2013 Fiscal Year Research-status Report
エクソゾーム内封小分子RNAを用いた妊娠早期における妊娠高血圧症候群の発症予知
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24592453
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
古田 伊都子 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 助手 (70238682)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 崇弘 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任講師 (20419948)
金内 優典 長崎大学, 大学病院, 講師(Lecture) (60333613)
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Keywords | エクソゾーム / 妊娠高血圧症候群 / small RNA |
Research Abstract |
本研究では妊娠初期婦人の血漿からexosomeを分離し,内封されているRNA(Exo-RNA)を解析する.H25年度はH24年度に検討した血漿からのexosome分離法とRNAの抽出法にさらなる改良を加え,Chip電気泳動でRNAが解析できることを確認した. Exo-RNAによって妊娠高血圧症候群の予知を行うには,まず正常妊婦におけるExo-RNAの動態を調べなくてはならない.そこで正常妊娠婦人におけるExo-RNAの妊娠週数に伴う変動について検討した.遺伝子解析に同意を得られた単胎妊娠婦人(妊娠週数6~19週,N=65)から採取された血漿(n=105)検体を材料とした.chip電気泳動を行った結果,妊娠婦人血漿中exosomal RNAには,サイズの異なる3分画(micro:20-40nt, medium:41-80nt, large:81nt<)が認められた.妊娠週数と血漿中exosomal RNA濃度との相関を検討したところ,exosomal RNA濃度は同じ週数でもばらつきが大きくTotal RNA, およびmicro,medium,largeRNA分画のいずれも妊娠週数とexosomal RNA濃度との間に相関は認められなかった.妊娠週数により血漿を4群(6-8w, 9-11w, 12-14w, 15-19w)に分けて比較検討すると,9-11w群のmicro および medium RNA分画の濃度は6-8w群より有意に高値を示した. 6-8wおよび 9-11w群では, micro RNA分画の濃度はmedium,large RNA分画に比べて有意に高値を示した.同一妊娠婦人におけるexosomal RNA濃度の経時的変化を調べると,妊娠6-8wに比べて9-11wではmicro, medium,large の3分画すべてにおいてRNA濃度の上昇が認められた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
血漿からのエクソゾーム内封small RNA抽出法は平成24年度中に確立する予定であったが,低速遠心で血清中のエクソゾームを沈澱させる試薬(ExoQuick, SBI社)が市販されたのが平成24年秋だったので,年度内には種々の条件検討,スピンカラムキットを用いたsmall RNAの抽出,超微量分光光度計によるRNA濃度・純度の確認までしか行えなかった.平成25年度になって抽出されたRNAをChip電気泳動にかけたところ.吸光度から期待されるRNA量との乖離が認められた.その原因について検討したところスピンカラムキットでRNAを溶出するbufferがChip電気泳動を阻害している事が判明した.また,平成25年なってエクソゾームを分離する新たな試薬(TEI:Total Exosome Isolation, Life Technology社)が発売されたため,ExoQuickとTEIの比較,血漿をトロンビン処理する際の検体のロスを防ぐ対策,Chip電気泳動を阻害しないような溶出buffer によるRNA抽出の検討をさらに行う事にした.検討の結果,1.血漿はトロンビン処理しないでそのまま使用する,2. エクソゾーム分離にはTEI試薬を使用する,3. RNA抽出キットは微量の水で溶出できるQiagen miRNAeasy micro kitを使用する,というエクソゾーム内封RNAの抽出法が確立された. エクソゾームからのRNA抽出法の確立までには予定以上の期間がかかってしまったが,その後は合併症のない妊婦(妊娠6~19週)の血漿約120検体からエクソゾーム内封RNAを抽出し,Chip電気泳動による解析を行うことができた.従って妊娠初期における正常妊婦血漿中エクソゾーム内封RNAの変動を調べるという本年度の目標は概ね達成できたと考える.
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Strategy for Future Research Activity |
1.正常妊婦において同じ妊娠週数でもExo-RNA濃度はかなりばらつきが大きいことから,さらに検体数を追加してExo-RNAを抽出し,チップ電気泳動装置を行って解析する. 2.妊娠高血圧症候群(PIH)発症例と正常妊娠例とでExo-RNAの絶対量(total量)および各分画(micro, midium, large)の量およびそのパターンを比較検討する. 3.正常妊婦血漿におけるExo-RNA濃度の変動幅は1~14ng/ml(90パーセンタイル)であったが,約10%程度の割合で高値(20~90ng/ml)を示す検体が出現した.これらExo-RNA異常高値血漿で増加しているのは主にmicro RNA分画であった.本研究はfeto-maternal interfaceにおいてexosomeが大量に産生され,内封されているmicro RNAによって胎盤の血管が障害されてPIHが発症するという仮説に基づいて,血中Exo-RNA濃度とPIH発症との関連を検討し,発症予知に応用しようとするものである.従って,正常妊婦血漿のExo-RNAの異常高値例において,増加しているmicro RNA分画が胎盤由来であるか他の臓器由来であるかは重要なポイントとなる.そこで平成26年度には,Exo-RNA異常高値例においてmicro RNA分画に含まれる胎盤特異的micro RNA(hsa-miR-141, 517c, 199a-3p等を予定)の定量を行い増加しているmicro RNAの由来を確認する予定である.また,正常妊娠例およびPIH発症例でExo-RNA中の胎盤特異的micro RNA量の比較も行う予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度はエクソゾームの分離,RNAの抽出法の確立のためエクソゾーム沈澱試薬(2種類),種々のスピンカラム法によるmicroRNA抽出キットを購入して検討した.また,エクソゾームの分離・microRNA抽出法の確立後は,Chip電気泳動装置の消耗品であるsmall RNA解析用のChipと泳動用試薬のセットを購入した.研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込額と執行額は異なったが,前年度の研究費も含め,当初予定通りの計画を進めていく. 次年度は引き続きエクソゾーム沈澱試薬,microRNA抽出キット,small RNA解析用のChipと泳動用試薬を購入し,新たに胎盤特異的microRNAの定量試薬も購入する予定である.
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