性徐脈の出現回数とpHやBEとの関連性が明らかにできたため、方法論としてのFHRデータのパネルデータ分析が確立できた。これにより波形パターンおよびリスクレベルとoutcomeの関連性の解析において、波形パターン解釈の結果をパネルデータとして独立させ、その結果とoutcomeの関連を調べることで、多くのデータを集めて解析できることを証明できた。そのため、分娩時のCTG時系列データを要約されたパネルデータとして集約することで、医師による個別判断のばらつきは統計誤差となり、臍帯動脈血ガス分析値などをアウトカムデータとするEBM(Evidenced-based Medicine)の基本的手法になると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
FHR時系列データを10分ごとに区切り、その区間毎のパターンをガイドラインに従い解釈してパネルデータを構成する方法により、分娩前1時間のデータについてのアウトカムとの関連性を証明できたため、1つの分娩での長時間にわたるCTG時系列データをパネルデータとして集約する意味が明らかになった。そのため、多くの分娩についてのCTGデータをパネルデータとしてデータベース化し、アウトカムデータによる評価まで行えるEBM (Evidenced-based Medicine)の確立が可能となった。このパネルデータ化を実施するために、医師がガイドラインに基づくFHRパターン分類をパソコン上でブラウザを利用して実行できるソフトウェアのプロトタイプを完成させた。これはJavaScriptとHTML5を利用してOSとブラウザ依存性をなくし、パネル化を行う時の医師のコメントや判断の変更履歴も記録して、FHR分類における医師の視覚的判断の個人依存性まで解析することを目的としたソフトウェアである。しかし、このソフトウェアの完成度を実用化レベルまで上げることが出来ていないため、国立循環器病研究センターに蓄積されたCTGデータの医師によるパネルデータ化にも着手できず遅れを生じている。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果を踏まえ、 1)FHR波形分類とレベル分類の組み合わせとアウトカムについての最適解の検討:ガイドラインとして示されたFHR波形分類と5段階のレベル分類の組み合わせを基準として、どのようなFHR波形分類とレベル分類の組み合わせがoutcomeとの関連性が最大になるかをシミュレーションし、レベル分類のFHR波形分類への割り当てについての最適解を求めるとともに、5段階だけでなく3段階のレベル分類も含めたレベル分類のメリット・デメリットの検討を行う。さらに症例数の結果に対する影響を調べることで、パネルデータ解析を実施するのに必要な症例数を明らかにする。 2)パネルデータ特有の解析法の確立:パネルデータ解析やクロス集計表について経済・社会学などでよく行われる、例えばコレスポンデンス分析などの手法の有効性の検証を行う。 3)FHR波形データのパネルデータ化のためのソフトウェアの実用化:JavaScriptとHTML5を利用してOSとブラウザ依存性をなくし、さらにタブレット端末やスマートフォンでも実行可能なFHR波形の表示とその分類記録ソフトウェアを完成させる。このJavaScriptを利用したソフトウェア開発の課題は使いやすいヒューマンインターフェイスの確保とブラウザ互換性およびタブレット互換性である。このソフトウェアが完成すると、サーバに保存されたトレーニング用CTGデータの表示とそのFHRパターンに付けられたコメントまで表示を可能とできるため、CTG判読のe-learningシステムとして利用可能になるとともに、FHR波形パターンを実際の医師が判断し記録したデータをパネルデータとして保存可能となる。
|