2013 Fiscal Year Research-status Report
大気圧走査電子顕微鏡を用いた肺胞上皮におけるサーファクタント関連蛋白イメージング
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24591608
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
松崎 陽平 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (60327583)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
相馬 義郎 慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (60268183)
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Keywords | サーファクタント / 慢性肺疾患 / ASEM / CARS顕微鏡 / 脂質 |
Research Abstract |
新生児の肺胞環境の恒常性維持には肺水の除去、間質を含めた水の輸送、サーファクタント分泌など、水の輸送や脂質の輸送・分泌が不可欠である。大気圧下で走査電子顕微観察が可能な大気圧走査電子顕微鏡(ASEM)とCoherent Anti-Stokes Raman Scattering (CAR S)顕微鏡を用いるとサーファクタント関連蛋白の局在や脂質の移動を観察することが可能となる。本研究は、CARS 顕微鏡により生きた状態での肺胞上皮および肺胞上皮細胞における脂質の動きをリアルタイムで観察し、ASEMによる肺胞II型上皮細胞でのサーファクタ ント関連蛋白の観察、CARS顕微鏡での肺胞II型上皮細胞での脂質観察とサーファクタント関連蛋白の検討を行う。肺胞上皮細胞でのサ ーファクタントを含む脂質の分布変化および開口放出などの動態、サーファクタント蛋白との関連を観察することで、肺胞の恒常性維持の理解を深め、新生児の慢性肺疾患の予防、治療にも大変重要な意味を持つと考える。 昨年度の研究は当薬理学教室のCARS顕微鏡を使用し、初代培養した肺胞II型上皮細胞内の脂質観察を引き続き行った。また、大気圧走査電子顕微鏡(ASEM)を用い、肺胞II型上皮細胞のABCA3での免疫染色と電子顕微鏡写真を同時に撮影し、肺胞II型上皮細胞でのABCA3と脂質の局在を検討した。近年の新生児医療では妊娠22-23週の超早産児も成育出来るようになってきた。しかし、超早産児の生存率の上昇に伴い、出生後、未 熟な肺でのガス交換、子宮内感染などにより、慢性肺疾患を来たし、児の成長、運動機能、精神運動発達に影響を及ぼす。 本研究のASEMおよびCARS顕微鏡を用いた肺胞上皮細胞におけるサーファクタントの開口放出の観察とその制御因子の検索は肺胞の機能 維持の理解を深め、新生児の慢性肺疾患の予防、治療にも大変重要な意味を持つと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・CARS顕微鏡での肺胞II型上皮細胞での脂質観察とサーファクタント関連蛋白の検討 肺胞II型上皮細胞は、マトリゲル(BD science) を含んだ培地上で培養期間により単層または嚢胞(Cyst)を作る。肺胞II型上皮細胞をC-Hモードで観察すると、その組成の90%をリン脂質が占めているサーファクタントは、非常に強いCARSシグナルを発する。 本年度の研究では当薬理学教室のCARS顕微鏡はを使用し、引き続き初代培養した肺胞II型上皮細胞内の脂質観察を行い、CARS顕微鏡下で肺胞II型上皮細胞内に多くの脂質粒子を観察した。また、初代培養した肺胞II型上皮細胞を固定し、ASEMを用いたサーファクト関連蛋白であるABCA3の肺胞II型上皮細胞内での局在を観察・解析した 。現在、初代培養した肺胞II型上皮細胞をASEM用のシャーレでの固定条件が難しく、検討を続けている。今後、安定した条件を検討し、サーファクタント関連蛋白を含めた微細構造・動態をASEMと光学蛍光顕微鏡により観察し、サー ファクタントのパッキング・分泌の制御機構を解明する。
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Strategy for Future Research Activity |
・ASEMによる肺胞II型上皮細胞内のサーファクタント関連蛋白の観察 肺胞II型上皮細胞内ではリン脂質とサーファクタント蛋白を合成、lamellar体へパッキング・分泌している。SP-A, SP-C, pro-SPC, ABC A3などのサーファクタント関連蛋白は免疫染色・免疫電顕により認識することが可能である。肺胞II型上皮細胞の初代培養細胞を用いて、サーファクタント関連蛋白を含めた微細構造・動態とサーファクタント関連蛋白の免疫染色を行い、ASEMと光学蛍光顕微鏡によりサーファクタントのパッキング・分泌の制御機構を解明する。 ・ASEMによる標識リン脂質を用いた肺胞上皮細胞内での脂質輸送のイメージング 現在、蛍光物質で標識されたリン脂質は市販されている。さらに蛍光物質と金コロイドで標識したリン脂質を作成し、肺胞II型上皮細 胞に取り込ませる。脂質表面に取り入れたれたリン脂質が細胞内へ移動し、lamellar体にリクルートされ、パッキング、さらに分泌される過程を観察することでサーファクタントのパッキング・分泌の制御機構を解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果であり、翌年度の試薬・抗体等の購入費に充てる予定である。 本研究を実施するために、未使用額および次年度の直接経費から以下の研究費使用を計画する。 マウスの購入費・管理費 100,000円、試薬・抗体購入費 700,000円、実験器具購入費 200,000円、ソフトウェア費 100,000円、事務用品・消耗品費 90,000円、国際学会参加費 300,000円、国内学会参加費 100,000円。
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