2013 Fiscal Year Research-status Report
軟骨疾患治療を目指した軟骨組織における血管形成制御メカニズムの解明
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24592254
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石井 健 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (00222943)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平田 真 東京大学, 医学部附属病院, その他 (50401071)
中村 耕三 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), その他部局等, 総長 (60126133)
篠田 裕介 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (80456110)
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Keywords | 血管形成 / 変形性関節症 / 軟骨肉腫 |
Research Abstract |
2年目となる平成25年度は以下サブテーマについての研究を行った。 2)軟骨肉腫および変形性関節症軟骨における血管形成関連因子発現確認および臨床像との比較:引き続き新規受診症例の腫瘍組織を用いて血管形成関連因子の発現を確認し、これら新規症例についても臨床情報を記録した。前年度と同様に積み増したデータを含め、これらの臨床データと血管形成関連因子の発現パターンとの相関について検討を行ったが、有意に相関を示すような因子は同定できなかった。またマウス変形性膝関節症モデルを作出し、血管形成抑制因子および血管形成促進因子についての発現を確認した。Timp-1,2,3,4、Mmp1,3,9,13、Vegfaが変性軟骨において発現上昇していた。また人工膝関節全置換術時に出る軟骨組織についても同様に免疫化学染色を行い、マウスの変形性膝関節症と同様の因子の上昇を認めた。我々が平行して遂行しているROAD studyのデータベースを用いて、GWASによるこれらの因子の遺伝多型と変形性関節症との相関の検討も行ったが、変形性関節症との有意な相関を示す遺伝多型は認めなかった。 3)新規血管形成関連因子の同定:マウス初代培養軟骨細胞より採取したmRNAサンプルを用いてDNAマイクロアレイを行い、既知の血管形成関連シグナルとの相関が示唆される因子として、EGFシグナル、Wntシグナルに関わる因子を同定した。これらのいくつかの因子につき発現ベクターを作成し、既知の血管形成関連因子の発現変化を確認したところ、EGFシグナル関連因子の一つでVegfaが強く誘導されることを確認した。 4)既存の血管形成阻害分子投与による軟骨肉腫、変形性関節症進行への影響の検討:血管形成阻害分子としてSunitinibを用いて軟骨肉種細胞株SW1353および軟骨肉腫細胞に対してこれらの分子を添加し、その増殖能、遊走能、浸潤能を評価した。本阻害剤を用いて増殖能が抑制されることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各種軟骨関連疾患の画期的な原因療法の確立および軟骨再生の創薬・技術開発に応用するための基礎検討を行うという目的達成のため、本年度は以下の検討項目について研究を進めた。 2)軟骨肉腫および変形性関節症軟骨における血管形成関連因子発現確認および臨床像との比較:これについてはマウス変形性膝関節症における血管形成関連因子の発現を確認することができた。また、軟骨肉腫症例、変形性関節症症例のデータベース構築が進んでいる。これまでの所、有意な因子を同定できてはいないが、血管形成関連因子と軟骨肉腫臨床データとの相関検討、GWASによる遺伝多型と変形性関節症との相関検討も進んでいる。 3)新規血管形成関連因子の同定:これについても本年度の予定通りDNAマイクロアレイを行い、新規血管形成関連因子を同定の上、その機能解析を進めることに成功した。同因子を導入した軟骨肉腫細胞をヌードマウスに移植する実験に関しては、移植を行ってはいるがこれまでの所腫瘍形成を確認するには至っていない。軟骨肉腫の異種移植モデルにおいて、腫瘍形成が明らかになるまでは数か月単位での時間を要することもあり、次年度にかけて検討を行っていくこととする。 4)既存の血管形成阻害分子投与による軟骨肉腫、変形性関節症進行への影響の検討:血管形成阻害分子としてSunitinibを用いた検討を行い、軟骨肉腫細胞に対して増殖抑制効果があることが確認できた。 以上、一部達成しきれていない検討項目があるものの、おおむね順調に研究計画は推進できているものと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度が最終年度となる。総括すべく研究計画書に従い、以下のサブテーマについて継続的な研究を行う。 2)軟骨肉腫および変形性関節症軟骨における血管形成関連因子発現確認および臨床像との比較:現在までの所、臨床データと有意に相関を示す血管形成関連因子を同定することは出来ていない。これは各種因子の発現量のばらつきが症例ごとに大きく、それに比し症例数が少ないことによる。できるだけ症例数を増やしデータを積み増すことが重要である。引き続き新規受診軟骨肉腫症例より得られた組織を用いて、血管形成関連因子の発現を評価し、臨床像との相関を確認するためデータベースへの記録も継続する。 3)新規血管形成関連因子の同定:軟骨の血管形成において重要な役割を担っているVEGF-Aのプロモーターについての解析を行う。種々の生物種間でプロモーター領域の比較マッピングを行い、相同性の高い領域を確認する。そのプロモーター領域に結合しうる遺伝子配列をデータベースを用いて網羅的に検索する。候補となった転写因子について発現ベクターを作成し、ルシフェラーゼアッセイによるVEGF-Aプロモーターの転写活性への影響を確認する。実際に転写活性が大きく変化した因子については、各種ベクターにその遺伝子もしくはその遺伝子特異的なsiRNAを組み込み、既知の血管形成関連因子への影響を見るとともに、これらを導入した細胞をヌードマウスに移植し、周囲の血管形成の程度を組織学的に評価する。 4)既存の血管形成阻害分子投与による軟骨肉腫、変形性関節症進行への影響の検討 軟骨肉腫細胞株を移植したヌードマウスに増殖抑制効果の確認できたsunitinibの投与を行い、移植局所の腫瘍増大と転移の発生への影響を観察する。変形性関節症についてはマウス変形性膝関節症モデルに対して、これら分子を全身投与もしくは関節内投与することにより、関節変性への影響を確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
軟骨細胞肉腫のヌードマウス移植モデルにおいて腫瘍の形成を待っていたが、残念ながら年度内に腫瘍形成を得られなかった。このための試薬、消耗品のための経費を用意していたが、使用不可能であった。 現在、本年度に移植を行った腫瘍形成待機中の移植モデルにおいて腫瘍形成を認めた後、その解析のための経費にあてる予定である。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] A novel disease-modifying osteoarthritis drug candidate targeting Runx1.2013
Author(s)
Yano F, Hojo H, Ohba S, Fukai A, Hosaka Y, Ikeda T, Saito T, Hirata M, Chikuda H, Takato T, Kawaguchi H, Chung UI.
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Journal Title
Ann Rheum Dis.
Volume: 72
Pages: 748-53
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Notch signaling in chondrocytes modulates endochondral ossification and osteoarthritis development.2013
Author(s)
Hosaka Y, Saito T, Sugita S, Hikata T, Kobayashi H, Fukai A, Taniguchi Y, Hirata M, Akiyama H, Chung UI, Kawaguchi H.
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Journal Title
Proc Natl Acad Sci U S A
Volume: 110
Pages: 1875-80
DOI
Peer Reviewed
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