2013 Fiscal Year Research-status Report
硫化水素による実験的肺高血圧治療と内因性硫化水素産生系の解析
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24592333
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
丸山 一男 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20181828)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澤田 博文 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30362354)
張 尓泉 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30456727)
丸山 淳子 鈴鹿医療科学大学, 医用工学部, 教授 (50263017)
三谷 義英 三重大学, 医学部附属病院, 准教授 (60273380)
横地 歩 三重大学, 医学部附属病院, 講師 (60359768)
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Keywords | 肺高血圧 / 硫化水素 |
Research Abstract |
我々はこれまで、内因性NOを高める操作は肺高血圧の発症を抑制することを報告してきた。 NOの標的物質として、H2Sの存在はすでに報告されているが、肺動脈や肺高血圧でのH2Sの動態は不明である。NOドナーであるSNP(構造上NOを含み、NOを放出する)存在下にラットの摘出腸間膜動脈や大動脈を培養すると、H2S産生が増加した(Zhao W, et al. EMBO J 20: 6008-16, 2001)。つまり、NOはH2S産生を高める。これまで報告されてきたNOの肺高血圧や肺高血圧血管に対する作用はH2S産生を介する可能性もあると言える。硫化水素ナトリウム(NaHS)は、体内に投与すると分解されH2Sを放出するH2Sドナーである。硫化水素(H2S)は血管内皮細胞などで産生される生理活性物質でNOと共通の生理作用を持つ。我々は慢性低酸素暴露肺高血圧(CHPH)ラットの肺高血圧血管病変に対するNaHS投与による抑制効果について調べた。SDラットを低酸素暴露(CH)チャンバー(1/2気圧、10%酸素)で14日間飼育し、3群に分けた。(1)空気下飼育群(Air/Veh群) (2) CH+NaHS非投与群(CH/Veh群) (3) CH+NaHS投与群(CH/H2S(+)群)。 ①NaHSをCH 8~15日目の7日間3mg/kg/日腹腔内投与、14日目でカテーテルを挿入し、15日目覚醒下で血圧を測定した。結果として、H2S投与によりmPAPとRVHに影響はなかった。今回の実験条件ではNaHSの腹腔内投与でCHPHに対する抑制効果は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の結果は、肺高血圧の発症抑制作用を検討する計画であり、NaHSの1日1回の単回投与では、肺高血圧の抑制効果は明らかではなかった。本年度は、投与法を変更し、低酸素曝露開始7日後からNaHSの投与を開始し、肺高血圧に対する治療効果を検討した。今回の投与期間、投与速度では、明らかな抑制効果は認められなかった。これまでの結果は、NaHSの投与法で肺高血圧抑制効果が認められない投与条件が明らかになりつつあると言える。 今後は、更に濃度を変更するとともに、投与法を持続法に変更し、さらに別の肺高血圧モデルでの検討を加えることにより、NaHSの肺高血圧発症への影響が明らかになると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
NaHSの投与量を持続投与に変更した実験を行う。ALZETポンプで20、100、50μg/時各濃度でCH 12~15日目の3日間腹腔内持続投与する。 慢性低酸素曝露とは異なる、モノクロタリン誘起肺高血圧モデルを用いて、NaHSによる肺高血圧発症抑制効果を調べる。 効果を認めた、H2S投与法・濃度において、肺組織の分子生物学的解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画では、硫化水素が肺高血圧発症を抑制する投与条件を明確にし、その投与法において、肺組織の一酸化窒素合成酵素、硫化水素合成酵素などのタンパクやmRNA解析、免疫組織染色を行う計画であったが、今年度までに、肺高血圧の発症を明らかに抑制する投与法が、確定していない。そのため、これらに分子生物学的検討を行う試薬うキットの購入を本年度に行わなかったため、次年度の使用が発生した。しかし、効果のない投与法は、明らかとなりつつあるので研究は進行している。 これまでの成果として、効果のない投与法は、明らかとなりつつあるので、次年度はさらに投与法を変更し、さらに異なる肺高血圧モデルでのH2Sによる肺高血圧抑制効果と、肺組織における分子生物学的検討をおこなう。ラットの購入、分子生物学的検討のための試薬、消耗品などの購入を行う。
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