2012 Fiscal Year Research-status Report
エクソゾーム内封小分子RNAを用いた妊娠早期における妊娠高血圧症候群の発症予知
Project/Area Number |
24592453
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
古田 伊都子 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 助手 (70238682)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 崇弘 北海道大学, 大学病院, 助教 (20419948)
金内 優典 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (60333613)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | エクソゾーム / 妊娠高血圧症候群 / small RNA |
Research Abstract |
エクソゾームは生体内の細胞から分泌される直径40~100nmの膜小胞で種々のタンパク質やsmall RNAを内封している.本研究では妊娠初期婦人の血漿からエクソゾームを分離し,内封されているsmall RNAを解析する.検体である保存妊婦血漿の量は1検体あたり数ml程度であること,循環血液中に含まれるエクソゾームの量は極微量であることから.初年度は研究実施計画に記載したように血漿中のエクソゾームを効率良く分離し内封small RNAを抽出する手法の検討を行った. 研究実施計画ではエクソゾームの分離法として,超遠心法(100,000gで1h遠心してエクソゾームを沈澱)と免疫沈降法(エクソゾームの表面マーカーであるCD63の抗体を結合させた磁気ビーズでエクソゾームを単離)を予定していた.しかし,昨年新たにエクソゾーム分離用の試薬(ExoQuick, SBI社)が開発・市販された.この試薬を少量の血清(250ul~)に添加し低速遠心(14000g,2min)することで微粒子であるエクソゾームを沈澱させることができる.そこでExoQuickを用いてエクソゾームの分離とsmall RNAの抽出を検討した.本研究の材料は血漿であるがExoQuickでは検体を血清と指定しているので,トロンビンを添加して血漿を脱フィブリン化し血清様検体とした後,プロトコールに従ってエクソゾームをぺレットにした.small RNAの抽出はSBI社が推奨するスピンカラムキットを用いて行った.その結果,血清様検体300ulから30ng/ulのRNA溶液(RNA総量:約1ug)が得られた(濃度測定は超微量分光光度計で行った).即ち,チップ電気泳動装置で解析するのに濃度,量,質ともに十分なRNAが妊婦血漿中エクソゾームから抽出できることが碓認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は検体である妊婦血漿からエクソゾーム内封small RNAを効率良く抽出する手法の確立を目標とした.研究実施計画では,超遠心法とエクソゾーム表面抗原に対する抗体を結合した磁気ビーズを用いた免疫沈降法を比較する予定であったが,低速遠心で血清中のエクソゾームを沈澱させる試薬(ExoQuick, SBI社)が市販されたので,ExoQuickを用いてエクソゾーム内封small RNAの抽出を試みた.その結果,チップ電気泳動装置による解析に使える品質のRNAをエクソゾームから抽出できたので,ExoQuickによる抽出法を採用しようと考えていた.しかし今年になって,ExoQuickとは異なる原理で血清中のエクソゾームを沈澱させ,超遠心法と同品質のエクソゾームが分離できる試薬(TEI:Total Exosome Isolation, Life Technology社)が発売された.TEI試薬によるエクソゾームの分離・RNAの抽出を試してみてRNAの収量・品質をExoQuick試薬を用いた場合と比較する予定であるが,TEI試薬の入手は平成25年度以降になる.従って平成24年度中にエクソゾーム内封small RNA抽出の大まかな方法は確立でき,後はエクソゾームを沈澱させる試薬の選択を残すだけであり,本年度の目標は概ね達成できたと考える.
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Strategy for Future Research Activity |
1.各試薬(TEI,ExoQuick)を用いて血漿から抽出されたエクソゾーム内封small RNAの濃度・収量を超微量分光光度計で測定し,品質をチップ電気泳動装置で碓認して,エクソゾームを沈澱させる試薬を選択し,最終的な抽出法を確立する.確立された方法を用いて,妊娠初期妊婦血漿からエクソゾーム内封small RNAを抽出しチップ電気泳動装置で解析する.妊娠高血圧症候群(PIH)発症例と正常妊娠例とでエクソゾーム内封small RNAの絶対量(total量)および分画比(短塩基長[40nt未満]と長塩基長[40nt以上]に分けた分画 の比)を比較検討し,PIHに特異的なパターンを検索する. 2.絨毛株細胞を用いて血管増殖因子関連遺伝子のサイレンシング実験を行う.絨毛株細胞(BeWo,HTR-8/SVneo)の培養上清,妊娠初期妊婦のプール血漿からエクソゾーム沈澱試薬を用いて膜構造を壊さないようにエクソゾームを分離する.絨毛株細胞に血管増殖因子関連遺伝子(VEGF,VEGFreceptor-1, PlGF, TGF-β1,)をそれぞれトランスフェクションし,各血管増殖因子遺伝子を過発現する細胞を作成する.この細胞をエクソゾームと共培養してエクソゾーム内のsmall RNAを移行させ,過発現させた遺伝子の発現が抑制されるか調べる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度には本研究の支出の大部分を占める備品であるチップ電気泳動装置(バイオアナライザ,Agilent社)を購入した.エクソゾーム内封small RNA抽出法を検討するために,試薬類としてエクソゾーム沈澱試薬,スピンカラム法によるmicroRNA抽出キット等を購入し,当該年度所要額は0にはならなかったものの概ね研究実施計画書通りに助成金を使用した.次年度は引き続きエクソゾーム沈澱試薬,microRNA抽出キット,およびチップ電気泳動装置の消耗品であるsmall RNA解析用のチップを購入する予定である.
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