2012 Fiscal Year Research-status Report
ホウ素中性子捕捉療法におけるホウ素化合物の組織内濃度の定量測定
Project/Area Number |
24591758
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
下瀬川 恵久 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30370258)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 弘樹 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20448054)
渡部 浩司 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40280820)
礒橋 佳也子 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50598604)
金井 泰和 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60397643)
巽 光朗 大阪大学, 医学部附属病院, 講師 (60397700)
畑澤 順 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70198745)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ホウ素中性子捕捉療法 / F-18 FBPA / PET / B-10 BPA / 微量元素分析 |
Research Abstract |
①正常動物におけるPET測定 平成24年度は正常ラットのF-18 FBPAの全身動態測定を行い、臓器別のF-18 FBPA正常分布について解析した。正常SDラット(8週齢、257.7±3.5g)3匹に対し、F-18 FBPA(10.23±0.50MBq)を尾静脈より投与し、一体型PET/MR装置(Hitachi Metals/NEOMAX Company)を用いて静注60分後まで全身撮像を行った。その結果、静注60分後のF-18 FBPAの体内分布は0.341±0.063~2.339±0.350%ID/gであり、腎、膵臓、肝臓、心筋、肺、脳、腸管の順に高く、主に腎臓からの排泄が示唆された。また、中性子照射のターゲットであるB-10 BPAを同時に投与し(5~20mg/kg)、F-18 FBPA放射能濃度とB-10ホウ素濃度(ICP-OESによる微量元素測定)の相関について解析した。その結果、静注60分後の各臓器のホウ素濃度は0.40±0.11~2.62±0.37%ID/gであり、F-18 FBPAの体内分布と同様に腎、膵臓、肝臓、心筋、肺、脳、腸管の順に高かった。肺、膵、腸管ではF-18 FBPA放射能濃度はホウ素濃度を50%以上過小評価する一方、腎では40%以上過大評価していた。その他の臓器ではF-18 FBPA放射能濃度との相関は良好であった。 ②F-18 FBPAの臨床応用への準備 F-18 FBPAの臨床使用にあたって、大阪大学医学部附属病院短寿命放射性薬剤安全管理委員会から平成24年3月30日付で使用承認が得られている。これに基づいて、正常被験者および中性子捕捉療法の対象となる悪性腫瘍(脳腫瘍、頭頚部腫瘍、肺腫瘍、皮膚腫瘍)に関するF-18 FBPA PET測定の臨床研究について大阪大学医学部附属病院倫理委員会に自主臨床研究の申請を行った。現在、認可待ちの状態である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
動物におけるF-18 FBPA PET計測では、正常ラットの体内分布測定およびF-18 FBPA放射能濃度とB-10ホウ素濃度の相関についての微量元素分析を行い、F-18 FBPA PET画像からホウ素濃度の推定が可能であるかについて検証した。この点について目標を充分に達成したと考える。ただし、撮像に使用した一体型PET/MR装置の空間分解能の限界から、一部の臓器で過大あるいは過小評価が生じたため、より分解能の高いPET/CT装置による追試実験が必要となった。平成25年1月に大阪大学に設置された高分解能小動物用PET/CT装置(Inveon PET/CT、SIEMENS Healthcare社製)を用いて追試実験を行い、現在は実験後の結果を解析中である。また、担癌ラットモデルの作製にやや時間がかかり、最終的には目標とする神経膠腫皮下移植モデルの作製に成功したが、本実験は平成24年度末に施行となり、現在結果を解析中である。 臨床応用への準備に関しては、当初の目標どおり倫理委員会への申請が順調に行われ、審査過程にも特に大きな問題が無いことから、健常者および担癌症例のPET検査を予定通り平成25年度に開始できる見込みである。したがって、臨床応用の準備については充分な達成度があると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
①正常動物および担癌動物におけるPET測定 平成25年度は高分解能小動物用PET/CT装置と担癌ラットモデル(脳腫瘍モデル)を用いてF-18 FBPA放射能濃度から組織内B-10ホウ素濃度を推定する検討を行う予定である。ラット神経膠腫由来細胞株(RGC-6細胞)を脳内に移植した担癌ラット(F344/NJcl-mu/mu、日本クレア、7週齢、230g)モデルを作製し、より臨床的な病態に近い状態での実験を行い、PETによる腫瘍のF-18 FBPA放射能濃度計測とICP-OESを用いた組織内のB-10ホウ素濃度計測を行い、両者の対比を行う。また、病理組織学的な検証も行い、腫瘍内部の性状とF-18 FBPA放射能濃度、およびB-10ホウ素濃度との関係についても明らかにする予定である。 ②F-18 FBPAの健常データベース構築と担癌患者への臨床応用 大阪大学医学部附属病院倫理委員会に申請を行った自主臨床研究は近々認可の予定であり、認可された段階で健常者を対象とする募集を行い、大阪大学医学部附属病院核医学診療棟に設置されているPET-CT(Eminence SET3000-B、島津製作所製)を用いて全身の動態撮像を行い、体内臓器のF-18 FBPAの正常分布に関するデーターベースを構築する。目標対象者数は20名である。また、動脈血化した静脈血の採血により血中のF-18 FBPA放射能濃度と放射性代謝産物の測定を行う。組織内のB-10 BPA濃度の推定を目的として、投与後50分の血液試料を採取し、放射能減衰後に微量元素分析を行う。さらに、血中中性アミノ酸濃度を外部委託にて計測し、F-18 FBPA放射能濃度への影響を検討する。 担癌患者に関する自主臨床研究についても、健常者と同様の計測を行い、腫瘍集積性や血中微量元素分析、血中中性アミノ酸濃度の影響を検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の推進方策にしたがって動物実験を行う際に、実験動物や細胞株の購入、細胞培養に必要な実験環境整備、サイクロトロンによるF-18の製造、F-18 FBPA標識合成に必要な前駆体や試薬の購入、腫瘍細胞の病理標本作製、データ解析に用いるソフトウェア購入に必要な経費が発生する。また、大阪大学大学院医学系研究科附属PET分子イメージングセンター内で実験を行う際にセンター利用料が必要となる。 自主臨床研究では、サイクロトロンによるF-18の製造、F-18 FBPA標識合成に必要な前駆体や試薬の購入、健常者への謝金および通信費、F-18 FBPA PET検査時の血中試料の微量元素分析や血中中性アミノ酸濃度の測定に関する外部委託費用、高速液体クロマトグラフィーやフラクションコレクターの試薬購入や保守に必要な経費、データ解析に用いるソフトウェア購入に必要な経費が発生する。 さらに、以上の研究結果を学会報告、討議および情報収集するための旅費や、論文発表するための印刷経費、英文化に必要な翻訳代金が発生する。
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