2012 Fiscal Year Research-status Report
膀胱癌に対するSteroid Sulfataseの作用機序の解明
Project/Area Number |
24592406
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
玉田 聡 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (20382179)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
魏 民 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70336783)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 膀胱がん / 浸潤 |
Research Abstract |
膀胱癌の進展過程において、androgen及びその前駆体あるいは代謝産物、またandrogen receptorなどを介したhormone signalingが膀胱癌の発生あるいは進展に関与していると考えられる。我々はアンドロゲン生合成において重要な酵素であるsteroid sulfatase(STS)が膀胱癌の進展に重要な役割を果たしているとの仮説を立て、本研究でSTSの発現および機能解析を行っている。 まず、2000年から2009年に大阪市立大学医学部附属病院で膀胱がんに対する根治的膀胱全摘除術を施行した症例を68例に増やし、STSの1次抗体を用いた免疫染色を行い、膀胱癌の病理学的深達度および組織学的異型度とSTSの発現に関して正の相関を得た。さらに、無再発生存率や癌特異生存率に関しても、STSの発現は有意な予後予測因子であることが明らかとなった。多変量解析では、癌特異生存率に関してSTSは独立した予後予測因子であることが明らかとなった。次に、膀胱癌細胞株(TCCSUP, T24, UMUC3, RT4, 5637, HT1376)のmRNAおよび蛋白レベルでのSTSの発現量を測定し、各細胞株の浸潤能とSTSの発現は正に相関する傾向が認められた。そこで、STSのinhibitorである667 coumateによる毒性、浸潤およびアポトーシスに対する効果を確認した。相対的に発現量の高かったTCCSUP、T24に対して667 coumateを投与して細胞増殖能を評価したところ、TCCSUPでは濃度依存的に抑制効果が認められたが、T24では有意な増殖抑制効果を認めなかった。 これまでの実験結果から、STSは膀胱がんの進展、特に浸潤、転移および予後に関して重要な分子であることが示唆されたため今後さらに解析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験開始時の仮説の通り、膀胱全摘標本を用いた免疫組織染色(68例)により、STSの発現は病理学的深達度および組織学的深達度と有意に相関することが明らかになり、さらに癌特異生存率に関して、独立した予後予測因子であることを示唆する結果が得られた。 さらに細胞株を用いたSTSの機能解析もこれまでに比較的順調に進んでおり、STSの膀胱がん浸潤過程における実験に関して仮説を支持する結果が一部得られている。STS inhibitorの細胞増殖に及ぼす影響をTCCSUPおよびT24の膀胱癌細胞を用いて検討したところ、TCCSUPでは抑制効果が認められたがT24ではその効果は認めなかった。今後の遊走、浸潤能を評価する際に、この結果の違いは非常に有用であるため、RNAiを用いた解析を加え、表現型の相違の原因を証明する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度では予定していた細胞株の実験の一部は遂行することができなかったため、次年度に使用する予定の研究費が生じているが、以下に記載する研究には当初予定していた計画に加え、新たに計画した内容が含まれているため、当該研究費はこれに充当する。 今年度の研究内容として、まず昨年に引き続き、細胞株を用いた解析によりSTSの膀胱がん浸潤における役割の解明を進めていく。STSがアンドロゲンレセプターシグナルを介して膀胱癌細胞の増殖に影響しているかを評価するため、各々の細胞株におけるアンドロゲンレセプターの発現評価を行う予定である。STSのinhibitorである667 coumateの投与やSTS特異的なsiRNAによるノックダウンにより、増殖、遊走、浸潤といった、膀胱がん細胞の表現型にもっとも重要であると考えられている因子についての解析を行い、inhibitorとRNAiのどちらが解析に有効な手段か決定する。さらに、STSの下流遺伝子の特定のために、cDNAマイクロアレイによる解析を試みる。さらに、膀胱がん初期の進展に関わる因子であるかを検討するため、筋層非浸潤性膀胱がんに対して経尿道的膀胱腫瘍切除術が行われたFFPEを用い、STS免疫染色を追加する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の実験を行うために、667 coumateおよびsiRNA、標的下流遺伝子の発現評価に用いる一次抗体およびプライマー、その他細胞培養に関わる試薬が必要である。また、cDNAに用いるアフィメトリクス社のGeneChipにかかる費用および追加の免疫染色を行うに当たりSTS1次抗体が必要である。 これらの結果を第102回泌尿器科学会(神戸)ならびにAUA (American Urological Association,フロリダ)で発表する予定である。
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Research Products
(29 results)