2013 Fiscal Year Research-status Report
形態形成シグナル制御による膵癌癌性幹細胞の微小環境・再構築療法への挑戦
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24592043
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
中村 雅史 川崎医科大学, 医学部, 教授 (30372741)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堤 宏介 川崎医科大学, 医学部, 助教 (00467937)
中島 洋 川崎医科大学, 医学部, 講師 (60623048)
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Keywords | 膵癌 / 自己抗体 / 形態形成シグナル / Sonic Hedgehog |
Research Abstract |
Cancer stem cellの微小環境構築にかかわる分子の網羅的検索のために以下の2つのスクリーニングを行った。 ①膵癌患者の自己抗体検索:Stem cellでの非生理的なタンパクの過剰発現が自己抗体を感作する可能性があるとの仮定のもとに、担癌患者の自己抗体を網羅的に検索することで異常発現タンパクの同定を目指した。タンパク質ライブラリーをビオチン化した系を用いて膵癌患者血清の1次スクリーニングを行った。結果として、膵癌患者血清中に9種類の自己抗体を同定できた。この9種のタンパクを用いて2次スクリーニングを行ったところ、calcium and integrin binding 1 (CIB1)タンパクが最も強いシグナル強度を示した。CIB1自己抗体発現と臨床・病理学的背景の検討をおこなったが、特異的な関連を示す因子は認めなかった。 ②Stem cell factorの候補であり形態形成シグナルでもあるHedgehog伝達系は、癌細胞と間質細胞の情報伝達に重要な役割を持つ可能性が報告されている。特に、リガンドであるSonic Hedgehog(Shh)が、この情報伝達を直接担っていることが報告されている。前年度に、癌抑制機能に注目されつつある血糖降下剤metforminが膵癌細胞内Shhの発現に関連している可能性を発見した。この関連をリアルタイムPCRでさらに検証した。Rasに変異がない膵癌細胞であるBxPC3は、metforminとの共培養によってShhのmRNAが統計学的に優位に低下することが明らかとなった。他のRas変異を持つ3つの癌細胞株(膵癌細胞2種(Panc-1, AsPC-1)、食道癌細胞(TE-1))も感受性を示したが、至適濃度と濃度変化に対する挙動は細胞間で異なった。 ③膵癌切除組織から分離した膵癌細胞・繊維芽細胞の増殖・保管を行い、今後の実験に備えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①膵癌組織で過剰発現しているタンパク質を介して、癌性幹細胞が周囲間葉細胞と相互作用をすることで、癌性幹細胞の微小環境は維持されていると考えられる。このような癌組織固有に過剰発現するシグナルや分子の同定が本課題の大きな目標の一つであるが、今回、癌患者に発現する自己抗体を複数同定することができた。自己抗体発現の原因としては、過剰発現や、胎児期にしか発現しないタンパク質の異時性発現、変異タンパク性の発現、さらに精巣などの免疫細胞より隔離された部位に発現しているタンパク質の異所性発現などが考えられる。いずれも癌組織の異常なシグナルや遺伝子変異の産物である可能性が高く、癌やその母体である癌性幹細胞環境の維持に関わっている可能性が考えられる。このような、癌および癌幹細胞組織に関わる分子機構の一端にたどり着く可能性がある分子を同定することができたことが第一の理由である。 ②癌幹細胞とその微小環境に関与していると考えられているHedgehogシグナルのリガンドであるShhは、癌細胞が分泌して間葉系細胞が受容するパラクライン系として癌細胞―間葉系細胞相互作用を司っていると考えられている。ところで、metforminは膵癌の発生を抑制する可能性が報告されている(Metabolism 60(10): 1379-1385, 2011)。今回、metforminが膵癌細胞内ShhのmRNA発現を抑制することが示された。このことは、metforminの発癌抑制効果が癌性幹細胞に対する効果を含んでいる可能性を示唆しており、metforminによるShhの抑制機構解明により、最終目標である癌幹細胞抑制法開発が大きく進展することが期待される。このことが第二の理由となる。
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Strategy for Future Research Activity |
①自己抗体のスクリーニングより抗CIB1抗体が膵癌患者内で発現することがあることが明らかとなった。2013年にCIB1が全てのintegrin complexesと結合する可能性が報告された(Freeman TCJ et al., Biochemistry. 2013 Oct 8;52(40):7082)。今後、CIB1の膵癌組織内や膵癌細胞内での発現の有無、臨床・組織学的事項との関連を検索予定である。また、癌幹細胞との関連機能解析のために、癌組織内での局在や陽性細胞と膵癌幹細胞関連表面マーカー(CD133, CD44, c-Met等)との関連を研究予定である。 ②metforminによるShhの発現抑制がどのような経路を介するのかを探索する。具体的には、metforminと共培養した膵癌細胞のmRNAを抽出してマイクロアレイ解析を行い、どのような経路が変化しているかを確認する。同定された経路の抑制・活性化にともないShhの発現がどのように変化するかを検出する。また、metforminの古典的経路であるAMPK阻害による影響を観察する。 ③CIB1, Shhといった分子、またmetforminが膵癌細胞と間質の情報伝達に与える影響をin vitroで調べる。膵癌患者より樹立した膵癌関連線維芽細胞を膵癌細胞と共培養する。このとき、CIB1/ShhのSiRNAやmetforminと共培養することによる各種間質支持サイトカインの発現変化を観察する。また、線維芽細胞や癌細胞の形態変化(上皮間葉変換)も観察する。 ④CIB1, Shhといった分子、またmetforminが膵癌細胞と間質の情報伝達に与える影響をin vivoで調べる。膵癌細胞の異種移植モデルを用いて、CIB1, Shh抑制やmetformin投与が、腫瘍形成・増大、血管新生、線維形成に与える影響を観察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に物品を購入していてるが、平成25年度受領額を超えており支払いが済んでおらず、平成26年度受領額と合わせて支払うこととなったため。 すでに物品は購入しており、業者に支払う予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] Profiling of Autoantibodies in Sera of Pancreatic Cancer Patients2014
Author(s)
Yosuke Nagayoshi, Masafumi Nakamura, Kazuhiro Matsuoka, Takao Ohtsuka, Yasuhisa Mori, Hiroshi Kono, Teppei Aso, Noboru Ideno, Shunichi Takahata, Akihide Ryo, Hiroyuki Takeda, Tetsuhide Ito, Yoshinao Oda, Yaeta Endo, Tatsuya Sawasaki, Masao Tanaka
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Journal Title
Annals of surgical oncology
Volume: in press
Pages: in press
DOI
Peer Reviewed
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