2013 Fiscal Year Research-status Report
HLA-Fによる免疫抑制法―制御性T細胞を100%残すアロ反応性細胞除去法の開発
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24591886
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
王寺 典子 (下嶋 典子) 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (30398432)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石谷 昭子 奈良県立医科大学, 医学部, その他 (40112544)
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Keywords | HLA-F / 拒絶反応 / 移植 |
Research Abstract |
HLA-Fは非古典的HLAクラスI遺伝子の一つであり、研究協力者のGeraghtyらが発見した遺伝子である。HLA-Fは、これまでの解析で、①定常状態のB細胞表面には発現していないが、EB virusにより形質転換したB細胞表面には発現する(J Immunol., 2003)、②HLA-Fは定常状態の免疫担当細胞表面には発現していないが、活性化免疫担当細胞表面には発現する(Eur J Immunol., 2010)、③HLA-FはCD25+CD4+制御性T細胞表面には、定常・活性化のいずれの状態においても発現しない(Eur J Immunol., 2010)ことが、Geraghtyらにより明らかにされている。さらに、④多様な発現様式をもつこと(J Immunol., 2010)、⑤HLAクラスIのopen conformerと会合してクロスプレゼンテーションと関与する(J Immunol., 2013)ことがGeraghtyらから報告された。 このことからHLA-Fは、拒絶反応時に活性化された細胞に発現するだけでなく、拒絶反応の増悪に関与しているとも考えられる。 申請者らは、抗HLA-F抗体を使用した活性化細胞除去による免疫抑制法の開発を目指し、昨年度より腎臓・肝臓・造血幹細胞移植前後における患者末梢血リンパ球におけるHLA-Fの発現を解析してきた。 これまで腎臓移植82例、肝臓移植76例、造血幹細胞移植43例について解析を行っているが、現時点では各臨床データと、HLA-Fの発現有無について、明確な相関は得られていない。現在、6種の抗HLA-F抗体を使用して詳細な解析を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
検体数は、非常に順調に増やせているが、統計学的な解析を行うには最低でも医療機関ごとに各100例程度を集める必要がある。検体によっては、移植前後の各日程(移植前日、移植後1日目、以降1週間~2週間おきに、1~3カ月。以降1カ月おきに6カ月~3年間)の検体を得られない場合もあるので、移植前後の各日程すべてにおいて解析可能な検体数を確保するため、継続して検体数を増やし、解析を継続する。 HLA-Fの発現解析は、得られた検体すべてについて行っているが、現時点では各臨床データとの相関は得られていない。認識部位の異なる6種の抗HLA-F抗体を用いて解析を進めているが、HLA-Fがクロスプレゼンテーションに関与し、多様な発現様式を持つことから、生体におけるHLA-F発現をうまく捉えられていない可能性がある。 現在、これらについて検証を進めながら、検体解析を行っているところであり、本研究を進めていく中で上記の問題点がみいだされことから、現在までの達成度はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに引き続き、腎臓・肝臓・造血幹細胞移植後患者末梢血単核球におけるHLA-Fの発現解析を続け、検体数を増やすと共に、HLA-F陽性細胞上のHLA-Fのタンパク解析を行う。特に6種の抗HLA-F抗体を用いてHLA-Fタンパクを詳細に解析し、どの抗HLA-F抗体と反応するHLA-Fが臨床的に意義のあるものか、臨床データとの相関を検討することで明らかにする。また、in vitroにおいて種々の条件で刺激した細胞上のHLA-Fの発現様式の違いを明らかにし、HLA-Fの多様な発現様式が拒絶反応にどのような意義を持つのかを明らかにする。HLA-F発現における免疫抑制剤の影響についても、検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度は、ほぼ研究計画通りに研究費を使用したが、本研究を進める中で、解析方法の検討が必要となる項目ができたため、タンパク質解析用の試薬費が増加した。26年度もこれらを継続する必要があるが、タンパク質解析用試薬が高価であったことと、in vitro実験の試薬費が必要であったことから、試薬費不足による26年度の研究継続困難を回避するため、約20万を26年度に繰り越した。 試薬(おもに抗体)、ガラス・プラスチック等使い捨て器具(チューブ、シャーレ、、ピペット等)に使用する。内訳は、抗HLA-Fモノクロナル抗体¥60,000/本×6=360,000-、FACS用抗体(CD25、CD4、CD3、CD19、CD14、CD56、CD127、アイソタイプコントロール3種)¥40,000/本×10=400,000-、細胞分離キット(CD3、CD19、抗マウスIgGビーズ)¥80,000/kit×3=240,000-、タンパク質解析用試薬\215,000-(PAGEゲル\2,500/10枚×100枚=\25,000-、PVDFメンブレン\40,000-、protein G 磁気ビーズ\50,000×2=\100,000-、銀染色試薬\10,000×5=\50,000-)、細胞刺激剤\50,000×2=\100,000-、その他をガラス・プラスチック等使い捨て器具に充てる。
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