2012 Fiscal Year Research-status Report
培養骨髄細胞移植による骨組織再生技術―Runx2を活性化する薬剤の有用性の検討―
Project/Area Number |
24592230
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鬼頭 浩史 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (40291174)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 浩史 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60566975)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | Runx2 / ランソプラゾール / 骨形成促進 / drug repositioning |
Research Abstract |
Runx2は骨芽細胞分化のマスター遺伝子であるが、我々は網羅的な薬効スクリーニング法により、PPIであるランソプラゾールがRunx2プロモーター活性を上昇させるオフラベル効能があることを突き止めた。C3H10T1/2 cell、human mesenchymal stem cell、およびhuman osteosarcoma cellにおいて、ランソプラゾールは濃度依存性にRunx2のmRNA発現を上昇した。また、Runx2タンパクの上昇、さらにRunx2の核内移行も薬剤投与により活性化されることをWestern blottingにて確認した。さらに、Runx2のターゲット遺伝子であるアルカリフォスファターゼやオステリックスの発現も上昇させた。また、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞の培養時に骨芽細胞誘導因子(デキサメサゾン、βグリセロリン酸、アスコルビン酸)とともにランソプラゾールを添加したところ、アルカリフォスファターゼおよびアリザリンレッドでの染色性が著しく上昇し、骨芽細胞への分化が促進されていることを確認した。 次いで、ラット骨折モデルを作成し、ランソプラゾールの経口投与による骨折治癒促進効果を検討した。ランソプラゾールは骨折モデルにおけるnon-union、delayed unionの率を減少し、骨形態計測ではランソプラゾールの投与により類骨量と類骨面の増加が有意に示された。 細胞内シグナル伝達に関する研究では、ランソプラゾールは骨形成因子(BMP)のnoncanonical pathwayにおけるTAK1とp38のリン酸化を活性化することを確認した。さらには、ランソプラゾールがTAK1のポリユビキチン鎖の形成に関与することを示唆するデータを獲得した。 また、「骨形成促進剤及びその用途」として国内特許出願した(特願2011-185306)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各種細胞におけるランソプラゾールによる骨芽細胞分化誘導能を評価した ラット骨折モデルにおけるランソプラゾールの骨形成能を評価した。 ランソプラゾールによるRunx2活性化メカニズムを部分的に解明した。 以上のように、申請書類において記載した平成24年度における研究計画の大部分はすでに達成されている。
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Strategy for Future Research Activity |
動物実験に関しては、骨欠損モデルを作成して、同様に薬剤の骨形成促進効果を検討する。また臨床応用を考慮して、欠損部に人工骨と薬剤を混合して移植するstrategyを計画する。骨伝導能および誘導能を有する吸収性の人工骨の開発には、産学連携を視野に入れている。人工骨内で骨髄由来間葉系細胞をランソプラゾール添加下に培養し、ランソプラゾールの最適な添加時期および濃度を決定する。至適条件を決定したのち、細胞、薬剤を含む新規のハイブリッド型人工骨の開発を目指し、臨床応用に向けての医師主導型治験を企画する。 細胞内シグナル伝達研究をさらに推進し、ランソプラゾールの作用点を明らかにするとともに、ランソプラゾールによるRunx2活性化メカニズムを解明する。ランソプラゾールのオフラベル効能を分子レベルで明らかにすることにより、将来的には新たな骨形成促進作用を有する創薬の開発にもつながるものと思われる。 研究成果を国内外の学会(Orthopaedic Research Society、日本整形外科学会、日本整形外科基礎学会、日本骨代謝学会など)で発表するとともに、医学系学術雑誌へ投稿する。臨床研究の結果も同様に学会発表を行い、多くの研究者と意見を交換する。また、一般の方を対象にした講演会や公開講座の開催を行い、研究成果を広く発信する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
動物実験遂行のための実験動物およびその飼育に関わる飼料、基礎研究の遂行のための試薬、キット、実験器具などの消耗品に研究費を使用する。また、成果発表のための学会参加に関わる旅費、学会参加費、論文作成のための諸費用にも当該研究費を使用する予定である。
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