2012 Fiscal Year Research-status Report
超高線量率X線照射の生体反応と医学利用に関する基礎的検討
Project/Area Number |
24591840
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
岡本 欣晃 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (20362791)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 良平 神戸大学, 医学部附属病院, 教授 (30346267)
吉田 賢史 神戸大学, 医学部附属病院, 講師 (80351906)
宮脇 大輔 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (30546502)
古瀬 元雅 大阪医科大学, 医学部, 助教 (70340560)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 高線量率 |
Research Abstract |
近年、次世代の高精度放射線治療として、VMAT,Rapid Arc など線量率を可変させながら照射し、総線量を積算する治療法が開発されつつあるが、積算線量のみで生物学的効果を判断してよいか否かは慎重に検証すべき課題である。低線量率の生体反応に関してはこれまで諸家の報告が多々あるが、超・高線量率に関しては照射法を工夫しなければ生体内(In vivo)の反応を検討することは難しい。そこで、高輝度放射光設備(SPring-8)から供給される指向性の高いX 線ビームを用いて、超・高線量率(11,000cGy/sec)X 線照射のする生体反応(腫瘍と正常細胞)と、その医学利用への課題の抽出を目的とする。マウス、ラットなどの小動物定位固定した後、全脳もしくは半脳に対して120-960 Gy照射し、スリット幅、スリット間隔を可変させて体重の変化、生存率等を検討してきた。その研究成果をPreliminaryな報告とした上で、米国放射線腫瘍学会(ASTRO)にて発表したが、これまで実験手法に関しては報告があるが、その中・長期的な観察の報告はなく、多くの注目を集めた。(Mukumoto, et al., Int J Radiat Oncol Biol Phys, 2011; 81:S271)。特にブロードビームと超高線量率スリットビームという比較の中で、その生物学的意義を検討したが、ブロードビームの生存中央値の約8-10倍の線量を照射してもマウスが正常に生育することを発見したが、さらにスリット幅が同じであっても、スリット感覚を広げることで、より長い生存期間を得られることを実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々はこれまでのSpring-8のビームラインを用いて120 Gy/secという超・高線量X線の放射線照射をスリットビームという手法を用いて、生物学的効果を検証してきた(臨床に用いるX線装置の線量率は0.1-0.15Gy/secであり、約1000倍の超高線量率である)。マウス、ラットなどの小動物定位固定した後、全脳もしくは半脳に対して120-960 Gy照射し、スリット幅、スリット間隔を可変させて体重の変化、生存率等を検討してきた。その研究成果をPreliminaryな報告とした上で、米国放射線腫瘍学会(ASTRO)にて発表したが、これまで実験手法に関しては報告があるが、その中・長期的な観察の報告はなく、多くの注目を集めた。(Mukumoto, et al., Int J Radiat Oncol Biol Phys, 2011; 81:S271)。特にブロードビームと超高線量率スリットビームという比較の中で、その生物学的意義を検討したが、ブロードビームの生存中央値の約8-10倍の線量を照射してもマウスが正常に生育することを発見したが、さらにスリット幅が同じであっても、スリット感覚を広げることで、より長い生存期間を得られることを実証した。
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Strategy for Future Research Activity |
脳・脊髄への照射を行ったマウスを用いて、行動試験評価を行う。脳への照射後の行動試験には迷路試験を用い、脊髄への照射後のマウスにはLadder climb 試験(左図)を用いる。(※迷路試験=迷路内にマウスを歩かせ、飼料を置いてあるゴール地点までたどり着く時間を測定する。空間認知能力・記憶能力の指標として用いられる。 ※Ladder climb 試験=各段差の隙間が1cm の梯子を55 度に立て掛け、何段目まで登ることができるかを記録する。脊髄損傷の評価を行う行動試験として用いられている)。胸部への照射を行ったマウスでは呼吸状態の変化を、腹部への照射を行ったマウスでは体重変化等の観察も病理観察と平行して行う。本研究課題ではスリットビーム照射の長期的な観察に加えて、高精細格子状照射や三次元スリット照射による生物学的効果比の高い照射方法の条件設定を行う。また、マウス、ラットなどの小動物を用いて、移植された腫瘍に対する抗腫瘍効果を観察し、照射線量・格子サイズによる生存曲線モデルを作成する。同時に正常組織に対する照射を行い、病理学的・生理学的・行動学的な観察を加えて照射線量・格子サイズによる耐容線量曲線を作成し、適切な照射線量と格子サイズの探索を行う。臨床応用を見据えた場合、なるべく大きな格子サイズが実用化の初期課程であり、大きな格子サイズの耐容線量に重点を置く。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題に関して世界的にも新規的な成果が出つつあるので、それらに対して成果報告や、専門家からの意見供与を求めるための研究交換を活発に行う。成果報告に関しては国内学会、国際学会の双方で行う予定で旅費を計上した。また、更なる成果を得るためにもオリジナリティーの高い手法、発想での研究が望まれるため、前述のSpring-8のビームラインを使った動物実験を継続していく予定で有り、そのための消耗品の使用、実験補助者への謝金、動物実験室管理料、飼育料などを計上した。
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