2012 Fiscal Year Research-status Report
急性期脳虚血に対する経脳室および経動脈冷却灌流による複合的局所脳低温療法の開発
Project/Area Number |
24592110
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鐙谷 武雄 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (80270726)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中山 若樹 北海道大学, 大学病院, 助教 (40421961)
寳金 清博 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90229146)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 脳梗塞 / 虚血再灌流 / 低脳温治療 |
Research Abstract |
1、虚血再灌流モデルの確立:糸栓子を用いたラットの虚血再灌流のモデルを確立した。Doccol社製の0.37㎜径シリコンコートナイロンモノフィラメントを外頚動脈より挿入し、中大脳動脈起始部を閉塞して虚血を作成した。2時間虚血の後に糸栓子を除去して再灌流状態を作成し、24時間再灌流での脳傷害を評価した。本方法にて、梗塞体積が体側半球の40±10%程度の比較的安定した梗塞を得ることができた(TTC染色での評価)。 2、経動脈的冷却法の確立:糸栓子除去後に内頚動脈内にチューブを挿入し、冷却灌流液を注入して虚血脳を冷却する方法である。今回の初回実験では、10℃の冷却生理食塩水6mlを15分間で注入した。この「10℃生食群」の他に、冷却灌流の効果を検証するために、37℃生理食塩水を投与する「37℃生食群」を設け、さらに、再灌流のみの「未治療群」を設けた。 3、経動脈的冷却法による低脳温達成度の評価:今回の初回実験では、「10℃生食群」において、注入中に脳温が37℃から34.5℃まで下がり、注入後30分後までは35℃台であり、「未治療群」が37℃台で経過したのに比べると低下していた。「37℃生食群」では36℃台で「10℃生食群」と「未治療群」の間に位置していた。 4、経動脈的冷却法による治療効果の判定1(神経症状の評価:18ポイントスコア):「未治療群」と「37℃生食群」は18ポイントスコアが10/18点程度であったが、「10℃生食群」では12/18点程度と神経症状が軽い傾向にあった。 5、経動脈的冷却法による治療効果の判定2(脳梗塞体積):各群の梗塞体積は「未治療群」42.5±8.1%、「37℃生食群」29.6±12.9%、「10℃生食群」12.8±12.0%であり、「未治療群」に対し「10℃生食群」で梗塞体積が明らかに縮小していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラットの糸栓子のよる虚血再灌流のモデルを作成するのに、今回Doccol社製のシリコンコートナイロンモノフィラメントを使用したが、一定の規格で作成されている製品であることより、自分達で作成する糸栓子より形状が均一で使いやすく、血管閉塞の確実性も高かった。このため、梗塞体積の大きさも対側半球の40±10%程度と安定しており、虚血再灌流モデルの確立は比較的順調に進んだ。 また、経動脈的冷却法については、糸栓子除去後に内頚動脈内にチューブを挿入し、冷却灌流液を注入する簡便な方法であることより、容易に初期実験を行うことができた。今回は、10℃の冷却生理食塩水6mlを15分間で注入したが、未治療群と比べて梗塞体積が半分以下になっており、条件を振る前から、治療効果としては期待以上の結果がでている。
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Strategy for Future Research Activity |
1、経動脈的冷却法の条件の検討:初回実験にて既に脳梗塞の縮小効果が認められたが、冷却灌流液の温度、投与量、投与速度などの条件を振ってみて、最大の効果を上げるための条件設定を行う。また、冷却処置中の体温、血圧、血液ガスなどをモニタリングして、さらに全身機能に及ぼす影響についても検討する。 2、経脳室的冷却法の確立:脳室内にチューブを留置し、そこより冷却した人工髄液を還流させて虚血脳を直接的に冷却する方法である。ラットの脳室穿刺については、過去の報告あるターゲットポイントを参考にて試験穿刺を行っている段階である。今後、注入のための小動物用の実験機器(アルゼット社ブレインインフュジョンキット)を用いて、安定して設定した量の冷却人工髄液を還流させることのできる実験系を完成させる予定である。 3、治療効果の判定:脳虚血再灌流障害に対する治療効果について、神経症状の評価、梗塞体積の他に、透過性亢進(エバンスブルーの脳組織内に漏出)、活性酸素産生(Dihydroethidium蛍光発色)、出血性変化、白血球集積状態、各種炎症関連分子、蛋白分解酵素の発現状態などにより検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
―未使用額0なので、記載必要なし。
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