2013 Fiscal Year Research-status Report
各種プロテオーム解析を用いた微乳頭構造を呈する肺腺癌特異的マーカーの獲得
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24592099
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
佐藤 之俊 北里大学, 医学部, 教授 (90321637)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 雄一 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (30178793)
蒋 世旭 北里大学, 医学部, 准教授 (70276153)
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Keywords | 肺腺癌 / micropapillary pattern / タンパク / 免疫染色 / Vimentin / 臨床病理学的因子 |
Research Abstract |
わが国において肺癌は悪性腫瘍のうち最も多い死因となっているが、それに対する治療法の進歩はいまだ満足できる状況ではなく、早期診断や治療効果判定および予後予測因子等に有用なマーカーの獲得が求められている。肺癌の主な組織型には腺癌、扁平上皮癌、大 細胞癌、小細胞癌があるが、我々は肺腺癌におけるmicropapillary pattern(以下MPP)の出現に注目した。肺腺癌においてMPP構造を有するものは浸潤・転移を来しやすいという臨床背景から、MPP構造の獲得は高分化腺癌が進展して悪性度を増す際の第一段階と推定される。 そこで本研究では、MPPとnon-micropapillary pattern(以下NMPP)患者の腫瘍組織や血清中のタンパク質分析を行うことによって癌の高悪性度化に関与する因子あるいは浸潤・転移に関与する因子を同定できる可能性に着目した。本研究の具体的目的は、肺癌の手術検体と患者血清のプロテオーム解析を行い、MPPに特異的なバイオマーカー候補を探索する事であり、それらの中で癌の転移や浸潤あるいは高悪性度に関与するタンパクの同定ができれば、肺癌の早期診断や治療計画を立てる際の判断材料として有用なものとなると考えられる。昨年度はプロテオーム解析の手段として二次元電気泳動法を用いた。すなわち、外科的に切除された肺癌検体の凍結標本の一部を使用し、MPP症例とNMPP症例に対し、それぞれタンパクを抽出した後に二次元電気泳動を行い、発現量の相違があるタンパクを複数同定した。今年度においては、それらのタンパクのうち、上皮間葉転換や腫瘍の悪性度に関与するVimentinの免疫染色を行い、腫瘍における染色強度、染色範囲等の評価を行っている。また臨床研究においては、MPP群とNMPP群における年齢、性別、喫煙歴、病期といった臨床病理学的因子の調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
臨床研究においては、前年度からさらに症例を追加し、2002年1月から2012年12月までに当院で外科的に切除された原発性肺癌のreviewを行った。根治切除された肺腺癌症例は629例であった。その中でmicropapillary patternを有するadenocarcinoma (以下:MPP-Ac)は、101例(16.1%)であり、通常のadenocarcinoma (non-micropapillary pattern adenocarcinoma (以下:NMPP-Ac))は528例(83.9%)であった。MPP-Ac群とNMPP-Ac群で臨床病理学的因子の解析を行ったところ、年齢、腫瘍径、胸膜浸潤、静脈浸潤、リンパ管浸潤、リンパ節転移、術後病理病期および術後のup-stagingで有意差を認めた。 基礎研究においては、外科的に摘出されたMPP-AcもしくはNMPP-Ac症例の凍結組織標本からタンパクを抽出し、両者のタンパク発現プロファイリングを二次元電気泳動にて比較した。発現に差のあるタンパクとして、複数のタンパクが同定された。それらのタンパクのうち、上皮間葉転換や腫瘍の悪性度と関連の深いvimentinに着目した。Vimentinの免疫染色をMPP-AcおよびNMPP-Acに対して行い、発現と臨床病理学的因子との関連を調査したところ、NMPP-Acではvimentinの発現と腫瘍の分化度に相関を認めた。一方、MPP-Acにおいては、リンパ管浸潤およびリンパ節転移陽性の症例で有意にvimentinの高発現を認めた(p<0.05)。また、MPP-Ac症例において、vimentin高発現群と低発現群での群間比較を行うと、両群間の予後に有意差を認め(p<0.05)、多変量解析においてもvimentinの高発現が一つの独立した予後因子となるうる結果となった。 またMPP-Acのcell lineは未だ樹立されていないため、樹立を目標としている。具体的には手術で摘出された生組織を用いてprimary cell cultureを行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床研究面において、臨床病理学的因子の調査は終了しており、今後はさらなる症例の追加を出来る限り行う。 基礎研究においては、手術により摘出された生組織からMPP-Acのprimary cell cultureを行い、cell lineの樹立を目標としている。 また、MPP-Acの3次元構造は未だ証明されていないため、電子顕微鏡、共焦点レーザー顕微鏡、3次元構造解析ソフト等を用いて、その構造を解析する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の末から手術により摘出された生組織からMPP-Acのprimary cell cultureを行い、cell lineの樹立を試みている最中であるが、対象となる患者の手術日程により次年度も継続して行う予定である。今年度購入する予定であった試薬等を次年度に購入することとし、研究費を繰り越した。 電子顕微鏡や共焦点レーザー顕微鏡等を用いたmicropapillary patternを有するadenocarcinoma(MPP-Ac)の3次元構造の解析、手術により摘出された生組織からMPP-Acのprimary cell cultureを行い、cell lineの樹立を行う予定である。電子顕微鏡用試薬、免疫染色試薬、腫瘍細胞培養培地、腫瘍細胞培養添加試薬、プラスチック製品の購入。
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[Presentation] A CLINICOPATHOLOGICAL ANALYSIS OF PULMONARY ADENOCARCINOMA WITH MICROPAPILLARY COMPONENT
Author(s)
Hiroyasu Nakashima,Shi-Xu Jiang,Ryo Nagashio,Toshihide Matsumoto,Dai Ishii,Hirotsugu Yamazaki,Masahito Naitoh,Fumihior Ogawa,Yoshio Matsui,Yuichi Saitoh,Kazu Shiomi,Naomi Kurouzu,Hidenori Hara,Akira Iyoda,Yuichi Sato,Makoto Saegusa,Yukitoshi Satoh
Organizer
THE 21ST ANNUAL MEETING OF THE ASIAN SOCIETY FOR CARDIOVASCULAR AND THORACIC SURGERY
Place of Presentation
神戸