2012 Fiscal Year Research-status Report
HSP90阻害剤を用いた食道癌に対する新規分子標的治療法の開発
Project/Area Number |
24591964
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
山辻 知樹 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (40379730)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猶本 良夫 川崎医科大学, 医学部, 教授 (00237190)
深澤 拓也 川崎医科大学, 医学部, 講師 (20379845)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | HSP90阻害剤 / AUY-922 / 食道癌 |
Research Abstract |
1.HSP90阻害剤AUY-922 による食道癌細胞増殖抑制効果の検討 ヒト食道癌培養細胞TE-1,TE-4,TE-8およびTE-10に新規HSP90阻害剤AUY922を加え、細胞増殖抑制効果を検討した。いずれの細胞株においても、24から72時間で10から30nMのAUY922により細胞増殖抑制効果がみられたものの、その効果は細胞株による差異が認められた。IC50を算出したところ、TE-4 では25.29 nMであったが、TE-1, TE-8 およびTE-10においては50から70nMであった。 2.HSP90阻害剤AUY-922 による増殖抑制機序の解析 上記結果によりHSP90阻害による食道癌細胞の増殖抑制が示されたが、その分子生物学的機序を明らかにするため、癌細胞の増殖に深く関わる分子であるPTEN, AKTおよびERKの発現量と各分子のリン酸化をウエスタン・ブロッテイング法により検索した。HSP90阻害剤を加えて24から72時間培養した細胞を回収し、溶解液にて細胞質・細胞膜成分と核タンパク成分を抽出し、各種抗体を用いてその発現を検出した。その結果、TE-1およびTE-8でリン酸化Aktの抑制を認めた。また、TE-4においてPTENの発現低下が認められた。上記結果で示されたAUY922に対する感受性の差がPTENの発現によって制御されている可能性が強く示唆された。 3.意義と重要性 我々はこれまで消化器癌培養細胞(平成21年度基盤研究C)、KRas変異型肺腺癌培養細胞(平成23年度基盤研究C)を用いてHSP90阻害剤による増殖抑制効果を示し、その分子生物学的機序を解析したが、食道癌においてはその意義は全く明らかにされていなかった。食道癌培養細胞を用いて明らかになった成果を国内外の学会にて発表し、腫瘍生物学関連欧文誌に投稿し、出版された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した「研究の目的」のうち、1.新規HSP90阻害剤AUY-922 による食道癌培養細胞に対する増殖抑制効果の確認および、2.HSP90阻害剤AUY-922 による食道癌細胞の増殖抑制機序の解明についてはほぼ達成したと考えられる。これらは「研究計画・方法」に記載した平成24年度の計画に相当する。
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Strategy for Future Research Activity |
交付申請書に記載した研究計画通り、新規HSP90阻害剤AUY-922 による食道癌細胞の増殖抑制機序をさらに詳細に解明し、その結果を用いて、癌転移動物モデルにおけるHSP90阻害剤の抗腫瘍効果の検討を進める予定である。ヌードマウスを用いた癌腹膜播腫転移モデルに対して、AUY922の抗腫瘍効果を検討する基礎実験を行い、抗腫瘍効果の検討を通じて得られたHSP90阻害剤の適正用量・投与時間の設定を行う。細胞から動物実験に至るこれらの実験成果を、近い将来臨床応用可能な新規分子標的治療法として、国内外の学会および誌上発表を行う準備を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の実験計画通りHSP90阻害剤が食道癌細胞の増殖シグナルに与える影響を確認できた。順調な進捗状況でもあり、初年度は実験条件初期設定に用いる抗体等の試薬類にかかる費用が比較的抑えられたため、次年度使用額は平成25年度請求額とあわせて、HSP90阻害剤の抗腫瘍効果の解析をさらに深めるため、引き続き情報伝達解析用試薬、癌転移動物モデルとしての実験動物などを新規購入する資金が必要であると考えられる。
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