2014 Fiscal Year Annual Research Report
移植腎の予後(線維化)を早期に決定づける因子の解明と診断への応用
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24592452
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
力石 辰也 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 教授 (80261303)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 腎移植 / マトリックスメタロプロテアーゼ (MMP)-9 / 尿細管上皮 / 腎線維化 / 上皮‐間葉移行 (EMT) |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでに移植腎が損傷を受けると近位尿細管上皮におけるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)-9の発現が特異的に増強し、一過性の急性尿細管障害では症状が回復すると発現が低下するのに対し、急性拒絶では病理所見や臨床症状が改善してもMMP-9の強い発現が持続することを報告した。今年度はMMP-9の組織における存在様式の違い(潜在型と活性型)に着目するとともに、腎障害の程度や炎症の有無との関連について検討した。 免疫原の異なる4種類の抗MMP-9抗体を用いてマウス片側腎結紮(UUO)モデルの腎および移植腎生検組織を免疫染色した。また各種組織マーカー抗体を用いて線維化の進行を免疫組織学的に評価した。さらに腎移植患者の術前、術後の尿を用いたマルチプレックスアッセイにより尿中MMP-1、2、9とTIMP-1、2を定量した。 MMP-9のN末端配列を免疫原とする抗体(潜在性proMMP-9を認識)は、その他の抗体(proMMP-9と活性型MMP-9を認識)と異なる免疫染色性を示した。proMMP-9はUUOモデルにおいては健常な近位尿細管上皮(PTE)に発現し、尿細管障害の進行に伴って発現が低下した。移植腎生検では、proMMP-9はCNI腎症において強発現し、急性拒絶では発現が低下していた。一方、活性型MMP-9の発現は、CNI腎症で低く、急性拒絶とくに尿細管炎(T細胞浸潤)を伴い、線維化が進行し始めた組織で強く持続的に発現していた。腎移植患者の尿中MMP-9レベルは、移植後の炎症性変化に伴って上昇する傾向があった 今回の結果より、回復可能な尿細管障害では定常的なproMMP-9の発現が一過性に増強するのに対し、急性拒絶では活性型MMP-9が強発現し、その持続発現と線維化の進行に炎症細胞の近位尿細管上皮内への浸潤が関与している可能性が示唆された。
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