Outline of Annual Research Achievements |
変形性膝関節症(OA)由来の疼痛と,炎症性サイトカインの関わりが指摘されており,様々な研究が行われている.特に,膝OAに対する抗炎症性サイトカイン療法(抗NGF抗体投与)の臨床治験が行われ,その除痛効果がオピオイドを凌駕したと報告され注目を集めている.しかしながら,作用部位を含め,その詳細な機序は不明なままである. そこで我々はラット膝OAモデルを用い,疼痛伝達経路における炎症性サイトカインの定量を行い,各部位における比較検討を行った.8週齢雄性SDラットを用い,右膝関節にMIA(モノヨードアセテート)を関節内注射(2mg)した群 (MIA群:n=16)と生食を関節内注射した群(生食群: n=16)を作成した.注射後4週にて, 右膝滑膜,脊髄(L2レベル),脳(海馬レベル)を摘出し,それぞれELISA法にて炎症性サイトカイン(IL-6,TNFα,NGF)の定量評価を行った.各部位における平均定量値をMIA群と生食群において統計学的手法を用いて検討した(有意差P<0.05). 滑膜におけるIL-6,TNFα,NGFすべての平均定量値は,生食群と比較しMIA群では有意に高値であった(P<0.05).一方で,脊髄,脳においてはIL-6,TNFα,NGFすべてに関して各群に有意差を認めなかった. 局所(滑膜)においては,炎症性サイトカインの上昇を認め,その疼痛への関与が示された.一方で,中枢(脊髄,脳)においては, 炎症性サイトカインの上昇は認めず, その影響は少ない可能性が示された.本研究により, 膝OAに関連する疼痛においては,局所での炎症性サイトカインが重要な働きを示しており,前述の抗サイトカイン療法に関しても局所に作用しその効果が発揮されている可能性が示唆された.
|