2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24592324
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山本 純偉 筑波大学, 医学医療系, 講師 (50402376)
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Keywords | 扁桃体中心核 / ノルアドレナリン / GABA |
Research Abstract |
平成24年度、ノルアドレナリン(NA)がβ受容体を介して扁桃体中心核内側亜核の抑制性神経伝達を増強させることを明らかにした。内側亜核の抑制性神経伝達が増強したのは、外側亜核の神経細胞が興奮したからではないかと考え、カルシウムイメージング法を用いてNAが外側亜核の神経細胞内のCaイオン濃度を上昇させることを確認した。カルシウムイメージングはCaイオンインジケーターのFluo-4を用い共焦点レーザー顕微鏡で観察した。NAによるCaイオン濃度の上昇はテトロドトキシンではCaイオンフリー灌流液では抑制されなかったが、sarcoplasmic reticulum calcium-ATPase inhibitorのcyclopiazonic acidによって完全に抑制された。このことから、NAによるCa2+濃度の上昇にはGq-共役型の α-1 受容体の関与していることが示唆された。そこでα-1 受容体作動薬のPhenylephrine (10 μM)を灌流投与したところ、内側亜核での自発性抑制性シナプス後電流の頻度が有意に増加した(163 ± 18% of before application; n=7, P=0.013)が、振幅は増加したものの有意差はなかった(147 ± 27% of before application; n=7, P=0.129)。さらに、α-1 受容体拮抗薬のPrazosin (10 μM)の投与により、NAによる自発性抑制性シナプス後電流増加作用が頻度 (113% ± 22%, n=7, P=0.573)・振幅 (105% ± 8%, n=7, P=0.529)ともに抑制された。これらの結果から、NAによるCeA内側亜核の抑制性神経伝達を増強にはα-1 受容体を介した外包亜核・外側亜核の神経興奮と、責任細胞は不明だが、β受容体を介した作用が関係していることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで扁桃体中心核の抑制性神経回路、特に内側亜核への入力を調べた研究はほとんどない。そのため、正常状態での内側亜核への入力がどのようになっているか、ストレスホルモンのノルアドレナリンによって、その入力がどのように変化するのかについても、報告がなかった。そのため、麻酔薬の影響を見る前に、まず、正常マウスの神経細胞で、内側亜核への入力がノルアドレナリンによって、どのようになるのかを明らかにする必要があった。これまでの研究により、正常マウスの急性脳スライスを使用した扁桃体中心核内側亜核への抑制性シナプス伝達が、ノルアドレナリンによってどのように変化するのか、また、それにはアドレナリン受容体のどのサブタイプが関与しているかが、明らかになった。さらに、扁桃体中心核外包亜核・外側亜核の興奮にはα-1 受容体が関与し、β受容体を介した、抑制性シナプス伝達の増強作用には外包亜核・外側亜核以外の細胞の関与が考えられ、アドレナリン受容体のサブタイプの違いにより、入力修飾が異なることが示唆された。 正常マウスでの解析がほぼ終わったことで、次に疼痛マウスや、麻酔薬による修飾の比較解析を行うための基礎のデーターがそろったことになる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度、25年度の研究成果により、ノルアドレナリンが扁桃体中心核内側亜核へのGABAA受容体を介する自発性抑制性シナプス後電流の頻度、振幅ともに増強させること。そして、それには扁桃体中心核外包亜核・外側亜核の神経細胞がα1受容体を介して興奮することと、責任神経細胞は不明だが、β受容体を介した神経細胞の興奮が関与していることが明らかになった。α2受容体の関与はデクスメデトミジンのデーターにより少ないことがわかった。 正常組織での解析がほぼ終わったため、疼痛モデルを用いて、疼痛によりノルアドレナリンによる扁桃体中心核への抑制性神経入力がどのように変化しているかを明らかにする。動物の疼痛もモデルにはすでにいくつかのモデルが発表されているが、今までのデーターがマウスから得られたデーターであり、同じマウスを用いた場合、モデルの作成が容易であることからホルマリン注入モデルを使用する予定である。 疼痛モデルでの解析が終わった場合には、疼痛モデルへの薬剤投与による変化を解析する予定である。
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