2012 Fiscal Year Research-status Report
軟骨疾患治療を目指した軟骨組織における血管形成制御メカニズムの解明
Project/Area Number |
24592254
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石井 健 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (00222943)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平田 真 東京大学, 医学部附属病院, 届出診療医 (50401071)
中村 耕三 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), その他部局等, 自立支援局長 (60126133)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 血管形成 |
Research Abstract |
初年度は以下の検討を行った。 1)成長板軟骨および関節軟骨における血管形成関連因子発現パターンの比較検討:マウス成長板軟骨およびマウス軟骨系細胞株ATDC5細胞培養において既知の血管形成関連因子としてChM-I、TIMPファミリーなどの血管形成抑制因子およびVegf、MMPファミリーなどの血管形成促進因子についての発現を確認した。ChM-Iは主に増殖軟骨層で発現が強い傾向があり、TIMPファミリーの内、TIMP1の発現を胎生期の脊椎で確認し、TIMP1,2,3の発現をATDC5において確認した。TIMP1は四肢長管骨ではあまり発現しておらず、TIMP4は成長板軟骨、ATDC5何れの系においても発現を確認できなかった。さらに血管形成促進因子としてVegfおよびMMPファミリーの発現を確認したところ、これらの因子は主に肥大軟骨細胞層で発現が確認され、ATDC5においても分化に伴い一部の因子の発現は促進されていた。 2)軟骨肉腫および変形性関節症軟骨における血管形成関連因子発現確認および臨床像との比較:初年度は主に軟骨肉腫について検討を行った。これまでに蓄積された軟骨肉腫症例材料及び新規受診症例からの凍結保存組織、パラフィン包埋ブロックあるいは組織切片などを用いて血管形成関連因子の発現を確認した。また臨床像との相関を解析するためデータベースを作製し、症例毎に組織採取時の臨床情報を詳細に記録した。臨床情報として①年齢、性別、②病期、③組織学的悪性度(Grade 分類)、④生命予後(生 存年月数、CDF, NED, AWD, DOD 評価)、⑤局所再発の有無(切除縁評価、局所再発までの時間)、⑥転移の有無(転移箇所、転移形態)の各項目について分類した。これらの項目と血管形成関連因子の発現パターンとの相関について検討を行ったが、有意に相関を示すような因子、項目は同定できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では無血管組織である関節軟骨と血管侵入を促し骨組織へと置換されていく成長板軟骨という血管形成において相反する2 つの作用を有する軟骨組織に着目し、血管形成関連因子の発現パターンおよびその制御メカニズムの解析を行う。さらに血管形成の関与が知られる変形性関節症、軟骨肉腫など各種軟骨関連疾患における血管新生関連因子の機能をin vitro、in vivoの複数の実験系およびバイオインフォマティクスを駆使して解析し、各種軟骨関連疾患の画期的な原因療法の確立および軟骨再生の創薬・技術開発に応用するための基礎検討を行うことを目的とした。 今年度はこの目的達成のため以下の検討項目について研究を進めた。 1)成長板軟骨および関節軟骨における血管形成関連因子発現パターンの比較検討 2)軟骨肉腫および変形性関節症軟骨における血管形成関連因子発現確認および臨床像との比較 1)については目的の組織、細胞培養系について各種因子の発現パターンを概ね確認することができた。2)についても軟骨肉腫検体における血管形成関連因子の発現を一部で確認し、臨床情報のデータベースの作成、その相関について解析することができた。この点において本研究は初年度としてはおおむね順調に進展していると判断した。 臨床検体数に限りがありこれまでの所は何らかの臨床像と血管形成関連因子との間に有意な相関が得られていないが、これについても当初の計画通り2年目以降も引き続きデータの蓄積を行い、解析を継続する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は以下の3つのサブテーマについての解析を行い、初年度の解析を引き継ぎつつ、最終年度に向けたデータの積み増しを行う。 2)軟骨肉腫および変形性関節症軟骨における血管形成関連因子発現確認および臨床像との比較:初年度に引き続き、新規受診軟骨肉腫症例より得られた組織を用いて、血管形成関連因子の発現を評価する。さらに臨床像との相関を確認するためデータベースへの記録も継続する。また、変形性関節症についての解析もスタートする。具体的にはマウス変形性膝関節症モデルを作出し、経時的に各変性段階における血管形成関連因子の発現を確認する。また人工膝関節全置換術時に出る軟骨組織についても同様にその発現を確認する。さらに同様に臨床像との相関を確認するためにデータベースを作製し、症例毎に組織採取時の臨床情報を詳細に記録する。これらの検討の中で臨床像との相関が示唆された因子については、我々が平行して遂行しているROAD studyのデータベースを用いて、GWASによる遺伝多型と変形性関節症との相関についての検討も行う。 3)新規血管形成関連因子の同定:初年度はマウス初代培養軟骨細胞より得られたmRNAサンプルを用いてDNAマイクロアレイを行い、網羅的に遺伝子発現プロファイルを検討する。これをパスウェイ解析と組み合わせ、既知の血管形成関連シグナルとの相関が示唆される因子について、実際に強制発現ベクターおよびshRNAによる発現抑制ベクターを作成してgain- or loss-of-functionの実験系を組み、既知の血管形成関連因子への影響を見る。 4)既存の血管形成阻害分子投与による軟骨肉腫、変形性関節症進行への影響の検討:既知の入手可能な各種血管形成阻害分子について軟骨肉種細胞株や実際の症例より単離培養できた軟骨肉腫細胞に対してこれらの分子を添加し、その増殖能、遊走能、浸潤能を評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度はDNA マイクロアレイを予定しているが、Total RNA をサンプリングした後にマイクロアレイ解析を外注するための費用・およびそれに関わる諸経費を計上した。また、物品費としてプラスミドDNA の作成と精製の試薬キット、シークエンス試薬、Real Time PCR 関連試薬、遺伝子導入試薬、免疫染色キット、各種抗体、その他細胞培養、大腸菌培養用の培地・培養液などの試薬消耗品購入のための費用を計上している。また市販細胞株とマウスの購入費の他に細胞培養と動物飼育に伴って必要となる培地、飼料も消耗品として計上した。成果発表として国内では日本整形外科学会基礎学術集会、日本骨代謝学会、日本軟骨代謝学会の3 学会、外国ではアメリカ骨代謝学会(ASBMR)、国際変形性関節症学会(OARSI)の2 学会のいずれかの学術集会での発表を予定し、そのための海外及び国内渡航費用を計上している。
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[Journal Article] Notch signaling in chondrocytes modulates endochondral ossification and osteoarthritis development.2013
Author(s)
Hosaka Y, Saito T, Sugita S, Hikata T, Kobayashi H, Fukai A, Taniguchi Y, Hirata M, Akiyama H, Chung UI, Kawaguchi H.
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Journal Title
Proc Natl Acad Sci U S A
Volume: 110
Pages: 1875-80
DOI
Peer Reviewed
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