2012 Fiscal Year Research-status Report
海綿体再生治療における皮下脂肪幹細胞産生パラクライン因子の機能的解析
Project/Area Number |
24592423
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西松 寛明 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (60251295)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 政夫 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (00447418)
野宮 明 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (30372379)
鈴木 越 聖マリアンナ医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40313134)
平田 恭信 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (70167609)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 脂肪幹細胞 / 海綿体再生 |
Research Abstract |
研究の目的:前年度までの科研費研究で、我々はラットから皮下脂肪由来幹細胞;adipose tissue-derived stem cells (ASC)を安定的に誘導することに成功し、ASCが血管再生、海綿体構造再構築、勃起機能改善に有効であることを見出した。本研究ではこれを延長し、以下の2点を目的とする。ASCの作用機序の更なる解明のためにパラクライン因子を網羅的に解析し、Adrenomedullin以外の血管新生ならびに神経再生を効率的に促進するサイトカインを同定する。研究実施計画:1.既存勃起障害モデルでの勃起機能解析VEGF、Ang1、AM各アデノベクターの組み合わせ、microRNAの投与による勃起機能や臓器再生機能の評価を開始。各種アデノウイルスベクターの作成を行い、糖尿病ラットモデルの陰茎海綿体に感染させた。また二剤同時の感染モデルも作成して海綿体構造の再生様式、内皮機能の改善効果について海綿体内圧の測定を行った。2.幹細胞による分化誘導細胞の機能的解析VE-cadherin、Total eNOS、phospho eNOSのWestern blotによる定量比較。GC活性・cGMP産生の評価のみならず、海綿体柱を構成するTypeIコラーゲンの生成などにも注目してウエスタンでタンパク量を評価した。eNOS, bNOS蛋白レベルでの評価3.幹細胞のparacrine effectの解析- Microarray結果からの網羅的解析-ASC上清より分析した、EGM、EBM添加の有無により増加・抑制を認めたサイトカインの機能的解析をおこない、神経再生因子についても脂肪幹細胞で発現の多いものを数種類抽出することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
VEGFは血管内皮の細胞の生存には不可欠な存在である。しかし、局所に過剰に発現する状況が発生するとVEGFR2の活性化が起こり、1)内皮細胞の安定な接着を解除、2)Src kinase介したVE-CadherinのTyr685をリン酸化してVE-Cadherin接着を減弱することが知られている。このため血管間質の浮腫、血球細胞の血管外への浸潤(extravasation)、血管内への進入(intaravasation)が惹起される。ウイルスベクターを使った過剰発現により様々な遺伝子治療が勃起不全モデルで試みられているが、満足な結果が得られていない一因と我々は考えている。この血管内皮細胞再生や抗炎症作用を調整するControllerとしての幹細胞の作用を既存のラット1型糖尿病勃起不全モデルで、勃起機能(血管反応性、内皮健全性)と海綿体構築(コラーゲンやエラスチンの再構築を指標に、各種ベクターとの組み合わせを行いながら評価が概ね終了し、論文投稿が可能な状態となった。
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Strategy for Future Research Activity |
本幹細胞の誘導スクリーニング過程では、Paracrine Factorをその都度可能性がある度に評価を行っている。今回使用する幹細胞は特に内皮誘導した段階で、RT-PCRにより高率にAMを産生していた。AMは強力な血管作動性ペプチドである。AMによる血管内皮細胞でのNO産生はphosphatidylinositol 3-kinase / AktによるeNOS活性化を介することを示した。ASCの培養上清はEGM、EBMの添加で分泌されているサイトカインに多彩な変化を生じている。DNA Microarrayによる網羅的解析の結果を基に、今後のこのサイトカインの機能解析をすすめていく。phosphatidylinositol 3-kinase/AktによるeNOSの活性経路は重要であり、腎血管ならびに大動脈や、陰部海綿体の血管においても重要の役割を担っていることを報告。NO-cGMP系、PI-3K/Akt経路を活性化の証明は今までの報告手法を踏襲する。 Puripotent細胞での平滑筋、神経細胞への分化・誘導や、機能改善を多段階で評価したい。TNFαやEndothelin・TGFβの存在に敏感といわれるPuripotent細胞であるが、AMらのPAMPファミリーは平滑筋や神経線維の再生や保護にも重要な役割が示唆されていることから、これらの局所炎症性刺激から幹細胞を守る働きも担っている可能性が我々の研究結果から示唆されており、幹細胞の中でもASCの汎用性の高さを証明可能な次なるParacrine EffectについてELISAやRT-PCR、さらには蛋白発現レベルでも検討を加える必要性がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後の脂肪幹細胞における再生メカニズムの解析には、今まで報告の少ない神経生理に関与する成長因子などにも着目する必要がある。平成25年度計画としては、引き続き1.Paracrine effect解析の継続さらに、マウス幹細胞誘導が軌道に乗れば、AMを血管内皮細胞に発現するtransgenic mouseおよびAMの遺伝子を欠失したknockout mouseを用いて(Nishimatsu H et al. Circ Res 2002; 90 (6):657-63.)幹細胞移植が勃起機能や海綿体組織に及ぼす変化を検討したい。2.マウス幹細胞誘導とマウス病態モデルでの検討 マウス皮下脂肪由来幹細胞がマウス病態モデルでは必要となる。この調整法、ES細胞、iPS細胞の血管内皮細胞への分化誘導法を確立を目指していく。
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Research Products
(1 results)