2013 Fiscal Year Research-status Report
p53遺伝子変異と治療早期のSer46リン酸化誘導からみた食道癌個別化治療戦略
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24591962
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
安田 卓司 近畿大学, 医学部, 教授 (10324782)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塩崎 均 近畿大学, 医学部, 教授 (70144475)
今本 治彦 近畿大学, 医学部, 教授 (80351609)
今野 元博 近畿大学, 医学部附属病院, 准教授 (00278681)
新海 政幸 近畿大学, 医学部, 講師 (80340793)
安田 篤 近畿大学, 医学部, 講師 (60351615)
白石 治 近畿大学, 医学部附属病院, 助教 (70388536)
岩間 密 近畿大学, 医学部, 講師 (20548648)
錦 耕平 近畿大学, 医学部, 助教 (90441039)
加藤 寛章 近畿大学, 医学部附属病院, 助教 (30460900)
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Keywords | P53 / Ser46 / リン酸化 / 効果予測 / 食道癌 / 遺伝子変異 / 個別化 / apoptosis |
Research Abstract |
食道癌治療は、全身の微小転移制御による再発予防を目的にした術前化学療法や腫瘍縮小による切除率向上または完全奏効による非切除食道温存治療を目的にした化学放射線療法が行われ、予後や治療の質の向上が図られている。しかし、survival benefitはいずれもresponderに限られており、正確な効果予測が今後の治療の質を左右する。これまでの研究によれば、p53の遺伝子変異株の8割強は化学療法に非奏効で、CRTにおいてはpCRはまず期待できないなど、non-responderの予測は明らかになりつつある。一方、responderの予測に関してはあまり臨床応用可能な結果が得られていないのが現状である。P53のapoptosis誘導にはSer 46がリン酸化されて活性型に変化する必要があるが、我々はこれが奏効度をpositiveに左右する鍵と考えている。これまでの細胞による予備実験ではP53野生株ではUV照射によるDNA損傷後約1時間でSer46のリン酸化が誘導され、apoptosisも誘導された。しかし、生体内での動きは全く不明であり、放射線照射或いは抗癌剤投与後の実際のリン酸化誘導やその誘導時期について臨床試験でまず検討することとした。ただ、昨年、実験担当者が大学院を卒業して4月から病棟勤務となり、更には10月に他院に異動になったため、昨年4月に帰学した社会人大学院の3年生を後任とし、4月から9月迄の半年間で前任者の臨床業務の合間で引き継ぎと実験手技の指導を受け、10月からは独自に実験の再現性、安定性の向上に努めてもらった。そのため、この1年間は前任者の追試実験が主体で研究全体としての前進はほぼなかったが、漸くこれまでと同等の実験精度を維持するための準備は整った。予定は遅れたが、今後は本来の研究である生体内でのP53 Ser46のリン酸化誘導の確認に取り組む予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
昨今の外科医不足で研究に従事する医師がいなかったためである。我々の外科学教室は大講座制で、実際に上部消化管部門に配属される大学院生は2年に一人程度の割合である。他の上級スタッフは食道癌・胃癌の患者を10人以上受け持って毎日手術・病棟業務・外来業務・検査などに追われており、時間を要する分子生物学的な研究に従事することは不可能な状況にある。2年前に本研究に従事した大学院生もその時既に大学院4年で、1年間は細胞などの予備実験を行ってきたが、大学院卒業後の昨年4月からは病棟復帰となり、更に10月には異動となったため実際に実験を行うことはできなくなった。幸い昨年4月に社会人入学の大学院3年生が帰学したため、その先生に担当を変わってもらったが、まず分子生物学的実験手法の習得を前任者の臨床業務の合間で指導を受けつつ修得しなければならず、前任者の異動までに何とか技術と理論を身につけるのが精一杯という状況であった。ただ、本実験を行うには実験手技の再現性、安定性、精度が求められ、前任者の行った細胞実験の追試を行いつつ技術を確実にしてもらったが、結局1年近くを要してしまった。しかし、以前同様の実験精度で研究を行う体制は整うことができたと考えている。現在のグループのマンパワーと昨今の外科医不足の状況を鑑みると仕方ない結果であったと考えるが、体制は整ったので今年は臨床研究に入る予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず確認すべきは、実際に放射線照射や抗癌剤でP53 Ser46のリン酸化は誘導されるのか、そのリン酸化は照射後または抗癌剤投与後いつ頃(何時間後・・?何日後・・?)に誘導されるのか、放射線と抗癌剤でその誘導時期に差はあるのかの3点である。論文での細胞実験ではDNA障害性抗癌剤と接触して24時間後には誘導が確認されているが、UV照射を用いた我々の予備実験では1時間後で既にリン酸化の誘導が確認された。いずれにしろ、まずは刺激後24時間以内に誘導されると仮説を立てて、放射線照射或いは抗癌剤投与の翌日に内視鏡下の生検で組織を採取し、P53 Ser46のリン酸化の有無をWestern boltにて確認する予定で、5例検索して発現がなければ組織採取日を治療開始当日に変更して5例検討、それでも検出されなければ治療開始後2日目に採取して同様の検討を行うこととしている。実際に生体内でDNA損傷の刺激に対するP53 Ser46のリン酸化誘導の確認と至適組織採取日が決まれば、P53遺伝子変異とリン酸化誘導の関連や治療効果との関連を比較検討していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年、実験担当者が大学院を卒業して昨年4月から病棟勤務となり、更には10月に他院に異動になったため、昨年4月に帰学した社会人大学院の3年生を後任とし、4月から9月迄の半年間で前任者の臨床業務の合間で引き継ぎと実験手技の指導を受け、10月からは独自に実験の再現性、安定性の向上に努めてもらった。そのため1年間は前任者の追試実験を行いつつ実験手技や理論の修得に費やすこととなり、新たな機器の購入が先送りになったためである。 まずはWestern blot関連のkitや試薬、P53およびP53 Ser46リン酸化の抗体やapoptosis関連抗体、更にはsequence関連kitや試薬を購入し、臨床試験によって放射線照射や抗癌剤投与によるP53 Ser46のリン酸化の誘導の有無やその時期を検討していく予定である。また、次の段階としてP53 Se46のリン酸化と治療効果の相関を比較検討するが、より治療効果を客観化して評価するため、切除標本での違残腫瘍の断面積を自動測定する解析ソフトと周辺機器を購入する予定としている。
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