2012 Fiscal Year Research-status Report
オートファジーの制御は前立腺癌治療のブレイクスルーとなりえるか
Project/Area Number |
24592383
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
伊藤 秀明 福井大学, 医学部, 助教 (00345620)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
多賀 峰克 福井大学, 医学部附属病院, 医員 (00529349)
横山 修 福井大学, 医学部, 教授 (90242552)
土山 克樹 福井大学, 医学部附属病院, 医員 (90464073)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 腫瘍学 |
Research Abstract |
アンドロゲン感受性前立腺癌細胞株LNCaPおよび非感受性前立腺癌細胞株PC3をアンドロゲン除去培養液にて培養を行うとLNCaPのみに増殖抑制効果が認められた。GFP-LC3を導入した細胞を用いたLC3凝集の確認を行うとアンドロゲン除去によりLNCaPにのみオートファジーが誘導されていることが確認された。研究計画ではアンドロゲン除去により誘導されたオートファジーを、オートファジー抑制剤を用いて抑制することでの治療効果改善を検討する予定であったが、十分な効果が認められなかった。 そこで、オートファジーの誘導に深くかかわる蛋白であるmTORに対する抑制剤であるテムシロリムスを投与し、オートファジーの誘導と細胞増殖抑制効果を検討することとした。まずテムシロリムスの投与によりいずれの細胞株に対しても用量依存的に増殖抑制効果を示すことを確認した。ウェスタンブロッティング法によるLC3の発現、caspase-3の発現を検討することによりテムシロリムスによりオートファジーが誘導され、アポトーシスは高濃度においても誘導されないことを確認した。続いて臨床の場でアンドロゲン非感受性前立腺癌に対して使用されるドセタキセルを用いて同様の検討を行った。増殖抑制効果はいずれの細胞株においても用量依存的に認められた。さらに、低用量ではオートファジーが、高用量ではアポトーシスが誘導されることが示された。 この2剤を併用することで細胞増殖抑制効果が単剤の場合と比較して増強されていた。 概要は日本泌尿器科学会総会、日本癌学会総会にて報告予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オートファジーの制御は前立腺癌治療のブレイクスルーとなりえるか」というテーマに対して、当初アンドロゲン除去により培養細胞に誘導されるオートファジーの制御を計画した。残念ながら、これまでに報告されている他の治療により誘導されるオートファジーを抑制することによりアポトーシスが誘導され、増殖抑制効果が増強したとする報告と異なり、アンドロゲン除去培養と同時にオートファジー抑制を行っても細胞増殖抑制効果の増強はわずかで、アポトーシスの誘導は認められなかった。 新たにオートファジー誘導に深くかかわるmTORを抑制することでオートファジーを誘導するモデルを作成した。このmTOR抑制剤は現在、他の癌腫においては臨床応用されているものである。さらに実臨床で前立腺癌に対して使用されている抗癌剤ドセタキセルは低用量でオートファジーを、高用量ではアポトーシスを誘導することが示され、新しい知見と思われる。 現在はこれら2剤の併用によりオートファジー、アポトーシスの誘導に関する興味深い知見がえられつつあり、達成度はおおむね順調であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
テムシロリムス、ドセタキセルの併用により増殖抑制効果が増強することが示され、現在併用によるオートファジー、アポトーシス誘導の詳細を解析中である。今後は併用スケジュールの違い(どちらかを先行させる投与法がよいのか、あるいは同時投与がよいのか)を検討予定である。投与スケジュールの違いにより増殖抑制効果にも違いが認められるようであれば、オートファジー、アポトーシス誘導の観点から考察し、そのメカニズムに関する基礎研究の追加を行いたい。 2剤の併用による効果増強により、実臨床的にはそれぞれの薬剤の投与量を減量することにより副作用を軽減させる効果が期待される。培養細胞を用いた研究結果に基づき、マウス皮下移植モデルを用いてin vivoでの効果、副作用、オートファジー・アポトーシス誘導につき検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
各種薬剤や抗体などのほかに、マウスの購入にあてる。 この他、各学会での報告に際する出張費に充てる。
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