2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24592324
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山本 純偉 筑波大学, 医学医療系, 講師 (50402376)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 扁桃体中心核 / ノルアドレナリン / GABA |
Research Abstract |
背景:痛みやストレスなどの有害事象は負情動を形成し、内分泌・自律機能変化や気分変調などの情動応答を引き起こす。扁桃体中心核は負の情動の形成に重要な役割を果たしている。扁桃体中心核(CeA)外包亜核・外側亜核に入った情報は出力核であるCeA内側亜核から中脳水道周囲灰白質や迷走神経背側複合体などに伝えられ、すくみ行動や自律機能変化などの情動関連応答を誘発する。 目的:ストレスホルモンのひとつであるノルアドレナリン(NA)は急性痛・慢性痛下に脳内で放出が亢進する。NAのCeAに与える影響について調べた。 方法:4-8週齢C57BL/6Jマウスの急性脳スライス標本を作製し、内側亜核細胞からホールセルパッチクランプ法で膜電流を記録した。CeAはそのほとんどがGABA作動性ニューロンであることから、薬理学的にGABAA受容体を介する自発性抑制性シナプス後電流を単離記録し、NAを灌流投与しその振幅と頻度の変化を解析した。 結果:NA (50 nM) は、CeA内側核ニューロンの自発性抑制性シナプス後電流の振幅 (118%±63%, n=12, P<0.05)と頻度(143%±70%, n=12, P<0.05)を有意に増加した。この作用はβアドレナリン受容体遮断薬のプロプラノロール40 μMの前投与により消失し、ナトリウムチャネル遮断薬テトロドトキシン1μM存在下には観察されなかった。 考察:NAがβ受容体を介して内側亜核の抑制性神経伝達を増強させることが明らかになった。また、この作用がテトロドトキシンによってブロックされたことから、内側亜核に入力する外包亜核や外側亜核のニューロンがβ受容体を介して活性化されたことによることが示唆された。内側亜核出力ニューロンのほとんどが抑制性ニューロンであることから、抑制性ニューロンが抑制されることにより、情動反応が増強される可能性が示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、麻酔薬が負情動を形成する扁桃体中心核の抑制性神経回路にどのような作用をするのかを明らかにすることである。扁桃体中心核では多くのニューロンがGABA作動性の抑制性ニューロンであることが分かっており、麻酔薬の多くがGABA受容体に作用することから、propofolやsevofluraneなどの麻酔薬がCeAのニューロンに大きな影響を与えていることが予想される。当初、麻酔薬そのものの作用を初年度で調べる予定であったが、扁桃体中心核内神経伝達そのものについても、いまだ明らかでないことが多いことから、まず、侵襲・ストレスが自体が扁桃体中心核(CeA)に与える影響を調べることとした。 ノルアドレナリン(NA)はストレスホルモンの一種で痛みによって脳内でも増加することがわかっている。また、扁桃体中心核にはアドレナリン受容体が発現していることから、NAがCeA内の神経伝達にどのような影響を与えるのかを調べた。 実験により、NAが扁桃体中心核内側亜核(CeM)への抑制性神経入力を劇的に増強させることが明らかになった。過去にCeAではノルアドレナリンがα2アドレナリン受容体を介して、入力を増強しているという報告があるが、我々の研究ではα2アドレナリン受容体拮抗薬であり、鎮静薬として臨床でも用いられている、デクスメデトミジンの投与対しては、CeMへの抑制性神経伝達には変化が観察されなかった。一方、NAはCeAに発現しているβアドレナリン受容体を介して直接、抑制性入力を増強することを電気生理学的手法を用いて明らかにするとともに、Caイメージング法でも確認した。 扁桃体中心核外側亜核に入った刺激は最終的にはCeMから出力される。CeMのニューロンはほとんどが抑制であることから、抑制性ニューロンが抑制されることにより、情動反応が増強される可能性が示唆される。
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Strategy for Future Research Activity |
今回、我々の研究により、ノルアドレナリン(NA)が扁桃体中心核内側亜核(CeM)への抑制性入力を扁桃体中心核(扁桃体中心核外側亜核(CeL)およびCeM)に発現するβアドレナリン受容体を介して、直接増強することを明らかにした。 扁桃体外側核や扁桃体基底核からの入力は主にCeCや扁桃体中心核外側外包部(CeC)に入る。CeLおよびCeCニューロンはCeMニューロンとシナプスを形成し、最終的にCeMニューロンが他の神経核に投射している。CeCは扁桃体中心核(CeA)のニューロンはCeC/CeL、CeMともにそのほとんどがGABA作動性抑制性ニューロンである。麻酔薬の多くがGABA受容体に作用することから、propofolやsevofluraneなどの麻酔薬がCeAのニューロンに大きな影響を与えていることが予想される。 本年度は、GABA受容体を介して麻酔作用を発揮する麻酔薬であるミダゾラムを投与することで、我々が明らかにした、NA投与によるCeMへの抑制性入力の増強がどのように変化するのかを調べたい。 昨年度はNAによるCeL神経細胞の活性化をCaイメージング法でも確認したが、電気生理学的手法でも活性化しているかどうかを確認していない。また、Caイメージング法で確認された活性化にはいくつかパターンがあったので、本年度は、Caインジケーターを導入した細胞にパッチクランプを行い、Caイメージングで確認された神経細胞の活性化を電気生理学手法で確認することを行いたい。 さらに、昨年度はCeMのニューロンの自発性抑制性シナプス後電流のみを観察したが、扁桃体外側核や扁桃体基底核、結合腕傍核などCeM外からの入力がどのような変化をするのかを観察するため、CeAへの入力路を電気刺激し刺激誘発性抑制性シナプス後電流の変化を麻酔薬投与下に観察したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当しない
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