2013 Fiscal Year Research-status Report
大腸癌分子標的フォスファターゼとラス遺伝子の治療可能性についての検討
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24591982
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
渡辺 昌彦 北里大学, 医学部, 教授 (80146604)
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Keywords | 大腸癌 / 遺伝子増幅 / PRL-3 |
Research Abstract |
大腸癌の発生はAPC,K-ras,PRL-3と多段階的に生じる分子異常の蓄積で起こることが知られている。これら遺伝子変化(変異、増幅)の臨床的意義を多数検体で同時に調べた報告はなく、またそれらの治療標的としての可能性についても十分検討されているとはいえない。われわれはこれまでの研究からK-ras変異とPRL-3遺伝子発現増加が大腸癌治療標的として特に有望とする研究結果を得ているが、今回はそれをさらに発展させPRL-3抑制の治療的意義をK-ras変異の影響有無で分けて分析することにより大腸癌における分子標的治療の可能性を探ろうと本研究を企画した。 平成25年度は以前報告した大腸癌のPRL-3遺伝子発現増加と遺伝子増幅の関係について検証した。大腸癌におけるPRL-3遺伝子増幅の頻度はDukes A/B versus Dukes C/Dで大きく異なっていたが(Hatate K,Oncol Rep 2008)、今回の遺伝子増幅についての検討も評価した。PRL-3遺伝子増幅は大腸癌の 31%に認められ、ステージによる差はほとんどみられなかった。Stage I, III, IV では 30-40% の異常が見られたが、 Stage IIでは15%ほどと頻度が少なく Stage IIの大腸癌は Stage Iからの一部の亜型であることが示唆された。一方、予後解析では 再発のある Stage である Stage II-IVにおいて PRL-3 遺伝子増幅例は予後が有意に不良であり (p=0.017)予後の多変量解析を行った。多変量ではステージと独立した有意な因子とはならなかったが、大腸癌の予後に影響を与える分子として注目に値すると考えた。また、肝転移における PRL-3 遺伝子増幅を調べた結果、原発癌では増幅例が少なく、大腸癌の肝転移の切除例では PRL-3遺伝子の増幅に関しては minor populationを標的とする可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
PRL-3遺伝子増幅の臨床的意義についてはこれまでに報告がないが、原発巣の遺伝子増幅の頻度を検証し、Dukes A/B versus Duker C/Dに差というよりもむしろ予後と関連していることが明らかになった。さらには同じ患者の癌であっても原発巣と肝転移巣では約2倍以上の遺伝子増幅の程度の差があることから、大腸癌の肝転移に対してのPRL-3遺伝子の重要性が再確認された。結論として大腸癌における PRL-3遺伝子異常の癌進展における役割は極めて強く今後治療標的として注目に値すると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
K-ras変異プロファイルとの比較がまだおこなわれていないためそこに着手する予定である。大腸癌におけるK-ras変異の予後的意義はかなり限定的なので PRL-3遺伝子変異との関連は極めて面白い結果になると期待している。
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