2012 Fiscal Year Research-status Report
大腸癌間質に着目した再発リスクに関わるバイオマーカーの探索
Project/Area Number |
24591978
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
古畑 智久 札幌医科大学, 医学部, 准教授 (80359992)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
沖田 憲司 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (70517911)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 大腸癌 / MMP-2 / EMMPRIN / 線維芽細胞 |
Research Abstract |
大腸癌細胞株からRNAを抽出しcDNAの合成を行ったところ、EMMPRINの発現解析を行ったところ発現量は、細胞株によって異なっていた。しかし、線維芽細胞との共培養の系では、大腸癌細胞株もEMMPRINの発現亢進し、さらに共培養した線維芽細胞のMMP-2の発現が誘導されていた。この結果から、in vitroにおいて大腸癌細胞と線維芽細胞との間に相互関係が存在することになり、その相互関係に関連する分子としてEMMPRINとMMP-2が想定された。大腸癌細胞株と線維芽細胞の共培養の系でマトリゲルを用いたinvasion assayを行った。するといずれの大腸癌細胞株においてもその浸潤能が亢進していることが確認され、大腸癌細胞と線維芽細胞の相互関係は、癌の浸潤に関わる可能性が示唆された。手術にて摘出されたStageII大腸癌組織145例を用い、MMP-2の発現を検討した。間質部にMMP-2発現を認める症例は78例(53.8%)、腫瘍部にMMP-2の発現を認める症例は45例(31.0%)であった。MMP-2の発現による予後解析を行ったところ、間質部にMMP-2の発現群は、非発現に比べ有意に予後不良であった。腫瘍部のMMP-2発現に関しては、発現群と非発現群の予後はほぼ同等であり差を認めなかった。したがって、腫瘍部で発現するMMP-2は予後因子とはならないが、間質部で発現するMMP-2は予後因子となるもものと考えられた。次に、間質部でMMP-2を発現している症例を選択し、EMMPRINの発現解析を行った。現在まで32例の解析が終了しており、EMMPRINの発現は29例(90.6%)に認めており、高い相関性が考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大腸癌細胞株と線維芽細胞株の共培養の系を確立することができ、今後、この系を利用して腫瘍関連線維芽細胞に関わる研究が実施可能となった。今年度に得られた知見としては、相互関係が存在することが明らかになり、そのキーとなる分子はMMP-2とEMMPRINであることが確認された。大腸癌細胞株と線維芽細胞株との相互関係によって、大腸癌細胞株は浸潤能を得ることが確認された。さらに、大腸癌細胞株の性格の変化について、特に上皮間葉転換(EMT)についても検討予定としていたが、本年度はそこまでは達成できなかった。臨床検体における検討は、Stage2大腸癌組織145例を使用してMMP-2の免疫組織学的検討を行った。以前得られた知見通り、間質部に発現するMMP-2は予後因子となることが症例数を増加しても確認された。間質で発現する細胞が何であるのかという検討を行うために線維芽細胞のマーカーやEMTのマーカーを免疫組織学的に検討する予定としていたが、免疫染色の条件設定のため基礎実験にとどまり結果をえることができていない。EMMPIRINの免疫組織学的検討も終了しておらず、in vivoにおけるEMMPRIとMMP-2の発現の相関について明らかにはできていない。
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Strategy for Future Research Activity |
大腸癌細胞株と線維芽細胞株の共培養の系におけるinvasion assayにて、EMMPRIN抗体による腫瘍浸潤抑制実験を行い、大腸癌細胞株の浸潤の獲得がEMMPRINに誘導されたMMP-2によるものであることの確認を行う。この共培養の系において、浸潤能を獲得した大腸癌細胞株がEMT様の変化を起こしているかいなかについて、EMT関連分子であるE-cadherin、Snail、ZEB1/2、Twist、Necl-5などの発現解析を行い、重要なEMT関連分子を同定する。臨床検体を用いた研究に関しては、現在までに行った145例についてEMMPRINの免疫組織学的検討を行い、EMMPRINと間質で発現するMMP-2との相関関係を明らかにするとともに、EMMPRINの予後因子としての有用性について検討を行う。さらに、間質でMMP-2を発現する細胞を同定するために線維芽細胞のマーカーやEMT関連分子の抗体を用い、発現解析を行っていく。この検討によって、間質におけるMMP-2発現細胞を予測できるだけでなく、新たな予後因子や再発危険因子に関する新たなバイオマーカー同定の可能性が出てくる。間質でMMP-2発現する細胞が線維芽細胞由来であると予測された場合には、癌細胞近傍までに線維芽細胞をリクルートするケモカイン様物質の存在が予測されるので、大腸癌細胞株のケモカイン発現プロファイルを行い候補となるケモカインの検索を行う。一方、間質でMMP-2を発現する細胞がEMT関連マーカーを発現している場合は、癌細胞由来であることが考えられる。その場合は、EMMPRIN高発現細胞株をマーキングした後に、ヌードマウスへの移植実験を行い、その機序について検討を加えたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
In vivoの実験系では、細胞培養消耗品、核酸調整用試薬、マトリゲル、ELISAプレートなどに使用予定である。臨床検体を用いた研究では、免疫染色用抗体、免疫染色キットなどに使用予定である。備品に関しては、特に必要のものは無い。また、昨年度行えなかった学会発表、論文発表は、本年度には予定しているので、学会旅費、論文作成費などにも使用予定である。
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Research Products
(1 results)